NVIDIAの最新アーキテクチャ“Maxwell”を徹底解説:Keplerと何が違う?(3/3 ページ)
Maxwell世代初のGPU「GeForce GTX 750 Ti」が登場した。Keplerと何が違うのか。徹底解説。
メインストリームから新アーキテクチャを投入した理由
NVIDIAが、新しいMaxwellアーキテクチャをメインストリーム市場向け製品で先行させたのにはワケがある。NVIDIAとAMDがGPUで採用しているTSMCの製造プロセスは2年以上、28ナノメートルプロセスで停滞し、20ナノプロセスの量産開始も遅れ気味だ。
しかし、できるだけ大きなチップを作ることで、最大限のパフォーマンスを引きだそうとする“ビッグチップ”戦略を採ってきたNVIDIAにとって、この半導体プロセス進化の停滞は、フラグシップチップを進化させる上での足かせとなってしまった。
また、今後の市場規模を見た場合、競争が激化するモバイルSoCに最先端のグラフィックスアーキテクチャを採用することも重要な課題となる。同社はすでに、2015年投入予定の次期Tegra“Parker”(パーカー)でGPUにMaxwellアーキテクチャを採用することを明らかにしており、このスケジュールを間に合わせるためにも、現行の28ナノメートルプロセスで新アーキテクチャを開発しなければならなくなったとみられている。
ウォーカー氏が、GeForce GTX 750 Tiの発表にあたって「“第1世代”のMaxwellアーキテクチャ」という言葉を多用したのも、今後ハイエンドGPUやHPC向け製品だけでなく、SoC向けにも、このMaxwellアーキテクチャを発展させていく計画があることを示すものであり、GM107はMaxwellアーキテクチャの基本構成に過ぎないと見たほうがよさそうだ。
特にNVIDIAのジェンスン・ファンCEOは、MaxwellではCPUとGPUがメモリアドレスを共有するユニファイド・ヴァーチャル・メモリに対応することも明らかにしており、MaxwellのHPC向け製品やサーバ・ワークステーション向け製品では、同機能が有効にされると予想できる。ただ、ウォーカー氏は「Maxwellのコンピューティングに関する情報は、現時点では開示できない」としており、来月米国で開催される同社のGPU Technology Conferenceまで、より詳細なアーキテクチャについては公開されない見通しだ。
このほか、NVIDIAはGeForce GTX 750 Ti/同750の発表にあわせて、新しいフラグシップモデルとなる「GeForce GTX Titan Black」を発表した。同GPUは従来製品同様GK110コアベースながら、CUDAコアは従来の2688基から、すべてのSMXを有効にした2880基構成となり、ベースクロック889MHz、GPUブースト時980MHzに高められるなどの高性能化が果たされている。また、グラフィックスメモリも7Gbpsに高速化されている。
むろん、GeForce Titanの特徴である倍精度演算もサポートされるが、従来製品同様、動作クロックは低速に切り換わる。なお、同社が公開した基本資料では倍精度演算性能が1.3TFLOPSとされているが、SMXが1つ増え64基の倍精度演算ユニットが増えていることから、従来製品と同じ動作クロックで動作するとしても、実際の倍精度演算性能はもっと高くなるだろう。
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