音楽の楽しみを再発明する「HomePod」とiPadの魅力を再発明する新「iPad Pro」を林信行が解説(1/3 ページ)
WWDC現地リポート第一弾はHomePodと新iPad Pro。林信行氏が動画とともに見どころを紹介する。
毎年恒例の世界開発者会議「WWDC」。2017年の最年少参加者はオーストラリアから参加した10歳のYuma Soeriantoくん、最高齢は82歳で日本から参加した若宮正子さん、そしてその間を埋める5300人のアプリ開発者、周辺機器開発者、システムインテグレーターが世界中から一堂に会し、MacやiPhone、iPad、Apple TVやApple Watchなど、Apple製品に関する今後の動向について学ぶイベントだ。今回は2時間強の基調講演で新カテゴリーの製品である「HomePod」を含む、膨大な数の発表が行われた。
すべてを紹介しては長大になるので、まずは開発者でなくても楽しめる最新の傾向を筆者の視点でピックアップする。
HomePodで家での音楽の楽しみを再発明
WWDCの基調講演は毎回笑いを取るビデオで始まる。WWDC 2017ではApp Storeのサーバーを管理する人が、うっかり電源を落としてしまったことで世界中のiOS機器からアプリが消え、世界が大混乱に陥るというコミカルな内容だ。この映像はわずか9年前に誕生したApp Storeが世界中の人々にどれだけ多くの新しい習慣を作り出してきたのかうまく表している。
ビデオ上映後、登壇したティム・クックCEOは「今日は6つの発表がある」と語ったが、実はその6つの項目のいくつかは、その中に何十もの発表が詰まっており2時間強の基調講演は情報に溢れていた。
すべてを1本の原稿にまとめると読み切れない人も多そうなので、基調講演とは逆の時間軸で、まずは今回発表されたハードウェア製品の話題から振り返りたい。1つ目は基調講演でトリを務めた新ジャンル製品、HomePodだ。
HomePodは「家庭での音楽の楽しみ方を再発明する」新しいスピーカーである。2017年12月に米英豪の3カ国で販売が始まり、米国での価格は349ドル。本体には6個のマイクが内蔵され、Siriを使って音声操作ができる。
すでに米国ではいくつかのIT企業が販売しているスマートスピーカーのようだが、これらと異なるのは第1の用途をリビングルームで音楽を楽しむ習慣を蘇らせることに重点を置いたことだろう。このためHomePodは徹底して音質にこだわったようだ。
7個のビームフォーミングツイーター、上向きのウーファーなどAppleが新たに取り組んだ音響部分の設計もさることながら、部屋のどんな場所に置かれたかを検知して、耳に直接届く音、壁に反射して届く音などを、搭載された強力なプロセッサ、カスタムA8チップで計算して没入感のあるサウンドを生み出すという。さらに2台設置すればそれらを連携させてより立体感のある音を作り出すこともできる。
「Hey Siri」と呼びかけると、上部にSiriが聞き耳を立てていることが分かる波のアニメーションがふんわりと現れる。声の命令で4000万曲以上が登録されたApple Musicの音楽を再生できるほか、メッセージを送信したり、スポーツを含む最新のニュースや天気予報を聞いたりすることもできるし、HomeKitに対応した照明や空調ならSiriに話しかけて制御できる。
HomePodを紹介したフィル・シラー氏は「ホームスピーカーのブレイクスルー製品」と話し、その重要ポイントを3つ挙げた。1つ目は「家全体をノリノリにさせる」くらいの良質なスピーカーであること、2つ目は空間を認識していること、そして3つ目はMusicologist、つまり音楽のソムリエのように聴きたい音楽をうまく選んで再生してくれる存在であることだ。
HomePodでは、利用者のプレイリストなどを参考に曲を再生できるほか、「Hey Siri、この曲いいね」と語りかけると、好みを学習してユーザーが喜びそうな曲選びの参考にする。
残念ながら発売がまだ先の製品ということもあり、自慢の音を試聴することはできなかったが、誰でも輪郭の絵を描けそうなシンプルな形状なのに、凛とした存在感とディテールに注目すればするほど、細かな作り込みが浮かび上がる外観はなんともAppleらしい。内側から光が透けているかのようにフワっと浮かび上がって表示される上面のSiriの波模様の表示も美しかった。
HomePodは今のところ日本での発売が未定であり、日本語の公式Webページも存在しないが、より細かい情報は米国のWebサイトでなどで確認できる。
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