コラム

モバイラーマストダウンロード 「x-Radar」小寺信良の現象試考(2/3 ページ)

ソニーが提供している位置情報アプリ「x-Radar」が実に面白い。Wi-Fiを利用して現在地を割り出すだけではなく、周辺に何があるかを示して案内までしてくれる。いわゆる「地図」とは異なる、位置情報の見せ方だ。

x-Radarのそもそも


x-Radarの開発責任者、永田聡氏

 x-Radarの技術的要素として、まずGPSなしに自分の位置が分かることが重要だ。無線LANを使った位置情報を割り出すエンジンが、クウジットの「PlaceEngine」である。そして次に、そこに何があるかの地域情報サービスが必要だ。それを提供するのが、ソニースタイルの「PetaMap」である。

 x-Radarは、このエンジンとデータベースを結合させ、地図に頼らない位置情報を提供するソニー製のソフトウェアである。x-Radarの責任者であるソニー ニューエクスペリエンス企画開発課の永田聡氏と、ソニーマーケティングでPetaMapを推進する新規ビジネス推進2課の佐藤竜太氏にお話を伺った。

永田氏: x-Radarは今回初めてVAIO type Pにプリインストールという形になりましたが、2007年11月からソニースタイルの協力で無償公開してましたし、もともとVAIOにのせるために開発していたわけではないんです。私は以前ビデオ事業部にいたんですが、部活動的に集まってなんか楽しい事をやろうと。当時はいろんな部署に、隠れ位置情報マニアといいますか、位置情報を研究・開発している人が結構いたんですね。そういう人たちが集まってきて、x-perienceというチームを作ったのが5年前ぐらいの話です。

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 もともとのテーマは、「不良ナビ」。ナビというのは、ある目的の場所に向かってナビゲートするものですが、「今あなたの居る場所の近くに楽しいものがありますけどどうしますか? 行ってみますか?」というような、誘惑するアプリケーションはできないだろうかと考えたんです。「ドラゴンボール」における「ドラゴンレーダー」のようなものが原点ですね。

 位置情報はまあGPSがある。じゃあスポット情報をどうしようかと社内で探したところ、ソニーマーケティングに「ペタマップ」があったわけです。それで協力してやろう、ということになりました。


PetaMapを推進する佐藤 竜太氏。ディーラーコンベンションで筆者に説明してくれたのも、佐藤氏であった

佐藤氏: 現在PetaMapには、ユーザーからの口コミ情報が約10万件、オフィシャル情報として「グルメぴあ」、「るるぶトラベル」、「Golf Digest Online」などと連携したものが約20万件、合計30万件のデータがあります。オンラインでこれらの情報が使えるわけですが、PetaMapではこれらの中から自分に必要な情報だけを収集して、データをダウンロードすることもできます。例えば「nav-u」のようなナビゲーションに入れて、オフラインでも活用できるわけです。x-Radarには、この30万件分のテキスト情報データが収録されています。

 x-Radarは、データベースを更新するために、2週間に1度アップデートが行なわれる。現在はソフトウェアをまるごとインストールし直す形だが、将来的にはアプリとデータベースを分離して、別々に更新できるようになる予定だ。

永田氏: この技術を搭載する製品は決まってなかったんですけど、こういう製品はアリかということをお客様に試してもらって、フィードバックを頂いてより良いものに展開していきたいと思ったんです。

 しかしハードウェアがないので、PCでβ版を作ろうということになりました。ただ、GPSがすべての製品に乗っているわけではない。じゃあ位置情報をどうしようかと探したところ、当時ソニー内部でWi-Fi情報を頼りに位置情報が分かる研究をしていた「PlaceEngine」があったんですね。今はそこの部署が独立してクウジット社としてソニー外に出たんですが、いまだに協力関係にあります。


 無線LANさえあれば位置情報が分かるPlaceEngineは、「みんなの地図」「ニッポンのあそこで」 といったPSPのソフトにも応用されている。

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