TDP45ワットの低価格デュアルコア──Athlon X2 BE-2350は買いか待ちか:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
AMDの新ブランド「Phenom」の説明資料にさりげなく加えられていた「Athlon X2」が登場した。「少食でも働き者」な新しいラインアップの力量を検証する。
消費電力が減ってパフォーマンスに影響は?
Athlon X2 BE-2350の性能と消費電力をベンチマークでチェックしていこう。今回も筆者がITmediaのレビュー記事で利用している一連のベンチマークプログラムを使っている。評価用システムの構成も過去1年間の記事で利用したものと同じ環境であるので、今回測定した結果は過去の記事で掲載したものと比較できる。興味があるユーザーは参考にしてほしい。なお、OSはWindows XPからWindows Vistaへ移行しているが、利用しているベンチマークプログラムのうちSYSmark 2004 SEだけはWindows Vistaに対応していないので、これまで通りWindows XP環境化でのテスト結果を掲載している。
今回はAthlon X2の測定結果に加えて、従来のAthlon 64 X2からいくつかのモデルと、インテルのCore 2 Duo E6700、Core 2 Quad Q6600の結果をあわせて掲載している。
ベンチマーク結果の示す傾向は、動作クロックに差にほぼ似通ったものになっている。動作クロックが2GHzのAthlon 64 X2 4000+(L2=1Mバイト×2、TDP89ワット)と比較して、Athlon X2 BE-2350の結果はだいたい妥当であるといっていいだろう。今回は65ナノプロセスのAthlon 64 X2 4000+(動作クロック2.1GHz、L2=512Mバイト×2、TDP65ワット)が用意できなかったためデータを比べることができなかったが、基本的には同じコアを利用しているので、今のAthlon 64 X2ユーザーであれば性能の優劣は予想できるだろう。
パフォーマンスは従来製品とほぼ同程度のAthlon X2 BE-2350であるが、消費電力では駆動電圧が1.15~1.2ボルトと低めに設定され、TDPは45ワットに抑えられている。それに併せて平均消費電力も従来の65ワット版や89ワット版のAthlon 64 X2に比べて低くなっている。アイドル時における動作クロックは従来製品と同じ1GHzなのであまり変わらないものの、アプリケーションを走らせているときは、従来製品、例えばTDPが65ワットのAthlon 64 5000+に比べて20~30ワット前後低くなっている。少なくなった消費電力(そして、それに伴う冷却機構の小型化、小型PCへの搭載)こそ、本製品の最大の特徴といえるのではないだろうか。
1万円強という価格設定はデュアルコアPentiumとよい勝負か
以上のようにAthlon X2 BE-2350は、従来の65ナノプロセスのAthlon 64 X2と同じコアを利用しているため、性能もそれらの同クロックの製品と同等で機能面でも目を見張るような新機軸があるわけではない。しかし、TDPが45ワットとなったことで、システム全体として消費電力が削減されただけでなく、熱設計的に厳しい小型のPCケースを採用する製品でも搭載が可能になったことは大きい。
さらに、その価格にも注目しておきたい。2.1GHzのBE-2350が91ドル(日本円で約1万1000円)、1.9GHzのBE-2300で86ドル(日本円で約1万円)とデュアルコアCPUとしてはかなり安価に設定されている。ただ、BE-2300とTDP以外は同じAthlon 64 3600+(動作クロック1.9GHz)の実売価格が9千円を切り、BE-2350とTDP以外は同じAthlon 64 4000+(動作クロック2.1GHz)の実売価格が1万3000円程度であることを考えると、BE-2350はまだお買い得としてもBE-2300はやや高めと見ることができる。やはり、Athlon X2シリーズの「TDP=45ワット」に価値を見いだすユーザーにAthlon X2はその価値があるということになるだろう。
なお、インテルも低価格なデュアルコアCPUとしてPentium E1xxxシリーズをリリースしている。こちらの価格も1万円程度と安価に設定されており、安価なデュアルコアCPUを1台用意しようと考えるユーザーは、Athlon X2とPentium E1xxxが比較することになるだろう。ただ、この場合も、TDPでAthlon X2が45ワットとPentium E1xxxシリーズの65ワットより低めに設定されているので、このアドバンテージを評価できればAthlon X2を選択するのが妥当だろう。
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