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2つのFabでインテルと戦う方法

AMDのプロセッサウェハを製造する主力工場は「Fab 30」と「Fab36」の2つ。この限られた戦力で巨大なライバルと互角に戦う方法を米国から来日した生産管理のトップが明かしてくれた。

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 今回来日してAMDの製造能力をアピールしてくれたのはAMDで製造・テクノロジ担当のシニアバイスプレジデントを務めるダリル・オストランダー氏だ。「(2005年は)大きな成功の年だった」と冒頭で述べたオストランダー氏は、生産効率の向上、IBMをはじめとする研究開発におけるパートナーシップの成功、90ナノメートルプロセスへの迅速な移行といった「成功」の具体的な内容を冒頭で紹介。

 プロセッサユニットの生産量を2008年には2005年の2倍にする「倍増計画」を明らかにし、これを現在ある2つのFabの拡張と“サブコンストラクター”との連携によって実現するとした。「(倍増計画の実現に)新しい施設は不要だ」(オストランダー氏)


米国AMD製造・テクノロジシニアバイスプレジデントのダリル・オストランダー氏。今後のプロセス移行のロードマップについて「65ナノプロセス生産は2006年下期」「2007年第3四半期に65ナノへ完全に移行」「45ナノ生産は予定通り2008年半ばに」「22ナノは2011年までに実現を目指す」と語った


AMDの高い生産効率を示すデータとしてAMDが紹介した「量産に耐えうる歩留まりを達成するまでに要する時間」では、Fab 30における0.13マイクロメートルプロセスや90ナノプロセスにおける歩留まり達成時間が短くなっていることが示されている。Fab 36における90ナノプロセスにおいては最初から量産レベルの歩留まりを達成している

 AMDの高い生産効率を実現しているのは「APM」(Automated Precision Manufacturing 自動調整製造)と「CTI」(Continuous Transistor Improvement)、「STT」(Shared Transistor Technology)とAMDが呼ぶ3つの生産管理技術だ。

 鈴木屹 日本AMD品質保証部部長の説明によると、APMは「設備性能の最適化」「製品性能目標設定」「最新の製造工程管理」「統合生産計画」「歩留管理システム」といった5つの要素を統合的に分析して、製造工程に関わる調整を行う機能ということになる。AMDではすべての生産工程にこのAPMを適用することで、少ないFabでも高い生産能力を実現していると語る。


ロットの製造工程で変更が発生すると、APMによってその変更を検知して分析。その結果はほかの製造プロセスに自動で反映される。さらにその変更がほかの製造工程にも伝達される。市場の変化やクライアントから仕様変更の要請が発生した場合は、APMで要請の内容が分析されて必要な変更が製造プロセスやほかの工程に反映される

 このAPMは工場の生産管理だけでなく、技術開発や製造の後工程、配送まで応用される。さらに“サブコンストラクター”とAMDが呼ぶ協業製造企業のチャータードセミコンダクターのFab7にもAPMを移植して、実際に初期歩留まりが向上している。

 CTIとSTTはともにトランジスタ製造に関する生産技術。CTIでは同世代のプロセス技術の中で継続的にトランジスタを改良していき、STTでは最新のトランジスタオ技術を異なる世代のプロセスルールで共有する手法。継続的にトランジスタ構造を改良することで、構造変更に伴なうリスクを低減させ、異なるプロセスルールで採用する技術をそろえることで最新プロセスルールへの移行をスムーズに行える。

 鈴木氏が「最後の90ナノトランジスタが最初の65ナノトランジスタ、という非常にシンプルな言葉になります」と表現したように、プロセス技術の移行が迅速に実行できるのがCTIとSTTを導入するメリットであるとAMDは説明する。


CTIで同一プロセスルールに少しずつ改善を加えていく。その最終発展形で採用された技術を次世代プロセスルールのトランジスタと共有することで新技術への移行が短期間で可能になる

 AMDはAPMとCTI、STTを生産現場に導入することで次世代技術への迅速な移行(立ち上げにかかる時間は80%に低減)と高い水準の歩留まり、新しい仕様を短時間で製品に反映(現在では最長でも1日で可能)といった柔軟な対応を可能にした。今後はこの「ジャストインタイム」方式をさらに推し進めて「顧客対応」「サプライチェーンの短縮」を実現するとアピールしている。

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