“革命”という名のマウス:元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)
元麻布春男氏が最新PC事情を分析する本連載。今回は“革命”の名を与えられたロジクールのマウスを切る。その画期的なフィーチャーは、これまでの操作性を一変させるかもしれない。
将来的にVistaのFlip 3Dをサポートする?
正直な感想を述べると、これらの機能で“革命”と呼ぶにはやや大げさかもしれない。しかし、このマウスが持つ将来性を考えるとそうでもなさそうだ。現在開発が進められているWindows Vistaでは、Aeroを有効にした場合、Flip 3Dと呼ばれる機能が利用できる。ロジクールからMX Revolutionでサポートするという公式のアナウンスはないのだが、このサムホイールでFlip 3Dが使えるようになるのではないかと筆者は思っている。米国で販売されているワイヤレスキーボードとマウスをセットにしたCordless Desktop MX 3200 Laserで、Flip 3Dをサポートすると表明しており、MX Revolutionでサポートできないはずはない、と考えられるからだ。
もっとも、このサムホイールにはズーム機能を割り当てることもできるから、Flip 3Dが利用できるようになるまでは、ズームにしておくというのもアリかもしれない。サムホイールをズームに設定した場合、ホイールクリックで100%表示に戻るのがこれまた便利だ。スクロールホイールに中指を置く筆者のスタイルでは、サムホイールがちょっと遠い(人差し指派ならあまり問題はないだろう)のだが、慣れようか、という気にさせてくれる。基本的に筆者は自分のスタイルに合わせてマウスを選び、マウスに合わせることはしないのだが(単に億劫なだけ?)、宗旨替えを余儀なくされそうだ。
さて、肝心のMicroGearによるフリースクロールモードと、クリック・トゥ・クリックモードの利用だが、思った通り、かなり便利である。単に高速スクロールと、精密スクロールを自動的に切り替えてくれるだけでなく、ホイールクリック1つでいつでもモードをオーバーライドして切り替えられるのがいい。
スクロールホイールにモーターがつながっているだけに、ホイールクリックの感触自体はあまり良くない(ガコンという感じ)が、モードの切り替え機能は、それを補って余りある。本来、ホイールクリックにはダブルクリックを割り当てるのがWindows 3.x以来の筆者の流儀なのだが、ここでも宗旨替えさせられそうだ(あまり使わない進むボタンをダブルクリックにしようか)。
Smart Shiftによる自動切り替えも、アプリケーション単位でスタティックにどちらかのモードを決めうちするのではなく、同一アプリケーション内でも、ユーザーがホイールを回す強度(速度)によっても動作を変える。強く弾くように回すとフリースクロールモードに、ゆっくり回すとクリックモードでスクロールするから、自然な操作感が得られる。
また、フリースクロールモードで高速スクロール中、ホイールを指で止めると、意外とピタッとスクロールが止まるのが、結構快感だ。というより、これなしでは、かえって使いにくかったかもしれない。高速スクロール中、どこで止めたらいいかなんて見えないだろう、と思うかもしれないが、人間の目というのは偉大なもので、なれてくるとドキュメントのどのあたりをスクロールしているか分かるようになってくる。
ただし、これがどれくらいピタッと狙い通り止められるかは、アプリケーションの動作に依存する部分も少なくない。ページをモタモタとレンダリングするようなアプリケーションでは、どう頑張ってもうまくいかないことが多い。これは人間の目のせいでも、マウスのせいでもなく、どうしようもないところだろう。
ホイール技術でロジクールが先行する意味
マウスの世界でシェア的に、あるいは技術的にリードしているのがマイクロソフトとロジクール(世界的にはLogitech)の2社であることに異論のある人は少ないだろう。上述したレーザーセンサーの採用や、光学式マウスのワイヤレス化といった技術革新を行ったのがロジクールなら、スクロールホイールの考案や、スクロールホイールに対するチルト機構の付与など、ホイール関連の技術革新はマイクロソフトが主導してきた。
今回、ホイールに関する技術革新をロジクールが行ってきたのは意表を突かれた気がしなくもないが、そういえばマウスにモーターを初めて入れたのはロジクールだった(フォースフィードバック技術を応用した2000年のiFeelMouse)。iFeelMouseはとてもユニークなマウスで、この技術を1製品だけで捨ててしまったのは本当に惜しまれるが、今回のMX Revolutionでモーター内蔵型マウスが復活した格好だ。
ロジクールによる技術革新のうち、レーザーセンサーは1年ほどで他社が追随してくることとなった。が、今回のMicroGearは他社が追随するのは、かなり厄介なのではないかと思われる。それは単にメカ系を作り込むだけでなく、ソフトウェア面での作り込みが必要になるからだ。特にソフトウェアサポートを必要としないレーザーセンサーとは異なり、ソフトウェアと組み合わせて高い使い勝手を発揮するMicroGearに他社が追いつくのは大変だ。それは、マウスのパッケージに自社製マウスユーティリティをバンドルしている会社が極めて少ないことでもうかがえる(もちろん、ロジクールとマイクロソフトは、自社製のマウスユーティリティを持つ)。2大マウスベンダの1つであり、ソフトウェア力に自信を持っているはずのマイクロソフトが、いつまでにどのような回答を用意できるのか、楽しみでもある。
MX Revolutionに難点があるとしたら、おそらくそれは価格だろう。1万2800円という価格は、間違いなくマウスとしてはハイエンドに位置付けられる。が、MX Revolutionはそれに見合う価値があるのではないだろうか。MicroGearという画期的なスクロールホイールだけでも十分な話題性があったと思われるのに、サムホイール、One-Touch Searchなどほかにも使い勝手を高める工夫が盛り込まれている。価格が高いと感じる向きにも、まず店頭で触ってみることをおすすめしたい。
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