量販店のアクセサリー棚はさながら売れ筋ランキング?:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
PCやスマホのアクセサリーを作っている、俗にサードパーティーと呼ばれるメーカーは、本体機器の販売動向をかなり正確に把握しており、それはラインアップに反映されている。つまり量販店の売場を見れば、あまりメジャーではない製品の販売動向や規格の浸透状況も一目瞭然だったりするのだ。
アクセサリーメーカーからは本体機器メーカーの販売動向が一目瞭然
話がやや量販店寄りになったので元に戻すが、アクセサリーメーカーは時として、一般には全く開示されることのない、本体機器の販売動向を把握していたりもする。よくある例、とはさすがに言えないが、面白い事例を幾つか紹介しておこう。
1つは社員販売だ。メーカーは社員やその家族などに対して、自社製品を安く卸している場合がある。例えば量販店ではせいぜい10%引がいいところの製品が、一律30%引といった具合に、市価に比べてはるかに安い価格で入手できる。またボーナス時に限って、現物支給に相当するシステムで、こうした自社製品が安く出回ることがある。
こうした自社製品が販売されると、それに関連したサードパーティー製アクセサリーの販売数が、一気に増えるという事態が起こる。特に本社や関連工場が集中しているエリアでは、その従業員がまとまって居住していることから、近隣の量販店でそれらのアクセサリーが一気に品薄になることもある。PCメーカーであれば、従業員やその家族がPCを買うことにより、近隣の量販店でキーボードカバーが普段あり得ないペースで売れるようなことが起きる。
こうした現象がボーナスシーズンに繰り返し発生すると、アクセサリーメーカーも量販店も、見えないところでまとまった台数が動いていることを、否が応でも察知できてしまう。そうなるとしめたもので、「そろそろ例の時期が来るはずですから在庫を増やしておきましょう」といった具合に、ボーナス時期には特定のアクセサリーの在庫が増えたりもする。
上記のように量販店を通さず、アクセサリーメーカーだけが把握しているケースもある。例えば何らかのルートで出た大量のB級品を通販業者がさばくにあたり、アクセサリーを抱き合わせて売るといったケースでは、通販業者の主導によってアクセサリーとのセット製品が作られる。
こうしたケースでは、実は売れているとされていたPCのあるモデルが実際には全く売れておらず、まとまった台数を通販業者に格安で流すことで在庫を減らさざるを得ない……といったPC本体メーカー側の事情が、アクセサリーメーカーからは一目瞭然になってしまう。
またアクセサリーメーカーは、複数の本体機器メーカーのアクセサリーを並行して手掛けているのが常であるため、メーカー同士の販売動向を比較するのもたやすい。
例えば、市場でトップシェアとされているメーカーよりも下位とされる別のメーカーの方が活発に製品が動いているとか、あるメーカーは量販店ではいまいち売れていないが別の販路でかなりの台数を売っていて侮れない……といった、本体機器メーカーからは見えない競合他社を含めた販売動向を、全くの第三者であるアクセサリーメーカーが手に取るように知っていたりするのだ。
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