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第5回 グループワークの効率をあげる、冴えたやり方できるビジネスマンのノウハウ伝授

今回は、販売プロジェクトをさらに進化させる必要がうまれた。個人単位ではなく、プロジェクト全体で情報を共有する必要に迫られた田中君が考えた方法とは?

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  • 田中君:プロフェッショナル向け映像関連製品を取り扱うABC商事社員。配属されてから半年になる、22歳の新卒新入社員。
  • 江藤君:ABC商事社員。田中君と同じく配属されてから半年の新卒新入社員。営業1課所属。
  • 及川先輩:ABC商事社員。システム課の先輩。田中君に的確なアドバイスをしてくれる。
  • 山田課長:ABC商事社員。田中君が所属する営業2課の責任者。
  • 福島課長代理:ABC商事 営業1課の課長代理。新設プロジェクトチームのリーダー。

山田課長  「田中君、君が率先して導入していた、あのシステムなんだが……」

田中君  「(ドキ!) どのシステムでしょう? なんか問題でもありました? 名刺管理? FAX送付状? 住所録のラベル印刷かなあ。それとも商品カタログや顧客管理のほうですか? これはプロジェクト“C”で使ったやつですけど」

山田課長  「いや、問題があるとかじゃなくてね、評判いいんだよ。プロジェクトリーダーの福島課長代理がずいぶん君のことを買っててね。ずいぶん喜んでたよ」

田中君  「なあんだ、そういう話ですか。ぼくはまた、てっきり新しい案件かと思いましたよ」

山田課長  「新しい案件といえばそうなんだが。実は、福島リーダーから、部門単位でのシステム化について相談を受けててね。君が作ったプロジェクトを全体で運用したいというんだよ。そのへんは営業1課が進んでそうだから、コラボレーションをしながらシステムを運用していく方法について相談したいって」

田中君  「とはいっても、1課で使っているあのシステムは、メンバー一人ひとりが別々に運用しているだけですからねえ」

山田課長  「彼は、君が作ったプロジェクト“C”用のシステムを、共同作業用システムに置き換えるのに、特別にどんなものが必要なのか、聞いてきたんだが、私じゃ答えられなくてね。田中君、調べといてくれるかね。今度のプロジェクト営業ミーティングのときに報告できるように」

田中君  「わかりました。なんとか調べておきます」


田中君 「福島リーダー、『プロジェクト“C”』今週分の営業報告書です」

福島課長代理 「ふーむ。なかなか調子よさそうだな。田中君はデジカメで、江藤君はプリンタの比率が高い……。クライアントに大きな差があるわけではないはずなんだが、おもしろい現象だ」

田中君 「私のデジカメで成績がいいのは、おそらく秋モデルが安くなったので、イチオシの製品を切り替えてみたからだと思います」

福島課長代理 「ふーむ。そういうことか。そのへんの判断についても、報告書の中に書いておいてほしいものだが、これは他のプロジェクトメンバーにも教えておかなければなあ」

「ところで、山田課長から聞いてると思うんだが、プロジェクト“C”システムの、コラボレーション化の話。君のほうである程度は調べてくれているとは思うんだが、私からも少し説明しておこう」

「個々のメンバーは商品カタログや顧客管理、見積もり作成ツールをうまく運用しているんだが、その結果というか、情報は、私のほうに集まってはくるんだ。印刷されてね。メールの添付で送ってくることもある。私の方では、集まった情報を、またメンバー全員に振り分ける必要がある。まあ、それが私の仕事と言えば仕事なんだが、もっと情報をスムーズに共有する方法がないものかと思ってね。個々の成績だけではなく、プロジェクト全体の売り上げがアップするためのものにしたいんだよ」

「で、この情報のやりとりを、印刷したり、メールで送ったりというまどろっこしいものじゃなく、スムーズに実現できるような魔法のソフトはないのかな、と思ってね」

田中君 「福島さん、えっとですね……。データベースはみんなで共有利用できるんですよ。そうすれば、みんなデスクのパソコンでこれまで通りの作業をして、しかも、その情報共有ができるんじゃないですかね。誰かがデータを入力すると、それを別のパソコンですぐに確認できるんですよ。わざわざ情報をみんなから集める必要がなくて、情報が勝手に集まってくるみたいなかんじで」

福島課長代理 「ああ、それができればわざわざ集まらなくてもよくなるな。それにもし、データが共有できるようになるんだったら、毎日メンバーに提出してもらっている営業日報も、紙をやめて電子化すれば、共有できるようになるなあ。見積書や日報ができればプロジェクトチームとして予算と実績の管理も毎日できるということか。そう言えばシステム課の及川君が前にそんなことを言っていたな。でも、そのためには、別の高いソフトを買って、システムもゼロから作り直さないといけないんだろう?」

田中君 「いや、たしか、ファイルメーカーProで作ったものは、共有が簡単なので、ゼロからというわけではないはずです」

福島課長代理 「そうか、じゃあ早速取りかかってくれないか。山田課長には私からお願いをしておくから。そうか、それができれば便利になるぞ」

 福島課長代理は意気揚々と去っていった。しかし、田中君は心の中でこう考えた:

田中君 「うーん、前に及川先輩がデータの共有ができると言っていたから、つい福島さんの前でああ言ってしまったけど、先輩が言うように簡単にできるんだろうか……。ちょっと心配になってきたなあ。でも、心配しても一歩も進まないから、及川先輩に相談してみよう」

共有する情報を選択する

田中君 「……と言うわけなんですよ。福島さんは乗り気だし、なんとかしたいんですよ」

及川先輩 「田中君、データを大勢で共有する場合に大切なことってなんだと思う?」

田中君 「そうですね、『使いやすさ』ですか?」

及川先輩 「そうね、それも大切だけど、一番大切なことは、みんなが共通して必要な情報をスピーディーに手に入れられるかどうか、と言うことだと思うの」

田中君 「なるほど、『スピード=鮮度』ってことですか。たしかに、すぐに役に立つ情報があとになってわかってもしかたないですしね。それを実現するためにはどうしたらいいんですか?」

及川先輩 「この前にも話したけど、ファイルメーカーProでデータの共有をする事自体は難しいことではないの。まずは、プロジェクトメンバーが共通して必要な情報をピックアップして、それをデータベースで管理できる形にすることが必要ね」

 「たとえば、見積書はプロジェクトメンバーの全員が作成するでしょ? お客様に提出した見積書をデータベースで共有するだけでも、プロジェクト全体でどのくらいの見積書が作成されていのかがわかるようになるわよね? つぎにその見積書が受注になったかどうかがわかれば、売り上げの予想ができるようになるわね」

田中君 「福島さんはとても喜びますねえ。今は日報に添付してある見積書の写しと、実績を毎日Excelに入力しているみたいですからね。そうそう、日報も共有したいって福島さんがいってました」

及川先輩 「もちろん、日報みたいなものはデータベース化して共有するにはもってこいの材料よね。スタッフの皆さんが自分のデスクにあるパソコンからデータベースに日報を入力すると、すぐに福島さんのパソコンで確認できるようになるし、福島さんからスタッフの日報に対するフィードバックもすぐにできるわね。それと同じような仕組みで、販売の『ツボ』をみんなで公開すればいいんじゃない?」

 「そうすると、まず田中君がしなくちゃいけないのは、先日から使っている見積書データベースの改造と日報のデータベース作り。それから『ツボ』データベースの作成ね。これはプリンタやデジカメ、液晶テレビのような商品群ごとにまとめて入力できるようにすると、使いやすいものになると思うわよ」

 「じゃあ頑張ってね。何かわからないことがあったら、一人で悩んでないですぐに電話してきてね。共有化のために、社内で余っているPCを1台、こちらで使用できるよう申請してきます」

田中君 「及川先輩! いつもありがとうございます。じゃ、頑張ります」

メンバーの見積もり金額集計が可能に

 見積もり作成ツールは、先日から使っているものに機能追加をしてみた。福島さんに相談してみたところ、どのスタッフがいつクライアントに提出した見積もりが、受注になったかどうかがわかればいいとのことだったので、担当者で並べ替えるボタンを追加したり、未受注の見積書や受注済みの見積書を検索するボタンなどを追加してみた。

 集計フィールドというのを使用すると、検索されている見積書の合計金額が自動計算されるので、見積もり金額の合計を、見積もり作成ツールの一覧画面に配置してみた。

 画面:見積もり作成ツールの画面(改良版)には、見積もり金額の合計金額が集計されてくる

福島課長代理 「うんうん、このボタンをクリックすると……担当ごとに並べ替えができるのか。それから、こっちのボタンをクリックすると、全体の見積書が検索されるんだな。ほほう、これはいいな」

田中君 「見積書の検索ボタンをクリックすると、今月の見積書だけがピックアップできるようになっているんです。その横にある『受注検索』というボタンをクリックすると、今月に受注になった見積書が検索されるようになっています」

福島課長代理 「これは便利だな。ボタンひとつで計算ができてしまうんだからな。みんなが入力してくれたデータがこんな簡単に集計できるなんて、ずいぶん時間の短縮ができる。ところで、11月と12月の見積書をいっぺんに見たい場合にはどうすればいいのかな?」

田中君 「プロジェクトスタッフのみんなに意見を聞いたのですが、自動で検索するのは当月だけがあればいいとのことでしたので、複数月の検索をする自動ボタンはないのですが、簡単に検索を行うことはできます。「検索」というボタンをクリックしてみて頂けますか? そうすると検索モードというのに切り替わりますから、「見積日」の欄に『2003.11.1...200312.31』というように日付の範囲を入力してEnterを押してもらえば……どうですか?」

福島課長代理 「おお、出てきたな。一番下に出ている数字がこの期間の見積もり金額合計になるんだな?」

田中君 「そうです。ですので、今の四半期の範囲で検索をして、現在の見積金額や売り上げ金額を瞬時に把握することができるようになると思います」

 「それから、日報のデータベースと、営業ノウハウのデータベースはこれから作成します。こちらも完成次第チェックしていただくので、もう少しお待ちください」

 画面:完成した見積もり集計システム。期間ごとの業績を簡単に把握することができる

日報作成ツールを作成する

 及川先輩に相談しながら、日報作成ツールの作成をしてみたが、思ったより簡単に完成までこぎ着けることができた。基本的には会社のフォーマットがあるので、それに準じたレイアウトを作成すればよかったことが、簡単に作成できた理由だと思う。

基本的な機能はこれでよし、ちょっと及川先輩に見てもらうことに。

田中君 「基本的な機能はこれでできたと思うのですが、福島さんにお披露目する前に、及川先輩に見てもらおうと思って……」

 画面:日報作成ツールのレイアウト画面

及川先輩 「そうねえ、レイアウトもきれいにできてるじゃない。検索とかの機能は手動でやればいいから特にボタンとかはいらないわね。そうねえ、せっかくデータベースを共有するのだから、プロジェクトリーダーからスタッフへのフィードバックを入力するフィールドがあるといいわね。日報はどうしても印刷して保管しておかなくてはならないから、日報のレイアウトをかえることはできないけど、欄外にフィードバック用のフィールドを配置してみたらどうかしら?」

田中君 「ああ、すみません。すっかりフィードバックのことを忘れてました。レイアウトがきれいにできたので、すっかり安心してしまって……」

及川先輩 「じゃあ、それは田中君が作成するとして……。その他にも必要がある項目があったら、その都度欄外に作成しておけばいいわね」


 とアドバイスをもらった後で、田中君は持ち帰って作業を続けた。共有するための設定についても、マニュアルで簡単に理解できたので、江藤君を呼び出して、設定内容を確認することにした。また、「ランチミーティング」である。

田中君 「福島リーダーに見せる前に、ちょっと確認しておきたいんだけど、データレコードの権限って、どうすりゃいいんだろう。これまでは自分一人のことを考えればよかったけど、共有になると違うよね」

江藤君 「全員に変更する権限を与えてしまうと、いろいろとトラブルの元になるかもしれないから、他人が作ったレコードは修正不可で、本人と管理者だけは別って感じじゃないのかなあ。普通はほかの人が書いた情報を見ることができればいいわけでしょう?」

田中君 「たしかにそうだ。それなら簡単に設定できるぞ。よし、じゃあ、この共有設定をやったら福島リーダーへのプレゼンだ!」


田中君 「……というふうに、個人向けに作ったデータベースも、簡単な権限の設定だけで、共有化できちゃうんですよ。ぼくができちゃったのも、過去の資産を有効に使えたからです」

福島課長代理 「なるほど、以前作った顧客情報データベースが、そのまま使えるわけだな。ここから積み上げていけばいいんだ。しかも、全員が共有しているから、一人が更新すれば、それをみんなで使い回すことができる。データの共有にはメリットも多いが、なにしろ一から作り上げなくちゃいけないと思っていたよ。こんなに手軽にできるんなら、自分でもできそうだな」

田中君 「新人のぼくでもできるくらいですから、福島さんなら簡単ですよ!」

福島課長代理 「私もあれから自分なりに業務関係のデータベースを作っているんだよ。それを共有化する必要性も出てきそうなんでね。こういうふうに簡単にネットワーク化できるってのはとてもありがたい。自分たちが過去に作り上げたものが無駄にならず、すべてをシェアできるわけだからな。シェアするために多大な時間と労力を費やすのは、よほど効果が確実で大きい場合に限られる。それだとせっかくいいアイデアがあっても積極的に生かすチャンスを失ってしまう場合だってあるんだ」

田中君 「たしかにそうですね。サンプルデータとして、僕と江藤君が出し合ったプリンタとデジカメのアプローチ方法を入れてあります。デジカメのボタンをクリックすると、デジカメに関するノウハウが表示されるようになっています」

 「登録は簡単で……。このボタンで新規のレコードを作成します。つぎに、カテゴリーとして製品群の名称をラジオボタンからクリックして、あとはその下の欄に営業ノウハウや、お客さんへの営業で気がついたことを登録していけばいいだけです」

 画面:プロジェクトC進捗データベースの画面

福島課長代理 「これはシンプルだな。『登録』『検索』だけになっているのか。うん、わかりやすくていいな」

 「ところで、これをどうやってみんなで共有すればいんだ?」

田中君 「及川先輩が、社内で余っているパソコン1台を回してくれています。そのくらいのでいいらしいんですよ。ファイルメーカー Serverというソフトを使って共有するんだそうです。普通のファイルメーカーProでも、もちろん可能なんですが、『これからたくさん使いそうだから』って及川先輩は言ってました。それから、準備ができたところで、システム課のほうで、簡単な講習会もしてくれることになっています」

グループワークを推進するために必要なツール

 システム課に設定してもらったファイルメーカー Serverでツールを共有して運用してみると、さっそく効果が現れた。まずは福島さんは、スタッフから集まった日報や見積書の情報を整理して、四半期や月ごとの予定や実績の管理が簡単に行えるようになったと、喜んでいた。

 われわれスタッフはというと、日報を手書きしなくてよくなったことと、やはり例の「プロジェクトC進捗データベース」が役に立っている。このデータベースを共有してみると、さっそく情報の書き込みがあり、それにつられて多くのスタッフが情報を登録してくれ、それを利用したスタッフは実績をあげていると、福島さんが言っていた。

田中君 「ちょっとした江藤君との話がここまで広がるとは思っていませんでしたよ。今回もすっかり及川先輩にお世話になってしまいました。ありがとうございます」

及川先輩 「私はシステム課だから、実際に営業に出てビジネスをしてくることはできないけど、ほかの課の人たちにはシステム面で協力できるでしょ? 営業の方達が仕事をしやすいようにしてあげれば、その分、営業の仕事ははかどるじゃない?」

田中君 「そうですね。営業本来の仕事にどれだけ時間を使えるかが、即売り上げ実績のアップになることもありますからね」

及川先輩 「そうね。今回の場合は、自分が持っている情報をみんなで共有して営業に役立てたり、データをひとつにまとめることで、福島さんがこれまで使っていたよけいな時間を短縮することができたわね。でもね、これはみんながデータを入力してくれるからできることで、ワークグループのチームワークがなかったらできないことないのよ。それではじめてデータが生きてくるの。だから、システムがあればいいということではなくて、それをうまく使っていくためのチームワークも必要になるってことなのね。それを忘れちゃだめよ田中君」

田中君 「データをもっとうまく利用できれば、生産性があがる可能性がある、ということですよね。しかも、その利用方法にはまだまだ無駄が多い。たとえば、僕たちオフィスワーカーは営業時間中のかなりの時間をファイルを探したり、開けたり閉じたりしているような気がします」

 及川先輩が言うように、ツールを使うためのルールも重要になるし、なにより、今回は『プロジェクト“C”』というワークグループのチームワークが重要だったんだな。みんなが、このプロジェクトを成功させたいと思っているからこそ、みんながツールを使ってくれるし、ノウハウの共有もできるようになる。

 使い回しを重ねて進化してきたデータベースが、最終的にプロジェクトチームの重要なツールとなった

 そんなことを実現する手助けをしてくれたのがファイルメーカーProだ。まったく素人だったぼくがこれだけのものを(及川先輩にずいぶんお世話になりましたが)作れたのだから、みんなに知ってもらえば、もっと会社の業務に役立つかもしれないな。

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