連載

アップルが考える「ポータブルバリュー」山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(2/2 ページ)

衝撃的なデザインの「Air」、大画面でパワフルな「Pro」、廉価なCore 2 DuoマシンのMacBook。三者三様なラインアップだが、そのコンセプトは共通だという。その「アップルの思想」を聞く。

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アップルを支えてきたのは「ポータブル」

Office for Mac(Mac版Microsoft Office)の提供、インテルプラットフォームの採用、仮想化環境である「Boot Camp」など、多くのWindowsユーザーがMacをシームレスで違和感なく使える環境が整ってきた

──それぞれの製品のポジショニングはどうなっていますか。

服部 ノートPCを選ぶときに、ユーザーは、携帯性、価格、性能という3つの要素を考えるんじゃないかと思います。3つのラインアップを並べたときに、ハードウェアフィーチャーはほぼ共通していますから、その次の選択基準として何にウェイトを置くかということになりますね。例えば、価格を優先すれば、MacBookとなるわけです。同じクラスのCPUを搭載したWindowsノートPCと比べてみても、MacBookは価格競争力がとても高いはずです。

 とはいえ、Macが高いと思われているのも事実です。デザイン的にも外車に例えられることが多いようです。プレミアムなイメージなんですね。なんとなく高いイメージがあるのに、実は安いんです。

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──そうはいっても、多くのユーザーはWindowsに慣れきっています。そのハードルは超えられるのでしょうか。

服部 MacかWindowsかというのは永遠の議論ですね。Leopardは、「Boot Camp」の実装で、Mac上でWindows環境を動かすこともできますし、Microsoftからは、Office for Mac(Mac版Microsoft Office)もリリースされています。1台で双方のOSが使えるのはMacだけです。これなら、会社のWindowsと自宅のMacをシームレスに使えるんじゃないでしょうか。

 加えて、今の若い世代にとってOSは関係ないように見えますね。彼らはiPodを知っています。そして、それがアップルという会社の製品だということも知っています。だから、Macに対する(価格が高いPCであるという)先入観がまったくないんです。ちなみに、アップルのプレスリリースには、“世界最高のパーソナルコンピュータ”というフレーズが頻繁に出てきます。これは、「競合他社に惑わされることなく、自分たちがどうあるべきかを常に考えています」という姿勢の表れなのです。

45ナノメートルプロセスルールのCore 2 Duoを搭載する最新のMacBook MB403J/A

──Macが売れているという声をよく耳にします。売り上げの伸びも顕著なようですね。その理由はどこにあるのでしょうか。

服部 現在のアップルの成長を牽引してきたのは、ポータブル分野の製品であるということは事実です。1989年のMacintosh Portable、1991年のPowerBook 100、1999年のiBook 300、2001年にはチタンボディのPowerBook G4と、エポックメーキングな製品を紹介してきました。

 今、MacはインテルのCPUを搭載するようになり、WindowsノートPCと性能と価格を比較しやすくなったことも1つの要因かもしれませんね。アップルとインテルは、とても良好な関係にあります。なぜなら、アップルもインテルも常にイノベーションを考えている企業だからです。相通じるところがあるんでしょうね。

Macを意識させないのがMac

──大事なのはMacを使ってユーザーは何をやるかですが、アップルの考えるコンピュータリテラシーとは、どういうものなのでしょう。

服部 先ほどMacが教育市場に普及しているという話をしましたが、教育現場でコンピュータを使う場合、今や、コンピュータそのものを教えることではないんですね。情報教育というくくりではないんです。

 そこに鍵があるんじゃないでしょうか。アップルが考えるコンピュータリテラシーは、コンピュータを使える能力ではないということです。米アップルのCEOであるスティーブ・ジョブズは、「コンピュータを使って、いかに人々の生活を豊かにできるか」という思想を持っていて、アップルのすべての製品にその考えが反映されています。

 コンピュータを使う知識が豊かな人もそうでない人も、同じようにMacを使えることが大事なんです。もしかしたら、すごくがんばって、コンピュータの勉強をしても得られるものはそんなに変わらないかもしれません。だから、コンピュータを覚えるために努力する時間を、ほかのことに使えるんです。例えば、Macを使うと自分のカメラの腕が悪いことが分かるのだそうです。なぜなら、コンピュータを意識することなく、自分が撮影した写真に集中できるからでしょうね。撮影した写真を眺める操作で悩むことがないので、自分の写真ときちんと向き合えるそうです。

 いずれしても、MacBookのラインアップは、デザイン、製品の完成度など、どれをとってもほかの追随を許さないはずです。シンプルでありながらディティールには気をつけているあたりなど、世界のなかでも日本のユーザーにこそ受け入れられる要素もMacは持っています。だから、日本のユーザーももっとMacのことを知ってもらいたいですね。

 コンピュータにしかできないことは、まだまだあると思っています。携帯電話などの定着によって、インターネット利用では差が縮んでいくでしょうが、そうじゃないところに、コンピュータが生きるシーンはたくさんあるはずです。そういうところで、きっとMacが支持されていくと信じています。


 今、アップルを支える2つの事業は、音楽とMacだ。そして、その両者は「50:50」で推移しているという。アップルは世界一のコンシューマーカンパニーと呼ばれることがあるが、少なくとも、ハードウェアメーカーではないように思う。強いていうなら、デジタルライフスタイルベンダーといったところか。彼らにとって、Macはライフスタイルを提案するための手段にすぎないということなのだろう。

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