ソニー入魂の最高峰モバイルノート「VAIO type Z」に迫る(後編):VAIOの旗艦モデルを徹底検証(3/3 ページ)
2.8GHzのCore 2 Duo、外付けGPU、SSD RAID 0といったハイスペックを1.4キロを切るボディにおさめたVAIO type Z。後編はその性能を見極める。
SPEED/STAMINAモードでバッテリー駆動時間はどう変わる?
パフォーマンスを重視したことで、ボディの発熱や騒音とともに気になるのがバッテリー駆動時間だ。ここでは、WMV形式の動画ファイル(640×480ドット/10Mbps)をデスクトップに置き、バッテリーが満充電の状態からWindows Media Player 11で全画面再生し続け、バッテリー切れでシャットダウンするまでの時間を計測した。使用したバッテリーは標準添付の6セルタイプ(10.8ボルト 5400mAh)だ。
type Zの電源プランは、SPEEDモード時が「高パフォーマンス」、STAMINAモード時が「VAIOスタミナ設定」だ。さらにVAIOスタミナ設定では、液晶ディスプレイの輝度を9段階のうちの下から5段階目まで下げた。高パフォーマンスの場合は輝度が最大だ。いずれの場合も放熱制御は「バランス」に設定している。
計測結果を見ると、輝度最大かつ高パフォーマンス設定のSPEEDモードと、輝度が約半分でVAIOスタミナ設定のSTAMINAモードでは、1時間~1時間半程度の差が付いた。STAMINAモードでのバッテリー駆動時間は、VGN-Z90USが3時間14分、VGN-Z70Bが3時間46分となかなか健闘している。
公称のバッテリー駆動時間は、直販モデルで約7.5~約11時間、VGN-Z70Bで約9時間をうたっており、これらと比べると相当短い結果となったが、今回のテストはかなり厳しい条件なので、もっと輝度を下げたり、省電力設定を見直して余計な機能をオフにするなど工夫すれば、駆動時間を延長できるだろう。
より長時間のバッテリー駆動を切実に求めるならば、スペアのバッテリーを用意したり、約155グラムの重量増と底面の奥が出っ張るのと引き替えに、直販モデルで約12時間~約17時間、VGN-Z70Bで約13.5時間の連続駆動をうたうオプションの9セルバッテリー(8100mAh)を使うのも手だ。
フリーソフトの「YbInfo」を使い、バッテリー駆動時におけるシステム全体の消費電力も計測してみた。計測した状況は、アイドル状態で放置した場合、アイドル状態から無線LAN機能をオンにした場合、そこからDVD-Videoを再生した場合、DVD-Videoの再生をやめてWMVファイルのエンコードを実施した場合の4段階だ。システムにかかる負荷を段階的に増やしながら、消費電力の推移を見る。
電源プランや液晶ディスプレイ、放熱制御の設定はバッテリー駆動時間の計測時と同様だ。計測時の室温は約25度に設定した。
計測結果はバッテリー駆動時間の場合とほぼ同じ傾向だ。STAMINAモードと液晶ディスプレイの輝度を下げた設定を組み合わせることで、消費電力を半分以下に抑えられるケースも見られた。WMVファイルのエンコードでは、CPUやメモリの消費電力が多いVGN-Z90USがVGN-Z70Bよりかなり不利な結果となっている。
モバイルノートの限界に挑戦し続けるVAIO
これまでのモバイルノートPCは、携帯性を優先する一方で、何かに妥協を求められるのが常だった。例えば、それはパフォーマンスや拡張性、画面サイズ、入力環境といったものだ。実際のところ、モバイルノートPCを持ち歩いているユーザーの多くは何かしらの不満を持ちつつも、心のどこかで「モバイルノートPCにすべてを求めるのは無理だろう」とあきらめてきたのではないだろうか。
しかし、今回type Zを短期間ながら触れてみると、ソニーが製品コンセプトとして掲げる「モバイルでも一切の妥協はしない」という理想の世界が、かなり高いレベルで実現されつつあることに、(少々おおげさかもしれないが)衝撃を受けた。
ソニーの開発陣がここまでtype Zを徹底して作り込むことができた背景には、パフォーマンスとモバイルの両立を目指した「VAIO type S(SZ)」や、日本のビジネスシーンに特化した「VAIO type G」、バイオノート505の流れをくむ「VAIO type T(TZ)」の開発といった技術の蓄積があることに加えて、2008年に入ってアップルの「MacBook Air」やレノボ・ジャパンの「ThinkPad X300」といった、薄型軽量かつ高性能な13型クラスのモバイルノートPCが続々と登場したことも無縁ではないだろう。
type Zは後発ということもあり、MacBook AirやThinkPad X300のようにスモールフォームファクタのCPUを使って薄型ボディに注力するのではなく、あえて最薄は追求せず、性能面で有利な通常電圧版のCore 2 Duo、13型クラスの高解像度液晶、外付けGPU、光学ドライブを搭載したうえで、小型化と軽量化を極限まで突き詰めて、最軽量時でMacBook Airより軽く仕上げてきた。こうしてできあがったtype Zには、ソニーのモバイルノートPC開発陣のプライドを感じる。
“エグゼクティブ向けモバイルノート”の看板通り、直販モデルでSSD RAID 0構成や高解像度液晶といった魅力的なメニューを選択すると、あっという間に30万円台後半や40万円を超えてしまうような高額になるが、Eee PCなどのNetbookがモバイルPCの価格破壊を行っているさなか、そのアンチテーゼともいわんばかりに、徹底した高級志向のモバイルノートPCを投入してくるとは天晴である。
予算に余裕がある幸福なユーザーにはSSD RAID 0構成を文句なくおすすめしたいが、実売価格26万円前後の店頭モデルVGN-Z70Bもバランスのよいスペックで買い得感がある。いずれにせよ、type Zは標準的なノートPCより高くつくが、これまでのモバイルノートPCでは決して味わえない世界がそこには存在する。入力環境など細部に課題はあるが、メインマシン並のパフォーマンスを携帯したいと望むユーザーであれば、高い満足度が得られるはずだ。
なお、2008年の後半には45ナノプロセスルールのスモールフォームファクタ版Core 2 Duoも投入される予定だ。これに合わせて、ソニーを含む各社が新型のモバイルノートPCを投入してくることだろう。この夏でノートPCのフラッグシップモデルを刷新したVAIOが、年末にかけてどのようにモバイルノートPCのラインアップを磨き上げてくるのか、type Zの高い完成度を見ると、今から楽しみでならない。
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