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暖かくなる季節を前に静かな水冷PCの現状を探る――NEC Direct「VALUESTAR G タイプX/タイプC」(2/2 ページ)

PCの静音化に注目が集まってからはや数年。各メーカーともあの手この手で工夫を凝らしているが、静音性を極めたものの1つに水冷PCが挙げられる。ここでは、この水冷デスクトップPCを精力的にリリースするNEC Directの2モデルを見ていこう。

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用途に応じてハイエンドからローエンドまで選べる水冷PC

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 ここからは各モデルの特徴を見ていこう。上にまとめたBTOメニューで選択できるパーツを見れば分かるとおり、タイプXとタイプCでは明確に守備範囲が異なる。

 タイプXは容積が約38.7リットルの大柄なボディをフルに生かすべく、高い性能と豊富な拡張性を持つハイエンドモデルだ。4基の3.5インチシャドウベイを備え、最大2TバイトのHDDを搭載できるほか、RAIDも0/1/5から選べる。後述するTVチューナーカードを追加して、静かでパワフルなAVサーバとして活躍してくれそうだ。前モデルにあった地上デジタル放送対応のTVチューナーカードを選べなくなったのは残念だが、これは今後のモデルに期待したい。

 1つ気になるとすれば、BTOで大型の冷却システムを採用したNVIDIA GeForce 6600 GT搭載のグラフィックスカードを搭載した場合、どれほど静音性が損なわれるかということにある。下の写真を見ると、GeForce 6600 GT搭載カードの冷却機構はかなりの騒音を発しそうに思える。事実、PCの起動時に高速回転してそれなりの風切り音が発生する。ところがPCが起動してからは音はほとんどせず、動画のエンコードやビジネスソフトなどを使っても、耳障りに感じることはなかった。むしろHDDの動作音の方が気になるほどだ。もっとも、Direct3Dを利用する3D負荷の高いゲームを長時間プレイするような場合は、負荷に応じて当然それなりの音が出る。それでもゲームの音声が聞き取れなくなってプレイに支障を来すほどのノイズではなかった。高性能なグラフィックスカード=騒音源とも言えるわけで、こうした点は素直に評価できるだろう。

タイプXは前面のカバー内にExpressカードやPCカードスロット、ビデオ入力端子など豊富なコネクタを用意(BTOで省くことも可能)。PCI Express x16スロットは底面付近に装着される。なお、ボディの奥行きが508ミリもあるので、設置場所には困る場合があるかもしれない。グラフィックスカードは2スロットを占有するタイプも選べる。写真はNVIDIA GeForce 6600 GT搭載カードで、静音性にも配慮されている。欲を言えばより高速なカードや、デュアルDVI出力に対応したカードも選択肢として用意してほしかった

 一方のタイプCは、容積が約19.7リットル、横幅が115ミリのスリムボディが最大の魅力だ。しかもマザーボードがタイプXと同じため、ある程度のパフォーマンスも追求できるのがミソである。

 タイプXに比べて拡張性はさすがに限られるが、それでもHDDは最大500Gバイトまで、CPUもデュアルコアのPentium D 820(2.80GHz)を搭載可能だ。グラフィックスカードもファンレス仕様のGeForce 6200 with TurboCache搭載カードを追加できるので、静音性を維持しながら(最新とまでは言えないが)ある程度の3Dゲームを楽しめる。

 例えば、ビジネス向けで使うならばCeleron D 346と945Gチップセット内蔵のグラフィックス機能で十分であろうし、価格も安価に抑えられる。また、3Dゲームまでを楽しみたいのであればPentium 4 630やPentium D 820に、GeForce 6200 with TurboCache搭載のグラフィックスカードを選択すればよいだろう。ただ、内部のドライブベイは5インチ/3.5インチともに1基ずつで、出荷時にすべて埋まっているため、これを見越したパーツのチョイスを行いたい。

横幅115ミリのスリムボディが目を引く。タイプXと異なり、黒いボディに魅力を感じるユーザーも多いことだろう。ただ、PCI Express x16スロットだけロープロファイル仕様なのは物足りなさを覚える。なお、縦置き用のスタンドを取り付けると、横幅が250ミリまで広がる。タイプCでは、ファンレス仕様のGeForce 6200 with TurboCache搭載カードと、DVIインターフェイスカードのみBTOメニューに用意されている。このあたりはタイプXと明確な差別化が見られるが、騒音面では本機が有利だ

 なお、タイプX/タイプCともにNEC製の高画質エンジンVISITALチップを搭載したTVチューナーカードをBTOで追加できる。従来機にあった地上デジタル放送対応カードは残念ながらBTOメニューから省略されてしまったが、地上アナログのダブルTVチューナーカード(タイプXはシングルチューナーも選択可)が用意されている。TV機能を加えると赤外線リモコンが付属するので、手軽にTV番組の録画/視聴/再生/予約が行える。細かく見ていくと、両モデルとも2番組同時録画には対応するものの、2番組同時視聴はできず、タイプCでは前面にビデオ入力端子がないといった弱点を抱えている。

BTOメニューでは地上アナログ対応のダブルTVチューナーカード(左)と赤外線リモコン(右)を追加できる。NTSCデコーダや3次元Y/C分離回路、ゴースト軽減、動き適応型IP変換といったさまざまな画質改善機能を1チップにまとめた「VISTAL(ビジタル)エンジン」の搭載がポイントだ


「静音性」という唯一無二のアドバンテージは大きな魅力

 タイプX/タイプCの特徴である静音性は伊達ではない。アイドリング状態ではHDDのヘッドのシーク音がかえって気になるほどだ。さらにケースも国産メーカー製らしく非常にしっかりしており、その剛性や精度、良好なメンテナンス性は、市販の自作用PCケースとは比ぶべくもない。お世辞でなく、個人的に水冷ユニットごとケースを市販してもらいたいと思えるほどの魅力を感じた。つい先月、昨年販売された一部の水冷PCで不具合が発生したが、フリーダイヤルによる受付と無償交換が実施された。このあたりのサポート体制は、やはり大手メーカーならではの安心感がある。

 ちなみに自作PCの世界では、Intel Core DuoやTulion 64などのノートPC用CPUをデスクトップPCで使うことにより、静音性とパフォーマンスの両立を図るアプローチもあるが、価格が高くなる上に対応マザーボードが少ないなど超えるべきハードルが多い。「自作の楽しみ」を否定するつもりは毛頭ないが、NEC Directで水冷PCを買えば、店頭向けモデルとはひと味違ったオリジナルの静音PCが手軽に、かつ安価に手に入れられる。

 特にタイプXは最小構成ならば10万円以下、上は70万円を超える構成まで選択可能と価格のレンジが非常に広く、それだけさまざまな選択肢が用意されているのが分かる。タイプCならば、9万円以下の低価格で購入できるのも見逃せないところだろう。随時行われている割引クーポンや割引キャンペーンを併用すれば、さらに安価に入手するのも夢ではない。タイプX/タイプCともにカスタマイズ用のベースモデルとして最小構成で購入し、少しずつ機能を強化していくという楽しみ方(当初はCeleron D 346を選択しておき、将来的に安価になったPentium Dにカスタマイズするなど)も考えられる。

 店頭やWebでは水冷PCの「静音性」を体感するのは困難だが、一度この静けさを味わってしまうと病みつきになってしまうのも事実だ。もちろん、これまで述べてきたような不満点は改善して欲しいし、もっと小型な水冷デスクトップPC(特に水冷ノートPCも)が欲しくなる。同社には今後も引き続き水冷PCの可能性を追求してほしいと改めて思う。

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