認証テストよりグッドデザイン賞を気にする開発担当者たち:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
IT関連製品の拡販にあたり、第三者機関による認証は、製品の信頼性を高めるうえで効果的なのは言うまでもない。しかしメーカーの開発担当者の中には、これらにあまり注力することなく、全く畑違いとも言える賞にこだわる人々がいる。
多くの開発担当者がグッドデザイン賞を狙う理由
しかしこの手法は、うまくいけば効果は絶大なのだが、発売前にパッケージに反映させられないことから、後日のシール対応やパッケージ修正の手間が発生したりと、かえって手間がかかることもある。いろいろと段取ってみたもののタイミングが合わず、結果的に開発原価に含めざるを得なくなった……ということもしばしばだ。また過去に同様の経理処理を行い、不適切だと指摘された場合など、会社によっては禁じ手となっているケースもある。
ここで登場するのが、認証テストなどとは全く畑違いのグッドデザイン賞だ。1957年に旧通商産業省によって設立された「グッドデザイン商品選定制度」を日本産業デザイン振興会が承継し、60年にわたって実施されている「よいデザイン」の指標を示す賞である。応募総数に占める入選数の割合の高さや、応募から受賞後にかかる費用など、ネット上ではツッコミもみられるが、その強い訴求力はメーカー関係者の誰もが認めるところだ。
また開発担当者が「私はこれだけ外部から評価される製品を作りました」と社内にアピールするための材料に使われるケースも多く、予算が許す限り1つでも多くの製品で応募したいというのが、開発担当者の本音だ。
グッドデザイン賞はその効果が広く認知されており、社内でわざわざコンセンサスを取る必要もない。また年1回の開催であるため、発売後に応募して審査をパスし、後付けでパッケージにシールを貼るという対応が、年間を通して行われている。つまり開発費ではなく広告宣伝費を使い、しかも発売後に処理ができるスキームが、社内で確立されているのだ。
もちろん、特定の規格への対応を証明する認証テストと、デザインの優秀さを審査するグッドデザイン賞とでは、その出自もコンセプトも全く異なる。しかしパッケージにそのシールが貼られていれば拡販につながるという点においては、両者は共通している。それゆえ、プールされている広告宣伝費を活用して製品を少しでも多く売るために、多くの開発担当者がグッドデザイン賞を狙うことになるというわけだ。
関連キーワード
周辺機器 | 牧ノブユキの「ワークアラウンド」
関連記事
人気モデルの「世界○カ国で先行販売」に日本が入らない理由
人気のスマホやゲーム機では、まずある国や地域で発売し、そこが一段落したら別の国や地域で発売するという、いわゆる先行販売のシステムがよく用いられる。これは生産数の限界ゆえにやむを得ずそうなっているように見えるが、実際にはさまざまな事情が関係していることもしばしばだ。人気の激安モデル終息にみる「売れすぎると製品寿命が縮む」法則
自社で製品を製造・販売しているメーカーでは、自社ブランドの製品、いわゆるリテール製品を扱う事業部とは別に、OEMビジネスを専門に行っている事業部が存在することが多い。この種のOEMビジネスでは、売れすぎたことが製品の寿命を縮めることがある。人気スマホ、ゲーム機……発売日に潤沢な在庫がないのはなぜ?
人気の高いスマホやゲーム機では、発売直後に必ずと言っていいほど品薄が発生する。なぜメーカーは発売日に潤沢な在庫を用意できないのだろうか。「仕様書と違うから作り直せ」は通用しない? メーカーが語らないOEMビジネスの実情
OEMやODMのビジネスでは、要求した本来の仕様とは異なる製品が外注先からメーカーへと納品されてきても、メーカー側が泥をかぶらざるを得ないケースが多い。契約に従って外注先に責任を取らせるのが難しい理由とは?「外注したら仕様と違う製品が送られてきた」 メーカーの悲劇はなぜ繰り返される?
OEMやODMのビジネスを手掛けるメーカーにとって、要求した本来の仕様とは異なる製品が外注先から納品されてくるのは日常茶飯事だ。なぜそのようなミスが起こるのか、そしてなぜ繰り返されるのか、その裏事情について見ていこう。量販店の売り場ごとに「電源タップ」が違っていたら要注意?
電源タップのように、量販店の複数の売り場で販売される製品は、その売り場によって異なるメーカーの製品を取り扱っていることが多い。最も優秀なメーカーの製品を全店統一で扱った方が効率的に思えるが、なぜそうしないのだろうか。リスキーな製品にあえて手を出すメーカーの事情とは?
既存の製品カテゴリーだけで売り上げの維持や上昇が見込めないメーカーにとって、新規カテゴリーへの参入は特効薬だ。しかし、ブルーオーシャンな市場がそうそうあるわけではなく、リスクがある製品カテゴリーを選ばざるを得ない場合もある。量販店のアクセサリー棚はさながら売れ筋ランキング?
PCやスマホのアクセサリーを作っている、俗にサードパーティーと呼ばれるメーカーは、本体機器の販売動向をかなり正確に把握しており、それはラインアップに反映されている。つまり量販店の売場を見れば、あまりメジャーではない製品の販売動向や規格の浸透状況も一目瞭然だったりするのだ。その購入ボタンを押す前に 知っておきたい「売れ筋ランキング」の中身
製品の販売数は実数で公表されないため、調査会社や販売店が独自に集計した販売ランキングや売れ筋ランキングが役に立つ。しかし、それらの集計方法を知らないと実態を正しく把握できないので注意が必要だ。製品写真をよく見せるテクにだまされない方法
写真を信じて通販で製品を購入したところ、思っていたサイズや色と違ってがっかりするのはよくあること。これらはメーカーがホンモノ以上に見せるためのテクニックを駆使していることも少なくない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.