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「この製品がダメだから、このメーカーはダメだ」という考えが危ない理由牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

PCやスマホの周辺製品に不具合が発覚した場合、ユーザーからは「あのメーカーは信頼できる」「信頼できない」などと、製品の評価をメーカーそのものの評価へと繰り上げる傾向がよく見られる。しかし周辺機器の場合、こうした考え方はやや短絡的で、逆に選択肢の幅を狭めてしまう危険がある。

 PCやスマートフォンの周辺機器のうち、登場したばかりで歴史がまだ浅い製品は、品質面での問題が話題となることは何かと多い。

 例えばモバイルバッテリーは、記載されている容量と実容量が異なっていたり、(先日表示が義務化された)PSE認証の表示が怪しかったり、といった具合だ。この他、USB PD対応の充電アダプターも、実際の電流や電圧がパッケージの表記と異なっていたり、異常に発熱したりといった問題点が、ユーザーレビューなどで指摘されることが多い。

 このように、ある周辺製品が問題を抱えている疑いが浮上すると、ユーザーからは「あのメーカーは信頼できる」「信頼できない」などと、製品の評価をメーカーそのものの評価へと繰り上げる傾向がよくみられる。

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 こうした考え方は、全面的に間違っているわけではないが、盲信すると逆に選択肢の幅を狭めてしまう危険がある。なぜ製品の評価をメーカーの評価に繰り上げるのが正しくないか、PC周辺機器ならではの事情を踏まえつつ見ていこう。

「製品の評価」は「メーカーの評価」に繰り上げない方がいい?

 国内の周辺機器メーカーが販売している製品は、その多くが中国で生産されたものだ。自社で設計して生産のみ委託している場合もあるが、設計から製造まで中国の業者が手掛けたものを買い付けてきて自社ブランドを付けて販売しているケースの方が、割合としては多いと考えられる。先に述べたモバイルバッテリーやUSB PD充電器などは特にそうだ。

 こうした製品は、国内周辺機器メーカーが要求した仕様を満たしてはいても、あらゆる挙動を国内周辺機器メーカーが把握できているわけではない。歴史が浅いジャンルであればあるほど、仕入れる側の国内周辺機器メーカーもテスト項目が用意できておらず、想定していなかった機器の組み合わせにおいて、思わぬ挙動をすることがある。

 以上のような状況下で、ある製品について不具合が発生したり、あるいはその疑いが見つかったりしたとして、販売元である国内周辺機器メーカーを「このメーカーはダメだ」と、今後の購入対象から排除してしまうのは、やや短絡的にすぎる。

 もちろん完全に的外れというわけではない。何かしらの不具合が発生した事実からして、検品体制などの部分において、国内周辺機器メーカーに何らかの不備があったのは事実だ。今後これが改善されず、似たような事態が繰り返し起こるのならば、その国内周辺機器メーカーを購入対象から外し、別のメーカーに切り替えるのは、確かに妥当な判断だろう。

 しかしその一方で、発生した不具合を教訓に、テスト項目を増やすなどの対応を行い、次回以降は不具合を水際で阻止できるようになる可能性も大いにある。こうした改善は企業としては普通の行為だが、新しいジャンルの製品の場合、それまでのケーススタディーが少なかったことが不具合発生の理由の一つであるだけに、今回を教訓に以後の品質が見違えることはよくある。

 またもう一つ、仕入元を別の外注先に変えることで、クオリティーが格段に変わる可能性もある(もちろんその逆もあるが)。新しく登場する製品は、以前不具合を起こした製品とはハード、ソフトともに連続性がないわけで、前回の不具合を理由にメーカーを排除する根拠そのものがなくなってしまう。

 かつての白物家電のように、国内メーカーが自社で一から企画設計を行い、自社工場で生産していた頃は、発生した不具合がどのような原因であっても、その非は国内メーカーにあった。それ故、製品の評価をメーカーの評価に繰り上げても、ある程度は的を射ていたわけである。

 しかし現状のPCやスマホの周辺機器メーカーにおける製品づくりにおいては、もちろん販売責任はあるものの、個別の製品の評価を毎回メーカーの評価に繰り上げ、次回の購入対象から外すのは、かえって自分の首を絞めかねない。下手をすると、切り替えた先のメーカーでもまた同様の不具合を引き、さらにその次もまた不具合を引く……といった具合に、経験の浅さから来るメーカーの不具合に、延々と付き合うことになりかねない。

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