ビジネスプリンタの選び方――“省エネ”と“多機能”を両立したインクジェット複合機編:オフィス機器購入ガイド(1/2 ページ)
低消費電力、多機能、省スペース、そして低価格と、SOHO/SMB環境で重宝するのがインクジェット方式の複合機だ。2011年はA3カラー対応の選択肢が増えた点に注目したい。
→特集:2011年秋冬のビジネスプリンタ
→前回記事:ビジネスプリンタの選び方――“省電力”で“安い”インクジェットプリンタ編
カラー対応の複合機もインクジェットなら導入しやすい
前回紹介した通り、ビジネス向けのインクジェットプリンタはページプリンタに比べて、消費電力の低さ、導入コストの低さ、設置面積の小ささ、静音性の高さ、消耗品の入手のしやすさといった特徴を備えている。
一般に印刷ボリュームの多いオフィス環境ではページプリンタが向いているが、SOHO/SMB環境あるいは部署単位で追加するプリンタとしては、ビジネス向けインクジェットプリンタのほうが使い勝手がよい場合も少なくないだろう。
今回は最近製品数が増えつつあるビジネス向けのインクジェット複合機に注目した。インクジェットプリンタならではの特徴をベースとして、ADF付きのスキャナやFAXが加わることで、カラーコピーや文書の電子化、FAXのやり取りなど、ビジネスで必須のさまざまな機能を1台にまとめられる。特にSOHOやSMB環境では職場のオフィス機器を集約し、さらなる省スペース化を図れるのも魅力だ。
さて、機種選出の条件はこれまでと同じ以下の3点だ。
1. SOHO/SMB向けの製品であること
2. 実売価格が10万円を切ること
3. 2010年以降に発表されていること
複合機とはいえ、本体価格の安価なインクジェット方式ならば、3万円程度の低予算でもA3カラー対応モデルへ容易に手が届くのは見逃せない。
A4インクジェット複合機の注目機種
・4色顔料+大容量給紙でビジネスの即戦力に――エプソン「PX-B750F」「PX-673F」「PX-603F」
エプソンはビジネス向けのA4インクジェット複合機として、3モデルをラインアップしている。最上位モデルが「PX-B750F」、その下がカラリオシリーズの「PX-673F」と「PX-603F」といった内訳だ。いずれも4色顔料インクを採用しており、モノクロはもちろん、カラーでも普通紙への印刷品質が高い。
最上位のPX-B750Fはビジネスに特化した高性能・高耐久(総印刷枚数10万枚)の設計が特徴だ。標準で330枚と給紙容量が多いうえ、オプションの250枚カセットを追加して550枚まで増やせる。無線LAN機能は内蔵していないが、有線LAN、両面読み取りADF、自動両面印刷といったポイントは押えている。印刷速度については、608ノズルという多ノズルを生かしたモノクロ印刷で約16ipm、カラーでも11ipmと3モデルの中で最も高速だ。
ミドルレンジのPX-673Fは、標準で500枚(250枚×2段)の大容量給紙に対応するのが目立つ。印刷速度はカラーが約9.5ipm、モノクロが約15ipmを確保する。無線LANと有線LANに標準で対応し、収納可能な両面読み取りADF、自動両面印刷も標準装備するなど、機能面は充実している。
エントリーのPX-603Fも無線LANと有線LAN、両面読み取りADF、自動両面印刷を標準搭載する。印刷速度はカラーが約7.2ipm、モノクロが約15ipm、最大給紙枚数は250枚となっており、この点で上位モデルと差が見られる。
これら3機種の実売価格はPX-B750Fが5万円前後~5万円台後半、PX-673Fが3万円前後~3万円台半ば、PX-603Fが2万円台前半~2万円台後半だ。印刷速度や給紙容量の違いを中心に、重視する仕様と予算で製品を絞り込めばよいだろう。
・ビジネス複合機にも“W黒”を採用――キヤノン「PIXUS MX883」「PIXUS MX420」
キヤノンのインクジェットブランド「PIXUS」は、家庭向けのモデルが中心だが、ビジネス向けのA4複合機として、ADFとFAX付きの「PIXUS MX883」および「PIXUS MX420」を用意している。
上位のPIXUS MX883は家庭向けモデルの売れ筋機種と同様、染料と顔料の2種類のブラックインクを備えた「W黒(ダブクロ)」構成が特徴。カラーの3色は染料インクを採用している。これにより、普通紙のモノクロ印刷は顔料ブラックでシャープに、写真用紙へのカラー印刷は染料4色インクで色鮮やかに出力することが可能だ。
印刷速度はカラーが約9.3ipm、モノクロが約12.5ipm。給紙方法は前面下部のカセットと後部トレイの2Way方式で、最大300枚の給紙が可能だ。無線LAN/有線LAN、両面読み取りADF、自動両面印刷といった機能を網羅してるほか、利用している機能によって操作ボタンのLED表示が切り替わる「デュアルファンクションパネル」や、印刷時の騒音を抑えるサイレントモードなど、使い勝手にもこだわりが見られる。
下位のPIXUS MX420は、染料ブラックがなく、染料カラーインクと顔料ブラックの組み合わせだ。無線LAN/有線LANやADFは備えるが、自動両面印刷は省かれている点に注意したい。また、最大給紙枚数は100枚に限られる(後部トレイのみ)。
実売価格はPIXUS MX883が2万円台後半~3万円前後、PIXUS MX420が1万円台半ば~1万円台後半だ。PIXUS MX420は機能が絞られるが、価格面での魅力がある。
・世界戦略のビジネス複合機――日本HP「HP Officejet Pro 8500A Plus」「HP Officejet 6500A Plus」「HP Officejet 6500A」
日本ヒューレット・パッカード(HP)は、国内向けにビジネス向けA4インクジェット複合機を3モデル用意する。最上位から「HP Officejet Pro 8500A Plus」「HP Officejet 6500A Plus」「HP Officejet 6500A」だ。
最上位のHP Officejet Pro 8500A Plusはフルスペックともいえる構成だ。普通紙印刷に強い4色顔料インクを採用し、自動両面印刷、両面読み取り可能なADF、有線LAN/無線LAN対応といった特徴を持つ。給紙容量は250枚と標準的だ。印刷速度はカラーが11ipm、モノクロが15ipmと速い。
HP Officejet 6500A PlusとHP Officejet 6500Aは、製品名が示すように基本的なプリントエンジンが共通化されており、いくつかの機能で差が付けられている。6500A Plusは無線LAN/有線LANの両方に対応し、自動両面印刷も可能だ。6500Aはネットワーク対応が有線LANのみで、自動両面印刷も省かれている。いずれも印刷速度はカラーが7ipm、モノクロが11ipm、給紙容量は250枚だ。
実売価格はHP Officejet Pro 8500A Plusが2万円台後半~3万円台後半、HP Officejet 6500A Plusが1万円台前半~2万円前後、HP Officejet 6500Aが1万円前後~1万円台半ばと、搭載する機能の割に低く抑えられている。
今回紹介したA4インクジェット複合機(1) | ||||
---|---|---|---|---|
メーカー名 | エプソン | エプソン | エプソン | キヤノン |
製品名 | PX-B750F | PX-673F | PX-603F | PIXUS MX883 |
最大印刷解像度 | 4800×1200dpi | 5760×1440dpi | 5760×1440dpi | 9600×2400dpi |
インクの種類と色数 | 顔料4色 | 顔料4色 | 顔料4色 | 染料4色+顔料黒 |
プリント速度(A4カラー/A4モノクロ) | 11ipm/16ipm、24ppm/26ppm | 9.5ipm/15ipm、38ppm/38ppm | 7.2ipm/15ipm、38ppm/38ppm | 9.3ipm/12.5ipm |
自動両面印刷 | 標準対応 | 標準対応 | 標準対応 | 標準対応 |
ネットワーク対応 | 標準対応(有線LAN) | 標準対応(有線LAN/無線LAN) | 標準対応(有線LAN/無線LAN) | 標準対応(有線LAN/無線LAN) |
FAX | SuperG3対応 | SuperG3対応 | SuperG3対応 | SuperG3対応 |
ADF | 標準搭載(両面読み取り) | 標準搭載(両面読み取り) | 標準搭載(両面読み取り) | 標準搭載(両面読み取り) |
給紙枚数(標準) | 330枚 | 500枚 | 250枚 | 300枚 |
最大給紙枚数 | 580枚 | 500枚 | 250枚 | 300枚 |
スキャナ撮像素子 | CIS | CIS | CIS | CIS |
スキャナ光学解像度 | 1200×2400dpi | 2400×2400dpi | 2400×2400dpi | 2400×4800dpi |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 460×420×341ミリ | 446×368×300ミリ | 446×360×226ミリ | 491×448×218ミリ |
重量 | 約13.8キロ(消耗品含まず) | 約9.8キロ(消耗品含まず) | 約7.6キロ(消耗品含まず) | 約11.7キロ(消耗品含む) |
消費電力 | 動作時約17ワット、スリープモード時約2.4ワット | コピー時約17ワット | コピー時約16ワット | コピー時約23ワット、待機時約2.5ワット(USB接続) |
実売価格 | 5万円前後~5万円台後半 | 3万円前後~3万円台半ば | 2万円台前半~2万円台後半 | 2万円台後半~3万円前後 |
今回紹介したA4インクジェット複合機(2) | ||||
---|---|---|---|---|
メーカー名 | キヤノン | 日本HP | 日本HP | 日本HP |
製品名 | PIXUS MX420 | HP Officejet Pro 8500A Plus | HP Officejet 6500A Plus | HP Officejet 6500A |
最大印刷解像度 | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi |
インクの種類と色数 | 染料3色+顔料黒 | 顔料4色 | 染料3色+顔料黒 | 染料3色+顔料黒 |
プリント速度(A4カラー/A4モノクロ) | 5ipm/8.7ipm | 11ipm/15ipm、34ppm/35ppm | 7ipm/11ipm、31ppm/32ppm | 7ipm/11ipm、31ppm/32ppm |
自動両面印刷 | - | 標準対応 | 標準対応 | - |
ネットワーク対応 | 標準対応(有線LAN/無線LAN) | 標準対応(有線LAN/無線LAN) | 標準対応(有線LAN/無線LAN) | 標準対応(有線LAN) |
FAX | SuperG3対応 | SuperG3対応 | SuperG3対応 | SuperG3対応 |
ADF | 標準搭載(両面読み取り) | 標準搭載(両面読み取り) | 標準搭載 | 標準搭載 |
給紙枚数(標準) | 100枚 | 250枚 | 250枚 | 250枚 |
最大給紙枚数 | 100枚 | 250枚 | 250枚 | 250枚 |
スキャナ撮像素子 | CIS | CIS | CIS | CIS |
スキャナ光学解像度 | 1200×2400dpi | 4800×4800dpi | 4800×4800dpi | 4800×4800dpi |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 458×415×198ミリ | 502×472×308ミリ | 476×450×258ミリ | 476×409×258ミリ |
重量 | 約8.8キロ(消耗品含む) | 約12.7キロ | 約8.25キロ | 約8.1キロ |
消費電力 | コピー時約14ワット、待機時約2.2ワット(USB接続) | 印刷時26ワット、待機時6.5ワット、スリープモード時3.1ワット、電源オフ時0.6ワット | 印刷時36.6ワット、待機時5.5ワット、スリープモード時3.9ワット、電源オフ時0.4ワット | 印刷時36.6ワット、待機時5ワット、スリープモード時3.2ワット、電源オフ時0.4ワット |
実売価格 | 1万円台半ば~1万円台後半 | 2万円台後半~3万円台後半 | 1万円台前半~2万円前後 | 1万円前後~1万円台半ば |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.