“華麗なるミニノート”――ASUS「Eee PC S101」の真価を問う(後編):性能、温度、騒音、スタミナは?(3/3 ページ)
ボディを一新したEee PC S101のパフォーマンスやバッテリー駆動時間はどう変わったのか? 後編では再び901-X/1000H-Xと比較しながら、より深く検証する。
バッテリー駆動時間はうれしい誤算も
S101で最も懸念されるのは、バッテリー駆動時間の減少だろう。前編で紹介したように、ボディを薄く仕上げるため、バッテリーパックを背面に装着する棒状のリチウムイオンからパームレスト直下に装着する薄型のリチウムポリマーに変更し、バッテリー駆動時間の公称値は901-Xの約8.3時間、1000H-Xの約6.9時間に比べて、S101では約4.6時間に短縮されている。
そこで、実際にどの程度バッテリーが持つのか、S101、901-X、1000H-Xの3台で2つのテストを実施した。まず1つは無線LANでインターネットを利用する状況を想定し、「BBench 1.01」(海人氏作)を使って、10秒おきにキーボード押下、60秒ごとに無線LAN(IEEE802.11g)によるインターネット巡回(10サイト)を行う設定でテストした。もう1つは動画を連続再生するというもので、ビットレート約3Mbps/解像度640×480ドットのWMVファイル(CPU負荷率は30~40%程度)を全画面で再生し続けた。
Super Hybrid EngineのモードはACアダプタ接続時とバッテリー駆動時でパフォーマンスが自動的に変化するAutoの設定だ。ディスプレイの輝度はいずれも最高値、無線LANとBluetoothはどちらもオン、音量は最大値の半分(ヘッドフォン接続)とした。
テスト結果は意外にもS101が健闘した。BBench 1.01では4時間43分と901-Xの5時間3分にはおよばないが、公称値を上回り、モバイルノートPCとして十分といえるバッテリー性能だ。動画の連続再生についても3時間20分と、ファイルの内容にもよるが2時間程度の映画ならバッテリー駆動で見られるだろう。
バッテリー容量で勝る1000H-Xの結果がS101より劣る場合があったのは、1000H-Xのディスプレイ輝度がほかの2台に比べて明るいからだ。3台ともディスプレイの輝度は16段階に調整できるのだが、1000H-Xは輝度を半分に下げた状態でS101と同じ程度の明るさになる。試しにこの状態で1000H-Xのバッテリー駆動時間を計測したところ、動画の連続再生で4時間1分と901-Xに迫るスタミナを発揮した。
ちなみにS101は901-Xと比べても少し輝度が低めだ。3台とも輝度を下げたり、省電力の設定を見直すことで、より長時間のバッテリー駆動が可能になるが、S101はテスト時の状態である輝度の最高値が3台の中で最も低いので、今回のテスト結果より大幅に駆動時間を延ばすことは難しいかもしれない。
※Eee PC S101のメーカー公称バッテリー駆動時間は「最長約6時間」に変更されました(2008年11月21日22時/編集部追記)
低価格ミニノートPCでも一切妥協しないS101
台北で発表されたS101の情報を初めて見たとき、薄型軽量のボディには少なからず驚いたが、CPUやチップセットはほかのAtom N270(1.6GHz)搭載の低価格ミニノートPCと変わらないため、実際の使用感はそう変わらないだろうと高をくくっていた。
しかし、その予想は実機に触れてみて裏切られることになる。ボディの変更によるデザイン性や携帯性の向上は想定内だが、新型SSDの恩恵でWindows XPの起動をはじめとする各種動作が非常に軽快に行える点、キーボードの作りに無理がない点、ボディの表面が発熱しにくく、かつ静音性が高い点、従来機には負けるが、なかなかのバッテリー駆動時間を維持している点など、モバイルノートPCに求められる資質がよく研究されている。実際、その使用感はときに低価格ミニノートPCであることを忘れ、ハイスペックなモバイルノートPCであるかのような錯覚に陥るほどだ。
無論、液晶ディスプレイの解像度は1024×600ドット、SSDの容量は16Gバイトに制限されており、総合的なパフォーマンスもCore 2 Duo搭載のモバイルノートPCには遠くおよばないため、外出先でパワフルにPCを使いたいユーザーにとって、S101はモバイルノートPCに代替できるものではない(SSDの容量はデルの「Inspiron Mini 9」が32Gバイトに拡張されたので、Eee PCでも遠からず増えるかもしれないが)。
しかし、日常的に携帯してブログやメールのチェックを行ったり、動画サイトのコンテンツを楽しんだりといった利用法であれば、多くのユーザーがS101で大いに満足できるはずだ。これまで、Atom N270(1.6GHz)搭載の低価格ミニノートPCのデザインに納得できなかったユーザーもS101なら取り込める可能性が十分ある。バッテリー駆動時間を最優先するなら901-Xが向いているが、この冬に低価格ミニノートPCの購入を検討しているなら、S101は筆頭候補に挙げられるだろう。
最後にこれは余談だが、ASUSはEee PCシリーズでいち早く低価格ミニノートPC市場に取り組み、今では豊富なラインアップをそろえることになった。これに対して、国内メーカーはようやく重い腰を上げたばかりだ。国内メーカーは既に実績があるモバイルノートPCと新ジャンルの低価格ミニノートPCをどう売り分けていくかに苦慮しているようだが、ほかのノートPCの販売に影響を与えないように、質感や使い勝手を落とした低価格ミニノートPCを投入しても、もはやこのジャンルに全力を注いでいる海外メーカーにかなわないのではないだろうか。
S101の高い完成度を見せつけられ、国内メーカーが今後この市場でシェアを取っていくには、よほどの覚悟が必要であることを再認識した。より魅力的な低価格ミニノートPCを作り込める技術力は備えていながら、コスト面やPC市場の価格破壊への懸念など、さまざまな事情から低価格ミニノートPCに“本気”になれない国内メーカーだが、迷っていられる猶予期間はそう長くはないだろう。今後は国内メーカーの奮起に期待しつつ、低価格ミニノートPC市場の動向に引き続き注目していきたい。
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