迷走する“EVD”を試しに購入してみた(後編):山谷剛史の「アジアン・アイティー」(3/3 ページ)
「 前編」で購入してきたEVDで筆者は“華流AVライフ”を満喫……できたのだろうか。そもそも、EVDに明日はあるのだろうか。
あまり明るくなさそうなEVDの未来
昨年12月からプレーヤーが一斉に販売されたEVD2ことHVDは、映像コーデックにmpeg2_videoを、音声コーデックにAC3を採用しているが、ハイデフに対応しただけで、ディスク構造はDVDと同じであることが中国メディアによって検証されている(筆者も入手したHVDディスクを分析したところ同じ結果であった)。EVDは音声コーデックにEACを採用するなど技術的にもまだオリジナリティはあるし、EVDの1920×1080ドットの画質がEVD2の960×720ドットの画質より優れているのは、一般のユーザーにも分かるだろう(EVD2のスペックでは1920×1080ドットをサポートしているが、現在入手できるタイトルのほとんどが960×720ドットになっている)。EVD2がEVDと互換性がなく、筆者が購入したEVDプレーヤーで再生できないことも確認している。
もうひとつの中国次世代光ディスク規格「HDV」も、DVDを少し変えただけという検証結果が中国のメディアによって明らかとなっている。EVDがHDVやHVDに比べて技術的に一日の長があるため、中国信息産業部がEVDを中国の次世代光メディアに認定したのもうなづける話だ。
EVD2対応プレーヤーが店頭で並んでいるのに筆者がEVDを購入したのは、EVD2よりもEVDのほうがよほど新世代と呼ぶに相応しいスペックであることと、EVDプレーヤーで再生したDVDの再生映像が「かなりいい」という購入者の報告がおもな理由である。
しかし、先に述べたようにEVD陣営がHVDをEVD2として再出発させることを決定して多くのEVD2プレーヤーを発売する。このEVDの大転換にたいして、以前の検証記事を読んだユーザー達が「EVDと完全非互換のEVD2をリリースし、過去のユーザーをサポートしないのはおかしい。EVDが改良されてEVD2になったように見えるが、実際はダウングレードである」と技術的な側面から嘆いている。
陣営企業のために互換性を無視して二転三転するEVD規格、DVDと比べてもそれほど向上していない技術、それに少ないコンテンツベンダーの現状を考えると、EVDプレーヤーでDVDを再生したときの満足感こそあれ、それだけでは消費者が支持するとは考えにくい。EVD陣営は、海外メーカーによるDVDのライセンス料が高すぎるからライセンス料の安いEVDをプッシュするけれど、対応するプレーヤーが店に並ぶ段階ではEVDプレーヤーはDVDプレーヤーの数倍の価格だ。2008年までにDVDの販売を止めさせてEVDだけを販売するとEVDメーカー連合はいうものの、EVDを消費者が受け入れるのはかなり難しいだろう。
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