第6回 これでようやく“本来”の仕様に──AtermWM3500Rの「ファームウェアVer2.0.0」を検証:“WiMAX Speed Wi-Fi”「AtermWM3500R」ロードテスト(2/2 ページ)
8時間動作のWiMAXルータ「AtermWM3500R」は、これでようやく“本来”の仕様になったのか。マルチSSID機能などが追加された、ファームウェアVer2.0.0の改善ポイントを検証する。
パフォーマンスや使い勝手は向上したか
続いて、追加された機能を具体的にチェックしよう。
マルチSSIDとネットワーク分離機能は、据え置き型のAtermシリーズとほぼ同じユーザーインタフェース(UI)で設定できる。「http://web.setup/(あるいはhttp://192.168.0.1/)」でアクセスするWeb設定ツールに、これまでの無線LAN設定画面の上部にプライマリSSID/セカンダリSSIDの選択ボックスが新たに追加され、それぞれのSSIDに対する設定を個別に行う仕組みとなっている。
一部にプライマリSSID側でしか設定できない主の項目もあるが、暗号化モードなどをプライマリ/セカンダリで個別に設定できる。プライマリはWPA2-PSK/セカンダリは友人・ゲーム機用に64ビットWEPに設定、あるいはそれぞれWPA2-PSKで、別個のネットワークとして使い分けるといった利用シーンが挙げられる。もちろん不要ならセカンダリSSIDは無効にできる。
ネットワーク分離機能もプライマリ/セカンダリそれぞれで使用するか否かを選択できる。セカンダリSSID側だけネットワーク分離機能を有効にすると、「プライマリSSIDに接続したPCはLANの他PCとも通信可能(家庭内LANでネットワーク共有が可能)だが、セカンダリSSIDは家庭ネットワークにはアクセスできない(外部へのインターネット接続のみ)」とする設定──つまり、例えば自分や家族はプライマリで、友人・知人はセカンダリにと接続先を切り分けられる。WM3500Rはクレードル経由で有線LAN接続も可能(家庭での利用も想定した機器)なだけに、家庭内で使うなら、意外に重要で便利な機能といえる。
新設されたWPSは、既存の“らくらく無線スタート”と併用することも可能だ。プッシュボタン方式で利用する場合の使い勝手はらくらく無線スタートとほぼ同じで、Windows 7搭載PCで利用するなら、
- PCの無線LANユーティリティツールなどから、WPSが有効のSSIDを選択して接続手続き開始
- 本体の「SET」ボタンを長押しして自動認証を起動(電源ランプが点滅)
で完了する。スマートフォンも手順は多少異なるが基本は同じだ。暗号キーの文字列をいちいち入力するより、圧倒的に楽である。これは、スマートフォンやPCなど、日々異なる無線LAN機器をいろいろ活用するような中級者以上の人には分かってもらえるだろう。
無線LANアクセスポイント機能は、クレードルへの装着/着脱で動作モードが切り替わる仕組みだ。装着すると自動再起動→アクセスポイントモードに、着脱で同じく自動再起動→ルータモードになる。再起動は1分ほどかかるが、面倒な操作なく切り替えてくれるのは便利だ。ちなみに、電源オフのままクレードルに差せば充電だけ行うことも可能だった。
アクセスポイントモードは、インテル製無線LANモジュール搭載のノートPCから5メートル離れた位置で接続すると75Mbpsでリンクし、100Mbps占有の光回線接続において通信速度は送受信ともに35M~37Mbpsとなった。ちなみに、有線LAN接続なら70Mbps前後、据え置き型のIEEE802.11n対応ブロードバンドルータ接続は60Mbps前後(リンク速度は130Mbps前後)が出る環境なので、性能はやや劣る傾向だ。
ともあれ、家庭内利用でこの速度差を気にするほどのユーザーであればそれなりの機器がすでに稼働済みと思うので、本機をあえてメインのアクセスポイントにする必要はない。ただ、緊急的に無線LANアクセスポイントを設置したい時に、かなり手軽にそれを実現できる機能ではある。
例えば出張・旅行先のホテルでの活用はどうだろう。WiMAXは部屋まで届かないが、ホテルの有線インターネットサービスがあるなら、アクセスポイントモードで無線LAN環境を構築できるわけだ。詳しい人ならWindowsのインターネット共有機能などを使って簡易アクセスポイントを仕立てる手段もあるだろうが、それより手軽で、Adhocモードを利用できないAndroid端末やBlackBerry端末でも問題なく利用できたりする。
ひとまず当初より予定していたマルチSSIDとWPSが今回のバージョンアップでようやく備わり、AtermWM3500Rはこれで「本来の仕様」になった。ロードテストはひとまず今回で終了とするが、別途何か気になる点が出てきたり、大きな機能追加があった場合は復活したいと思う。
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