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中国の「MADE IN JAPAN」山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

エレクトロニクス関連では磐石の信頼を得た日本ブランド。ところが現代中国においては必ずしも絶対ではないのも事実。今回は中国における日本ブランドの評価にまつわる現実をレポートしよう。

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コンテンツにリアリティを求めぬ中国人

 デジカメはエレクトロニクス分野において、日本ブランドの最後の牙城である理由は分かった。でもエレクトロニクス分野以外だって、圧倒的に支持されているジャンルがある。ゲームと漫画・アニメだ。


中国では日本のキャラクターを扱う雑誌や書籍が多い

 中国では、埼玉県春日部市が舞台のクレヨンしんちゃんが人気であり、恐らくは東京都練馬区を舞台にしたといわれるドラえもんが人気であり、70年代の静岡県(旧)清水市を舞台にしたちびまる子ちゃんが人気である。もちろん千と千尋の神隠しも大ヒットしている。

 一方でゲームでは、日本の高校生活を舞台にしたときめきメモリアルが中国でも爆発的な人気となって日本語教育に一役買ったし(かなり偏った日本語だけど)、日本文化がベースにあるサクラ大戦もヒットした。熱烈な中国人ゲーマーや、アニメファンは「日本のものじゃないと駄目」とまでいう。

 日本の文化や風景で満ちている日本ゲームがなぜ中国で受け入れられるのか? 中国と日本の生活環境は家のつくりから学校から食事から祭りまで何から何まで違うのに、だ。

 その質問に対する答えのヒントを、中国のテレビに見ることができる。中国でテレビのチャンネルをまわすと必ず清や唐を舞台とした時代劇を放送している。とくにワイヤーアクションを駆使した格闘シーン満載活劇が人気のようだ。

 また、たまにトレンディドラマをやっていると見てみれば、その雰囲気は中国の実社会とはあまりにもかけ離れた綺麗すぎる欧米的世界が舞台で、登場する中国人キャストすべてが、ありえないほどジェントルで東洋的人間臭さが微塵もなかったりする。ドラマの筋書きのほとんどが中国的リアリティを追求したものではないのだ。

 身の回りで起きる現実とは激しく異なるリアリティのないストーリーにたいする抵抗感が少ない中国人にしてみれば、日本的社会のリアリティを追求する日本のコンテンツが、自分らの住んでいる世界と大きく異なっていてもさほど気にかけないも道理にかなう。

 とはいえ、中国人を相手にゲームを作るなり、漫画を描くときに、現地の生活の匂いを知る必要がなく、面白いオチだけ作っておけばいいかというと「半分イエスで半分ノー」である。

 日本のコンテンツに日常的に触れている中国の若者が来日したとき、日本の街並みや人々の作り出す雰囲気がドラえもんやクレヨンしんちゃんで表現されている世界と同じであることに驚く。そして、ドラマを含めて「リアリティ不在」の中国産コンテンツに日夜触れている彼らが、日本のドラマのリアリティを前向きに評価していることに注目したい。

 中国でもリアリティを追求したコンテンツを中国人向けにリリースすれば、成功する可能性は高いのではないだろうか。そのときに考えなければいけないのは、全国一律平均的な日本とは対照的に、中国は内陸沿岸や都市農村で貧富の差が激しいので、どこの人々の生活をベースにするかということだろう。

 ともかく、中国の若者は日本のゲームや漫画・アニメのコンテンツが大好きだ。ところが最近の報道によると、今後中国はアニメ、ゲームソフトの輸入規制強化を打ち出している。ほぼオンリーワンである日本のコンテンツに輸入規制がかかり、中国の若者達の手元に届かなくなるとすれば、日本の漫画家や出版社やゲームメーカーなどコンテンツプロバイダが困るだけでなく、中国の若者も困るだろう。

 中国では最近国産アニメが登場してきたとはいえ、その多くが日本のアニメの影響を色濃く受けている。コンテンツ鎖国をすれば、中国の消費者や中国人コンテンツプロバイダーに多大な影響を与えるのではないだろうか?

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