個人向け電子出版のスタンダードへ、「一太郎」「ATOK」最新版:EPUB 3.0対応
ジャストシステムが「一太郎2012 承」と「ATOK 2012」を発表。最新の一太郎ではEPUB 3.0に対応し、電子書籍フォーマットでの出力が手軽に行えるようになった。一方のATOKは推測変換機能を強化したほか、クラウドと連携した省入力機能を備えた。
日本語のあらゆる表現をカバー、EPUB 3.0にも対応
ジャストシステムは12月8日、日本語ワープロソフトの最新版「一太郎2012 承」と、日本語入力システム「ATOK 2012」を発表した。標準パッケージの価格は順に2万1000円、8400円。2月10日に発売する。
一太郎シリーズは、2011年版の「創」からバージョンを象徴した1字をつけるという命名規則を採用しているが、2012年版の「承」では「承は受け継ぐという意味を持つ。美しい日本語の文化を未来へと受け継いでいく意志を込めた」とし、ユーザーインタフェースを改良するとともに、日本語表現に関する機能を強化したのが特徴だ。
具体的には、メイン画面の右側に各種ツールパレットを用意し、目次・索引などを設定できる「文書編集パレット」や、古典文学やなどで使われる特殊な文字を入力するための「文字パレット」、文字数などを基準に文章量を設定して達成度を視覚的に把握する「文字数パレット」などを切り替えて利用できるようになっている。同社コンシューマ事業部企画部の大野統己氏は「日本語独特のドキュメントの特性を検証し、もともと一太郎の持っていた機能を再設計した部分もある。日本語のあらゆる表現をカバーしようと取り組んだ」と最新版のコンセプトを説明する。
そしてもう1つの目玉がEPUB 3.0のサポートだ。電子書籍用のファイルフォーマットであるEPUBは、バージョン3.0で縦書きやルビ表記に対応するなど日本語向けの表現が拡張されているが、一太郎2012ではメニューからEPUB形式での保存が用意されている。また、これにあわせて、電子書籍の出版・販売サービス「パブ-」を展開するpaperboy&co.と協業し、個人が手軽に電子出版を行える環境を提供していく。「個人向け電子出版のスタンダードを目指す」(大野氏)。
新しい推測変換エンジンを搭載、“旬”な単語を配信する機能も
一方のATOK 2012は、推測変換機能の強化として新たに「ASエンジン」(Advaced Suggestエンジン)を搭載したのがトピックだ。ASエンジンでは語い空間を拡大したほか、人名や地名、四字熟語の推測変換にも対応。さらに、入力確定後も前文節の文字列に応じた推測候補を提示するようになった(例えば、「液晶」を確定後に続けて「ディスプレイ」「テレビ」などが提示される」。この「モバイルをしのぐ予測変換」(同社)はキーボード操作に慣れていない若い世代を考慮したものという。
また、候補の表示順が従来は単語の長さに依っていたが、最新版では頻度情報を元に表示されるようになったほか、「ここではきものをぬいでください」(ここで履き物を脱いで下さい/ここでは着物を脱いで下さい)のように、文節の区切りで変換候補が変わる場合は、別区切りの候補が0で表示されるようになった。「ATOK 2012はたくさんの言葉を持ち、簡単で、かつ間違いなく入力できる」(同社)。
クラウドと連携した「ATOKキーワードExpress」も目を引く新機能だ。これは省入力データの拡張プラットフォームで、話題のニュースや新商品の名称、公開予定の映画タイトルといった“旬な”単語が随時配信され、省入力データとして自動登録されていく仕組み。今後は配信される単語のジャンルを順次拡充し、MacやAndroid向けのATOKにも提供する予定としている。
一太郎2012 承とATOK 2012の製品ラインアップと価格は以下の通り。「一太郎2012 承 プレミアム」は、文書読み上げソフト「詠太2」や「花子2012」、「Suriken 2012」、各種辞書とヒラギノフォント6書体などを含み、「一太郎2012 承 スーパープレミアム」はさらに、表計算ソフト「JUST Calc」とプレゼンテーションソフト「JUST Slide」およびOCRソフト「一発!OCR Pro7」とモバイルハンディスキャナが付属する。「ATOK 2012 プレミアム」は、ベーシック版の機能に加えて、変換中の単語から8カ国語でリアルタイム翻訳が行える「8カ国語Web翻訳変換 for ATOK」や「ATOKダイレクト for Excel」などが利用できる。
ラインアップと価格 | |
---|---|
製品名 | 価格 |
一太郎2012 承 | 2万1000円 |
一太郎2012 承 プレミアム | 2万6250円 |
一太郎2012 承 スーパープレミアム | 3万4650円 |
ATOK 2012[ベーシック] | 8400円 |
ATOK 2012[プレミアム] | 1万2600円 |
関連記事
「一太郎」第2章、開幕:事務机から書斎机へ――新生「一太郎2011 創」と「ATOK 2011」発表会
ジャストシステムは、2011年度版の「一太郎」と「ATOK」を含む新製品群を発表した。最新版「一太郎2011 創」は書斎机をイメージしてUIを一新、「ATOK 2011」は使用者にあわせた変換候補を提示する新機能が加わった。ATOKのちょっといい話 第5回:そいつは「ATOK Pad」、うまく使いこなせよ。
β3でさらに使いやすくなった「ATOK Pad」を紹介。Twitterにポストするときはメモ帳を立ち上げて文章を打ち込み、ざっと見直してからコピペで投稿している、そんな人に。ATOKのちょっといい話 第4回:まっ まさか! きたえた じしょたちが!――そんなときは「AI辞書トレーナー」
ATOK連載の第4回では、既存の文書やWebサイトの内容から一気に辞書を鍛える「AI辞書トレーナー」を紹介しよう。ATOKのちょっといい話 第3回:「お気に入り文書」で省力化。「お気に入り文書」で省力化。
仕事中に同じような内容のメールを何通も書いているだけで1日が過ぎてしまう……そんな人に便利なのがATOKの「お気に入り文書」だ。ATOKのちょっといい話 第2回:ATOKはATOKは、同期なんかしてみたり。
今回はオンラインストレージでユーザー辞書を同期する「ATOK Sync」のお話。自宅でも職場でも“手になじんだ変換”を使うのだ。ATOKのちょっといい話 第1回:瞬間起動、即入力。
実用的なものから単なるジョークまで、ATOKにまつわる小ネタを紹介していく「ATOKのちょっといい話」。連載第1回は「ATOK Pad」だ。さあ、CTRLを2度叩けッ!林信行が開発者に聞く:タッチデバイス時代の“スペースキー”を目指した「ATOK Pad for iPhone」
iPhone待望の本格的日本語入力環境「ATOK Pad for iPhone」が発表され、注目を集めている。アップルがIM(文字入力環境)を公開していないため、アプリという形式での提供となっているが、同社はこの製品で何を狙ったのか。オレは“ことえり”をやめるぞーッ:ことえり派が見る「ATOK for Mac」の、ここがうらやましい!!
「ことえり」も以前ほど“残念な子”ではなくなったが、忙しいときに誤変換を乱発されると愛憎の入り交じった複雑な感情に襲われる。やはりここは「ATOK」なのか……?レビュー:実によくなじむッ! 1日10円で“至高の”日本語入力環境を――まだまだ進化する「ATOK 2010」
ジャストシステムの最新日本語入力システム「ATOK 2010」が発売された。Googleをはじめとする検索サイトの参入で日本語入力システムの選択肢は広がったが、あえて有料IMEを選ぶ価値はどこにあるのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.