コラム

iPhoneで広まる新時代のAIアプリを林信行が解説(2/3 ページ)

手術中の出血量やバスケットボールのシュート角度など、これまで人が勘に頼っていた部分を数値として補完してくれる新しいアプリの登場が期待されている。「A12 bionic」と「CoreML」で世界はどう変わるのか。

バスケのシュートの成果をリアルタイムで数値化

 HomeCourtは、iPhone XSやXRが発表されたスペシャルイベントで紹介されたアプリだ。バスケットボールのシュート練習を支援するためのもので、元NBA(全米プロバスケットボール)のスティーブ・ナッシュ選手も開発に協力したという。


Appleのスペシャルイベントで紹介された「HomeCourt」

 iPhoneでこのアプリを起動し、カメラ画面になったらバスケットボールのゴールネットが映る状態でiPhoneを固定しておく。すると、即座にCoreMLがゴールネットの位置やコートの形状を認識。練習を始めると、選手が何回シュートし、そのうち何回ゴールが決まったかを認識してカウントしてくれる。

 ナッシュ選手は「バスケットボールはシュート練習をしながら、自分で調整をかけるものだが、それによって成果があがっているのか、下がっているのか、これまでは判断材料が乏しかった」とし、こうしたアプリによってシュート練習が劇的に改善するであろうことを示唆した。

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シュートの状態をリアルタイムで分析

 もっとも、実はここまでの機能は、2017年までに登場したiPhone 8シリーズやiPhone Xでも利用ができる。それでは、これがA12 bionicを搭載したiPhone XSやXRになるとどう変わるのか。

 HomeCourtの開発元である米NEX TEAMのDavid Lee氏によれば、iPhone Xと比べてもCoreMLの処理が最大で9倍高速になったA12 bionic搭載の最新型iPhoneでは、より多くの機能を提供できるようになったという。

 1つは選手の頭や腕、脚といった骨組みをリアルタイムで認識して表示する機能、さらには投げたボールがどのような軌跡を描くかリアルタイムで予想し、表示する機能を紹介。実はA12 bionicの処理能力を生かせば、(1)どのようなシュートだったのか(静止位置からのシュートか、誰かから投げられたボールを受け取ってからのシュートだったのかなどの区別する)、(2)投げたときの脚の角度、(3)投げられたボールが飛んでいく角度、(4)ボールを放るまでの時間、(5)ボールの初速、(6)手を離れた瞬間のボールの高さ、といった6つの項目をリアルタイムで認識して記録できるといい、これらを「Realtime Shot Science」という新iPhone専用の機能として提供する予定だそうだ。


これまで人の勘に頼っていた部分を数値化することでより効果的な練習が期待できる

 人間の目でも、シュートを何回投げたかや、シュートが何回決まったかくらいであれば判別がつく。しかし、ボールの初速や角度、高さとなると、ほとんどの人はお手上げだろう。

 もっとも、バスケの練習をしながらいちいちiPhoneの画面をのぞきにいっては効率が悪い。このアプリでは、シュート時の数値の変化をAirPodsなどのBluetoothヘッドセットを通して耳に届けてくれる機能も用意するそうで、ナッシュ選手も「若いころにこうしたアプリがあれば私の練習も全く変わっていただろう」とうらやましがっていた。

 ちなみにCoreMLを活用したスポーツ系アプリケーションというと、実はもう1つ「Swing Tennis」というアプリもある。これはテニスの練習用のアプリだが、Apple Watchを使ってショットを打ったときのインパクトや腕の回転データなどを記録してくれる。

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