MSIの新時代を切り開く──X-slim「特命チーム」に迫る:COMPUTEX TAIPEI 2009特別企画(2/2 ページ)
X320がCESで登場したとき、「あのMSIがっ」とそのスタイルに来場者が驚いた。いま、MSIは新しい価値を生み出そうとしている。そこにはある開発チームの存在があった。
MSIのトップメンバーが集結したX-Slim“特命”チーム
ポン氏によると、X-Slimシリーズは2009年におけるMSIの最重要事業として計画がスタートしたという。「MSIでは新しく開発を始める製品のために、専任のプロジェクトチームを立ち上げました」(ポン氏) その“特命”チームにMSIのトップから与えられた最重要課題は「製品コンセプトとして“Slim”“Stylish”“Ultra Portable”を実現すること」だった。召集された特命チームのメンバーは、いくつかのグループに分かれ、コンセプトの実現にあたって障害となる問題に取り組むことになった。
「X-slimシリーズの開発で障害となった問題には次のようなものがありました」とポン氏が挙げる項目には、単に軽量薄型を実現するために必要とされる問題だけでなく、ユーザーが求めているノートPCの動向や市場が求める価格に関する考察も含まれていた。
- マーケットの需要と傾向
- コンシューマーユーザーの要求と性能
- 生産コストと価格の戦略
- ハードウェアとソフトウェア(ファームウェア)における技術的な可能性
- 製品を投入するまでの時間的余裕
「これらの調査を検討し、製品に求められるアイデアをMSIの内部で決定したうえで、X-Slimシリーズの開発をスタートさせたのです」(ポン氏)
薄型軽量を求められるモバイルノートPCの開発には高い技術力が必要となる。台湾のPCベンダーがバリュークラスを中心にノートPCの生産量を増やしていった時期においても、日本のPCメーカーが開発するノートPCがアドバンテージを有していた理由には、その高い技術力によって小型軽量、長時間バッテリー駆動時間を可能とする製品を開発していたことが挙げられる。
しかし、2008年になって、MSIを始めとする台湾ノートPCベンダーも軽量薄型のノートPCを次々とリリースしている。このきっかけには、消費電力が劇的に少なくなったAtomの登場も大きく影響している。X-Slimシリーズの開発がスタートとした重要な理由でも「インテルがCLUVのCore 2 Soloを投入したこと」(ポン氏)があったそうだ。
それに加えて、X-Slimシリーズの開発には従来のノートPCとは次元が異なる新しいブレイクスルーが求められたという。その難問に立ち向かったX-Slimの特命チームには、MSIに所属するトップクラスのスタッフが招集された。「集まったのは開発者だけではありません。工業デザイン、電力制御、機構設計、ファームウェアという技術スタッフは当然ですが、セールスプロダクトマネージャーやマーケティングマネージャーも集められました」とポン氏は説明する。
「彼らは、名門大学の出身者ですが、それだけでなく、実際の製品開発や製品プロモーションで多くの経験と実績を積んできたメンバーです。その業績で関連する分野のアワードを受賞しているものも少なくありません」(ポン氏)
難題を解決したのはメンバーのスキルと経験
MSIのトップクラススタッフで構成された特命チームによって、X-Slimシリーズは「羽根のように軽く、羽毛のようにエレガント、それでいてフルファンクションを搭載する」というコンセプトを掲げることができた。「MSIが作りたかったのは、単なる“モノ”ではなく、すべてのコンシューマーユーザーが魅了されるスタイリッシュでスリムなノートPCでした」(ポン氏)
専門チームは、コンセプト実現のために、まずは徹底した軽量化の検討を進め、さらにボディの薄型化に挑んでいる。ボディのラインを丸くして柔らかいイメージを演出したのは“羽毛のようにエレガント”を表現するためだった。検討されたのはボディの軽量化と薄型化、ラインの曲面だけでない。理想の追求は“コンセプトを最もよく表現するボディカラー”にも及んだ。
ポン氏によると、開発において最も重視されたのがデザインであったのと同時に、最も苦慮したのもデザインであったという。特に困難を極めたのは、薄いボディにフル機能を搭載して、なおかつ、スタイリッシュであることを要求されたことだ。この解決のために、特命チームはCPUやHDD、メモリ、入出力インタフェースといったシステムパーツの配置を薄いボディでいかにうまくレイアウトするかで悩んだ。
ポン氏は、この難題を解決した最も大きな要因を、特命チームに所属するメンバーの豊富な経験であったと振り返っている。パーツの配置とボディの形状の“せめぎ合い”について、ポン氏は「まず、性能を犠牲にしない程度に必要とされるパーツのために使える空間をボディ内部に設定し、ついで、その必須スペースを維持するように形状デザインを進めていった」と説明した。
このような過程を経て、X340シリーズは最薄部6ミリ、最厚部19.8ミリという薄さを手に入れた。しかし、そんなに薄いとモバイルノートPCで重要とされる堅牢性能に問題はないのだろうか。「MSIは、薄くて軽いX-Slimシリーズに十分な堅牢性能を持たせることができた」とポン氏は反論する。「X340は堅牢性能を確保するためマグネシウム合金のボディに採用しただけでなく、強度を増すために電気メッキも施している」(ポン氏)
薄いボディを採用することで、内部の冷却効率は限界に達しているのではないかと不安に思うユーザーもいるだろう。しかし、先に述べたように、X-Slimシリーズはこのあと、より高性能高クロックのCPUを搭載する予定になっている。「X-Slimのデザインは将来の性能向上も十分考慮されている。日本で主力製品となるX340シリーズのボディはCore 2 Duo SU9600の搭載にも耐えられるようにデザインされている」(ポン氏)
X-Slimシリーズは、MSIにおいてもまったく新しい挑戦となったプロジェクトだった。決して「競合他社がやるからMSIもやる」という“思考停止”路線ではなく、2009年における最重要製品と位置付けられた製品の開発では、MSIがもつ最高のスタッフを召集した特命チームを編成し、彼らが数多くの困難を解決していくことでようやく実現した。
MSIは、PCパーツやノートPCで、競合に負けないハイスペックとユニークなギミックを長年にわたって実現してきた。そういう意味で、X340をはじめとするX-Slimシリーズは、従来とは異なるコンセプトとスタイルで、MSIに新しい付加価値を与えると同時に、これまでのMSIの製品と同じく、「PCを使う喜び」をユーザーに提供してくれるだろう。
関連キーワード
MSI | MSI X-Slim Series | ノートPC | 金属ボディ | デザイン | 台湾 | Wind Netbook(Wind Notebook) | スタイリッシュ | スリム | モバイルPC
関連記事
- 特集:COMPUTEX TAIPEI 2009
まだまだ続くMSIのノートPC攻勢──X340の上位モデルも間もなく登場
MSIは、4月22日に「X340」などの新製品と事業戦略についての説明会を行い、MSIの日本市場での取り組みと体制、登場予定のX-Slimシリーズについて紹介した。速攻フォトレビュー──MSIスリムノート「X340 Super」の「薄っ!軽っ!」ボディをチェックする
2009 International CESで衝撃のデビューを果たした「X320」、CeBIT 2009で進化した姿を披露した「X340」が日本上陸。そのスリムなスタイルを詳しく紹介しよう。フルHDも最新3Dゲームもおまかせっ!な“ボードPC”
ボードPC的なスタイルで日本でも注目されているMSIの液晶一体型のAEシリーズ。事前公開で披露された上位モデルのほかにもハイエンドな1台が展示されていた。MSIが事前公開で見せた「ポストNetbook」の時代
CeBITの正式開幕は3月3日だが、前日の3月2日から報道向けの展示ブース事前公開やスピーチセッションなどが、いくつかのベンダーで行われている。MSI、本革張り天板モデルなど台数限定ノートPC計5モデルを販売
エムエスアイコンピュータージャパンは、本革天板装備のノートPC「MSI PX600 Prestige Collection」など計5モデルを発表。いずれも台数限定販売となる。MSIの「封筒Netbook」とShuttleの「かっこいいNettop」を見る
International CESは「家電の祭典」だが、2009年はPCの新製品発表も多く、それらの製品展示が例年より多かった。ここでは、HP、MSI、そしてShuttleのブースで展示されていた新しい「出荷待ち」製品を紹介しよう。「CES Unveiled」に次世代を担うPCが集合した
その年の注目製品が集結する「CES Unveiled」が米国時間の1月6日に始まった。CES直前に発表された最新のPCをチェックするチャンスだ。MSIの液晶一体型、日本上陸──MSI「Wind NetOn AP1900」ちょっとちょっとレビュー
2008年に盛り上がったNetbookとNettopだが、2009年はその進化系が求められている。Wind Netbookが好調だったMSIは、デザインを重視したNettopを投入する。「Windを積極展開」──MSI豪傑幹部が日本で叫ぶ
MSI台湾本社のヴィンセントさんが来日した。台北で彼に“撃沈”された関係者は数知れない。そんな彼が、激変する世界経済に立ち向かうMSIを“真面目”に語った。Atom搭載の低価格PC「Wind Netbook U100」を3枚におろした
製造が追いつかず、なかなか店頭でお目にかかれないMSIの「Wind Netbook U100」。気になる中身をチェックした。見た目はフツー、だがそれがいい――MSI「Wind Notebook U100」を検証する
Atomを搭載したMSIのノートPC「Wind Notebook U100」を買ってきた。新世代ミニノートは“ニコ動の壁”を突破できる? バッテリーの持ちは? いろいろ試してみた。
関連リンク
提供:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2009年6月30日
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.