将棋代指しロボット「電王手くん」がダブルアームに最終進化! 名前の由来はあの伝説の棋士?
ドワンゴと日本将棋連盟およびデンソーは3月17日、コンピュータソフトと人間が将棋で対局する「第2期電王戦」で使用される代指しロボット「電王手一二さん」(でんおうていちにさん)を発表した。
ソフトと人間が毎年戦いを繰り広げてきた将棋電王戦では、2014年の第3回から、ソフト側の指し手を盤上に再現する「代指しロボット」が使われてきた。初代の「電王手くん」に始まり、「電王手さん」「新電王手さん」と進化してきたが、電王戦自体が2017年で終了することに伴い、代指しロボットも今回が“最終形態”となるようだ。
電王手くんシリーズとしては四代目となる今回は、ロボットアームが双腕になるという大きな進化を遂げた。2台の産業用ロボットアーム「VS-060」を1台のロボットとして作動させる「協調制御システム」を採用しており、左腕で駒の位置を把握して右腕でつかむなど、2本の腕がそれぞれ異なる働きを分担する。
歴代の電王手くんシリーズで開発を担当してきたデンソーウェーブの澤田洋祐氏は、「本当にロボットがテンポよく将棋を指そうと思った場合には、やはりあの2つの指でやるのが一番テンポが良いとは思っています」とコメント(公式PVより)。持った駒を裏返す動作の「成り」を、左右の手で駒を持ち替えることにより高速で実現するなど、無駄のない美しい動きを実現したという。
通常、将棋棋士は利き腕1本のみで対局するもの。しかし、日本将棋連盟の佐藤康光会長によれば「棋士でも稀(まれ)に両手で指す人がいた」とのことで、公式PVには将棋界のレジェントとして知られる加藤一二三九段が登場。「両手で指すことはありましたね」と過去のエピソードを披露し、最新の電王手さんの機敏な動作に驚きを見せる姿も見られた。
過去には「電王手くん」から「電王手さん」に進化するなど、毎年そのネーミングでもファンを楽しませてきたが、ラストとなる今回は「電王手一二さん」に。敬称である“さん”と、加藤一二三九段にも通ずる「1、2、3」を掛けたネーミングとなっている。
電王手一二さんが登場する第2期電王戦は、現役の名人である佐藤天彦叡王と、過去の電王戦で人間相手に全勝している将棋ソフト・PONANZAが対戦。2番勝負で、第1局は4月1日に日光東照宮(栃木県)で、第2局は5月20日に姫路城(兵庫県)で行われる。
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