iPhone SEに「SE」の文字が与えられた本当の理由:林信行が見るApple発表イベント(3)(2/2 ページ)
まもなく創業40年を迎えるAppleが新製品発表の目玉として投入した4型iPhoneの最新モデルは「iPhone SE」と名付けられた。「SE」に込められた想いとは?
「SE」が持つ意味
ちなみにiPhone SEの「SE」は、特に1つの意味があるわけではないようだ。Appleは「Special Edition」の頭文字という説明を一般向けにはしているが、実はこの製品の開発に関わった人たちの心の奥にあったのは、1987年に発表された「Macintosh SE」の名前だったという。
同社史上、初めて製品名にアルファベットだけによるモデル名がついた製品で(Apple IIeやIIcなど、ギリシア数字とアルファベットの組み合わせはその前にもある)、初期のMacのモデルの中ではかなり成功した製品シリーズだったという願掛けのような意味もあるようだ。
古くからのMacを知っている人は、Mac SEのSEはSystem Expansion、つまりハードを後付けで拡張できることを指していたので、ハードの拡張ができないiPhone SEに、その名前はおかしい、と思う人もいるかもしれないが、要するにアップル40周年という歴史を感じさせる年でもあるし、旧製品への「オマージュ」といった意味だろう。
iPhone SEを持って見た感じはiPhone 5sシリーズと一緒、iPhoneをずっとモデルチェンジしながら使っている人間にとっては懐かしいサイズだし、やはり片手だけで操作をするにはしっくりくるサイズでもある。
頑張って4.7型への文字入力に慣れてきた人には、このサイズに戻るべきか、わずかとはいえ大きく快適な4.7型にとどまるべきか悩ましい選択になるが、これまで4型サイズでないと困るからと留まってきた人には朗報だし、筆者のTwitterでツイートしたところ「大好きなケースがiPhone 5sサイズだから」と5sを使い続けていた人が意外に多く、そういう人にとってもよいニュースだ。
ただし、アップルは他社のケースに関しては微妙なサイズの違いによって入らないこともあれば、入ったとしてもTrue Toneフラッシュを隠してしまい、カメラ機能がうまく機能しない可能性もあるとして、ケースメーカーへの問い合わせをするように推奨している。うまくケースの問題もなくiPhone 5sからSEに乗り換えを決意した人には、新たにローズゴールドという色の選択肢も増えることになる。
また、1200万画素カメラでの撮影や4K動画の撮影、Live Photosの撮影、Retina Flashなど、iPhone 6で定評のあるカメラ機能の全てが手に入り、4K動画2本を同時に表示し、さらに編集できる強力な性能も手に入れられることになる。基本性能にして、これまでのiPhone 5sの2倍、グラフィックス処理の性能に関しては3倍にも伸びている。
また日本ではまだ始まっていないが、すでに世界の5カ国でサービスが始まっており、日本でも年内にも始まるというウワサがあるApple Payにも4型サイズで初めて対応した。
iPhone 5sシリーズからの乗り換えはもちろんだが、小型の携帯電話、小型のスマートフォンを求めている人が、最初のiPhoneとして選んでも十分満足できる製品になるはずだ。もちろん、薄さや画面の見やすさ、大きさを重視するならこれまで通りiPhone 6sを選ぶこともできれば、さらに大きな画面やビデオ撮影時の手振れ補正を重視する人にはiPhone 6s Plusという選択肢もある。
Appleはこれら3モデルにiPhone 6と6 Plusを加えた合計5モデルを取りそろえ、あらゆるサイズや価格のニーズに応えよう、というのが春夏シーズンのiPhone戦略だろう。日本を含む12か国では、iPhone SEの予約開始は3月24日から、出荷は31日になる。
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