レビュー

気乗りしない林信行に無理矢理「Synology NAS」を送りつけた結果(3/3 ページ)

もう原稿を待つのは限界です(編集G)。

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実はNASとしての性能や信頼度もかなりのモノ

 プライベートな写真なども入った家に設置してあるHDDが、インターネットからアクセスできるWebサーバやオンラインショッピングのサーバになってしまうことに不安を覚える人もいるかもしれない。

 万が一、不正アクセスをされたらどうしようという不安はもっともだし、そうしたことに不安を感じる人は、インターネット一般公開系の機能は使わないほうがいいかもしれない。そもそも他のサーバに比べて設定は圧倒的に簡単でも、何か不調があったときのメンテナンスも自分でする必要がある(ちなみにSynologyは、そうしたメンテナンス/監視/診断用のアプリも充実している)。

Synology NASの状態を確認できるリソースモニタ

 テクノロジーが苦手な人向けに書くことを重視している筆者としても、その用途を強く推すつもりはない。ただ、写真や動画で、スマートフォンやパソコン上の空き容量が足りなくなってきたときの解決策として、Synology製NAS、特に今回レビューをした最も手ごろなDS216jはかなり魅力的だ。

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 iCloudやDropboxなどのサービスは毎月お金がかかる上に、大容量を確保しようとすると、その月額料金が跳ね上がる。一方、SynologyのDS216jであれば2万円弱で本体を購入でき、別売りのHDD分初期費用はかかるものの、(メールサーバなどの一部のアプリを使わない限り)それ以降の追加料金はかからない。

 そもそもDropboxやGoogleDriveはHDD上のファイルを移動するのではなく、同期しているので空き容量の拡大にはあまり貢献しない(少し難しい「選択型同期」という設定を使えば節約できる)。

 これに対してSynologyなら、利用頻度の少ないパソコン内のファイルをSynology NASに移動しておけばパソコン側の空き領域を増やせるだけでなく、そのファイルをスマートフォンや場合によってはテレビからアクセスすることもできるようになる。また、どこにあるか分からないデータセンターで運用されているクラウド型ストレージサービスでは、大量のデータを扱う際にファイルの転送が延々と続き、待たされることも多いが、Synology NASであれば屋内の高速なネットワークにつながっているので、直接接続のHDDと変わらない感覚で気軽に大容量ファイルをどんどん移動/複製できる。

 さらに、ある程度の信頼性を備えている点でもDS216jはオススメできる。このモデルはHDDを2台収納できる仕様で、2つのHDDの中身を複製して運用するミラーリング(RAID 1)設定にすれば、万が一片方のHDDがクラッシュしてもデータを失わずにすむ。

 この世の中に永遠に使える記憶装置はなく、HDDやSSDも白熱電球と同じように、ある日突然壊れてしまう。ただ、多くの人は、それが予想ができない分、いつか必ず訪れる不幸に何の準備もしないまま「その日」を迎えてしまう。そうなって初めて、まるで旅行先でバッグを盗まれたように不幸を嘆き、それから先数カ間は「そういえばあれもなくなっている、これもなくなっている」と苦しめられ続ける・・・・・・。

 こうした心配をしなくてすむのが、iCloudやGoogle Drive、Dropboxなどしっかりした大企業が管理しているクラウドストレージの魅力とも言える。

 一方、Synology NASはトラブルに自分で対処しなければならないため、上で挙げたクラウドサービスほど安心はできないものの、それでも安価な1ベイ構成のNASよりははるかに安心できる。また、安心感よりも性能を取りたい場合は、複数のHDDに分散して書き込みを行い、書き込み速度を向上させるストライピング(RAID 0)や、さらに多くのベイを搭載するモデルなら、安全と高速を両立したさまざまなRAID構成を選択できる(詳細は公式ページを参照してほしい)。

 このように圧倒的に簡単で使いやすく、詳しくなればどこまでも色々な機能を追加できるSynologyは、ハードウェアの面でも信頼できる技術が使われている。この種のハードウェアは扱いが難しくモノも多いが、Synology NASは優れた使い心地で初心者にもオススメしやすい製品だ(それだけに、外観のデザインやデスクトップ画面のアイコンがイマイチで、見た目の配慮のなさが残念でならないのだが・・・・・・)。

デスクトップのUIデザインはコントロールパネルのテーマから変更できる

 今、世の中では教育にどうやってITを取り入れていくかの議論が行われている。気が付けば私たちは、ポケット中にあるスマートフォンと自宅/オフィスのパソコンに加えて、インターネットのどこかにある(実物を見る機会がない)巨大なサーバ群を日々利用している。

 そのサーバを実際に家に置いて、実体験として学ぶことは、インターネットの仕組みを知り、さまざまなトラブルを自分で回避する能力を身につける上でも有効だろう。Synology NASは、パソコンやスマートフォンを埋め尽くすファイルのバックアップ先としても十分すぎるくらいに便利だが、実はそうした活用をしながら、少しずつステップアップしてサーバの仕組みを学ぶためのものとしてもかなり有望だと思う。

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