想定外に「安っぽく見える」製品ができてしまった……どうやって売る?:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
ようやく完成した製品の見た目がチープで、売価が高く感じられるというのは、メーカーが頭を悩ませる問題の1つだ。当然、メーカーはあの手この手を使って、何とかして拡販しようとする。その手法を見ていこう。
「パッケージ」と「ディスプレイ」に気をつけろ
ではどうするかというと、メーカーはこうした場合に備えて、いくつもの策を持っているのが普通だ。予定していた数量を予定していた価格で売るためのメーカーのワザを、順に見ていこう。
1つは、パッケージを豪華にする方法だ。製品そのものに手を加えるわけではなく、それを収めるパッケージの材質やデザインを豪華にすることで、製品そのものをよく見せようとする技である。
高額な製品であればパッケージに多少金をかけようが原価の比率的に大きな影響はないし、本体を作り直すよりはよほど安価で済む。パッケージを製品原価に含めず販促費として計上する場合は、こうした心配そのものが不要だ。
ちなみにこの場合、製品そのものの露出はなるべく控えめにしたほうが効果的なので、製品はパッケージの外から見えないようにすることが多い。
もう1つは、店頭のディスプレイを豪華にする方法だ。パッケージを豪華にする方法では、例えば店頭サンプルとして横に現物が並べられてしまえば、パッケージに比べて現物がチープなことはすぐにばれてしまう。
そこでガラス製のショーケースを用意して客が手を触れられない状態でサンプル品を陳列したり、さらに照明でライトアップして見栄えをよくするなどして、チープさを覆い隠してしまうわけだ。
面白いことに、たとえボディの素材が同じでも、ショーケースの中でスポットライトを浴びていたり、あるいはミラーなどを背後や底面に敷いて奥行きを出されたりすると、棚の上にそのまま載っている場合と比べて、ボディの品質をチェックする気はそがれてしまう。
「周囲がこれだけ豪華だから主役もそうであるに違いない」という、心理的な効果も手伝って、単品で見る以上に豪華に見えてしまうのだ。
これとよく似た方法に、専用の什器(じゅうき)を使って店頭にコーナーを作るというワザもある。ここでよく用いられるのが、製品のバリエーションを横に並べ、ラインアップで目くらましをする手法だ。例えばカラーバリエーションが5色あれば、その5色をずらりと並べ、カラフルさと楽しさを訴求するのだ。
よく考えれば、カラーバリエーションの製品すべてを購入して自宅に並べられるわけではまったくないのに、ユーザーはすべてのカラーバリエーションが並んだビジュアルのリッチさに目が行き、単品で見た場合のチープさにまったく気が向かなくなってしまうというわけだ。
リアル店舗に足を運ぶことがむしろ落とし穴になる?
面白いのは、これらの方法はいずれも、製品を自分の目で見られることが、かえってマイナスになり得ることだ。上記はいずれも量販店もしくはメーカーのショールームで製品の現物を並べる際に使われるトリックであり、通販などではまったく通用しない。
ユーザーとしては、Webサイト上の写真だけでは製品の素材感がよく分からない、この目で製品を見て確かめたいという理由で量販店やショールームに足を運ぶわけだが、それが逆に落とし穴になってしまうわけだ。リアル店舗のメリットに見えて、実はデメリットになってしまっているのである。
もちろん「だからリアル店舗に足を運ぶのはマイナスだ」などと言うつもりはない。一消費者として、上記のようなメーカー側の手法を知ったうえで、パッケージ抜き、ディスプレイ抜きで判断する癖を身につければよいだけの話だ。
これらのワザは、どのメーカーの手法も驚くほど似通っているのが現状であり、またどの業界でもそれほど差はない。今回はPC周辺機器やアクセサリについて述べているが、食品や衣料品であっても、根本はそれほど変わらない。
すなわち、パッケージとディスプレイを抜きにして単品で存在した場合にどのように見えるか、それらを意識するだけで、メーカーが何とかごまかして売りたい製品をうっかりつかんでしまう確率は、低下させることができる。
一種のライフハック的な手法だが、店頭ではよいと思ったのに買ってみるとイマイチ気に入らない……と嘆くことが多い人は、実践してみる価値はあるだろう。
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