歴史は繰り返すのか?──Meromの「パワー」と「エコ」を調べる:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
かつてモバイル向けCPUは性能と消費電力をともに向上させていた。Baniusの時代になってこの流れが変わったがYonah、そしてMeromはそのトレンドを受け継ぐことはできるのだろうか。
28%の性能向上は果たしたものの……
それでは実際のベンチマークプログラムを利用して、Core DuoとCore2 Duoの性能の違いを検証する。今回、用意したのはASUSTeKがOEM先に出荷している「Z96JS」というNapaプラットフォームのノートPCで、CPU以外のスペックはすべて同じになっている。また、搭載するCPUの動作クロックはどちらも2.33GHzと同じになっているので違いはCPUのアーキテクチャだけということになる。
テストに利用したのは、通常筆者のベンチマーク記事で利用しているSYSmark 2004 SE、3DMark06、TMPGenc 4 XPRESS、CineBench 2003、lameの5つだ。通常のベンチマーク記事では3D系のベンチマークをいくつか追加しているが、今回はノートPCであるということで省略する。また、SYSmark2004 SEのうち、Internet Contents CreationがCore2 Duoマシンでは完走しなかったので、こちらも除外してある。
今回は省電力性能を比較ために、MobileMark 2005というノートPCの性能を計測できるベンチマークを追加した。MobileMark 2005では、アプリケーション利用時の総合性能(SYSmark2004のOffice Productivityに近いテスト)とバッテリー駆動時間を合わせて計測できる。今回は、前述のアプリケーション利用時、DVD再生時、文書閲覧時のバッテリー駆動時間を計測した。
SYSmark 2004のOffice Productivityは、Officeやブラウザなど実在のオフィスアプリケーションを利用して、文書をノートPCで作成していくときの性能を相対的に計測するものだ。この結果ではCore2 Duoは、Core Duoに比べて10%程度性能が向上している。このあたりは、同時実行できる命令数が3から4に増え、かつL2キャッシュが2Mバイトから4Mバイトに増えたことが影響していると考えられる。
MobileMark 2005のProductivityテストの内容は、SYSmark 2004のOffice Productivityに近いが、Adobe Photoshopなどの一部コンテンツ作成系のアプリケーションも含まれるノートPC向けの総合テストだ。こちらでは28%も性能が向上している。デスクトップPCのCore2 Duoもそうだったが、どちらかと言えば、コンテンツ作成系での性能向上が著しいのがCore2 Duoの特徴といえ、それがでた結果と考えられるだろう。
TMPGenc 4を利用して、8MbpsのMPEG2ファイルを3MbpsのWMVへとトランスコードするのにかかった時間を計測し、それでフレーム数を割って1秒間に処理できたフレームレートを計測したのがこのテストだ。こちらでは11%の性能向上が確認されている。
3DMark06は3Dベンチマークの代表と言っていい存在だ。結果はほとんど差がない。3DのベンチマークではCPUの結果に与える影響は限定的で、GPUの性能がすべてを左右するといっても過言ではないからだ。
3Dレンダリングのテストである、CineBench 2003はマルチスレッド、シングルスレッド両方の処理が可能で、CPUの限界性能を見せるには適したテストだ。結果は、シングルスレッド時に18%、マルチスレッド時に16%の性能向上を実現している。いずれもアーキテクチャだけでこれだけの性能向上を実現していることがよく分かる。
MP3エンコーダのLameを利用したテストでは、WAVファイルをMP3にエンコードして、それにかかった時間でWAVのフレーム数を割っている。結果は、シングルスレッド時に9%、マルチスレッド時に10%程度の性能向上が実現されている。
バッテリーの駆動時間では、いずれのテストでもCore DuoがCore2 Duoを上回っている。もっとも、その変化ははさほど大きくなく、文書作成時(Productivity)で6%、文章読み込み(Reader)で5%、DVD再生時(DVD Playback)で5%程度、Meromの駆動時間が短くなっている。こうした結果を見ても、Core2 Duoの平均消費電力はCore Duoに比べて若干大きくなっていると考えるのが妥当だろう。確かに、バッテリー駆動時間の短さは、性能向上(10%以上)を下回っており、性能を得ただけとの差し引きでは全体的には向上しているといってもよい。しかし、これでは以前(性能を上げるために少しずつ消費電力が犠牲になってきた)の繰り返しである。今後は、「新しいアーキテクチャは性能が上がって消費電力は下がるのが当然)、といったことが当たり前のように実現して欲しい。
バッテリー駆動時間は若干短くなるが、性能面では1割以上のゲインが期待できる
以上のように、ベンチマークによって若干の変動があるが、Core DuoからCore2 Duoに変えることで、10~20%程度の性能向上を期待できるだろう。今後、BTOのPCの場合、同クロックのCore DuoとCore2 DuoがCPUの選択肢に登場するということも少なくないだろうから(おもに価格で違いを出すために)、もし性能を何よりも重視したいのであれば、Core2 Duo搭載モデルを購入することになるだろう。
ただし、その分バッテリー駆動時間が犠牲になるのは明らかである。今回の結果では平均して5%程度という結果がでたが、少しでもバッテリー駆動時間が長いほうがよいというのであれば、Core Duoを選択すべきだ。
なお、今回発表されたMeromコアのCore2 Duoは、システムバスが667MHzとCore Duoと同じになっている。インテルは来年の第2四半期に、新しいプラットフォームとなるSanta Rosa(開発コード名)を用意しており、システムバスは800MHzに引き上げられる。もし、より性能が必要であれば、とりあえず現状はCore Duoなり、FSB 667MHzのCore2 Duoを搭載したノートPC購入しておいて、来年の第2四半期以降に登場するSanta RosaのノートPCへ乗り換えを検討するといいだろう。
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