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距離と時差がなくなる日イメージストーリー(1/2 ページ)

狼煙から始まって、電信、電話、電子メールと、人はコミュニケーションの手段を高度化させてきた。しかし今も昔も、コミュニケーションの原点は“Face to Face”である。フィクションのイメージストーリーを通じて、コミュニケーションの原点を追った。

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 その日は突然やって来た。業務提携しているタイの現地企業に技術協力するため、彼がバンコク勤務を命じられてしまったのだ。

 いや、本当をいうと突然ではなかった。1カ月か2カ月前のデートの時のことだ。いつものように掛け合い漫才のような笑い話のキャッチボールをしていたら、何の前振りもなしに、いきなり「そうそう。ヘマやらかしちゃってさ、海外に飛ばされることになっちまったよ」なんて言われてしまったのだ。

 でも、口調が変わったわけでもなく、顔にも茶目っ気たっぷりな微笑みが浮かんでいたので、またいつもの軽口だろうと気に留めず、そのままスルーしてしまったのだ。彼も言い出しづらかったのだろうと思う。

 任期は2年間。中途半端な長さだ。半年、1年なら、ゴールデンウィークや夏休みに遊びに行くところができたと無邪気に喜んでいただろう。3年以上なら、別の選択肢もあったかもしれない。

 東京−バンコク間は約5000キロ、直行便なら約6時間の距離だ。その気になればいつでも会いに行ける。そう言い聞かせて、笑顔(のつもり)で彼を見送った。

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 部屋でゴロゴロしていると、玄関でチャイムが鳴った。出てみると私宛の宅配便が届いていた。

 依頼主の欄には、パソコンショップらしき名前。所在地は秋葉原となっていた。

 心当たりがなかったのでちょっと気持ち悪かったが、中身を確認しようと開けてみたら、小さなパソコン用のカメラが出てきた。納品書には彼の名前が記されている。どうやら私を届け先に指定して、オンラインショッピングでそのカメラを購入したらしい。それならそうと言ってくれればいいのに。昨日だって電話で話をしていたのだから。

 『そういえば……』と、しばらく前の会話を思い出した。何がきっかけだったかは忘れたが、たわいのない揚げ足取りが、いつの間にか本気の言い合いに発展してしまったのだ。

 「あなたがバンコクなんかに行っちゃったからでしょ!」

 そんなことも言ってしまったように思う。言っても仕方のないことなのに。

 そんなふうに言われて、彼も辛かったのだと思う。でも、そんなことをおくびにも出さず、私との距離をどう埋めようかと、ない知恵(笑 ごめん!>彼)をしぼって考えてくれた。

 その気持ちが嬉しくて、ウキウキしながらカメラをパソコンにセットし、次にちょっと緊張しながらビデオメールを撮ってみた。(詳しい設定方法はこちら)

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 自宅のパソコンは、実はまだ常時接続ではなかった。ADSLがブームになり始めた頃に一度申し込もうとしてみたことがあったのだが、当時はまだサービスエリア外だとかで、結局加入できなかったのだ。

 調べてみると、もうとっくにサービスエリア内になっているという。ADSLならかなり快適にインターネットテレビ電話が楽しめると聞いたので、ADSLに加入し、フリーのメッセンジャーソフトをインストールして準備万端整えた。

 約束の時間になった。メッセンジャーの画面に彼のアイコンが表示される。彼のアイコンをクリックし、テレビ電話を開始するための一連の儀式を行う。

 メッセージウィンドウに、見慣れた、でも、とても懐かしい笑顔が現れた。(詳しい設定方法はこちら)

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