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Zen 3アーキテクチャは効果てきめん? AMDがモバイル向け「Ryzen 5000」シリーズを解説(1/2 ページ)

AMDがCES 2021に合わせて発表したモバイル向けのRyzen 5000プロセッサ。その特徴と実力はいかなるものなのだろうか。同社が報道関係者に説明した。

 既報の通り、AMDは1月12日(米国太平洋時間)に新型APU(GPU統合CPU)「Ryzen 5000 Series Mobile Processors」(開発コード名:Cezanne)を発表した。

 この記事では、1月14日に行われた報道関係者向け説明会の内容を基に、Ryzen 5000 Series Mobile Processors(以下「モバイル向けRyzen 5000」)の特徴を説明する。


Ryzen 5000 Series Mobile Processorの特徴

一部を除きCPUアーキテクチャは「Zen 3」に

 モバイル向けRyzen 5000の特徴の1つが、一部のモデルを除いてCPUアーキテクチャを「Zen 3」に移行したことだ。Zen 3アーキテクチャは、先代の「Ryzen 4000 Series Mobile Processors(Ryzen 4000)」で用いられた「Zen 2」と同じく7nmプロセスで作られているが、構造を改善することでパフォーマンスの向上を図っている。

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モバイル向けRyzen 5000(Zen 3アーキテクチャモデル)の概略図

CCXの構造変更

 モバイル向けのZen 2アーキテクチャでは、1基のCCX(※)に最大4基のCPUコアと4MBのL3キャッシュを統合している。8コアCPUの場合、2基のCCXに合計で8MBのL3キャッシュを搭載することになるが、あるCCXに属するCPUコアは、他方のCCXにあるL3キャッシュに直接アクセスできないため、L3キャッシュがボトルネックになってパフォーマンスが低下する恐れがあった。

(※)CCX(Core Complex):CPUコアとCPUキャッシュを統合したモジュール

 それに対し、モバイル向けのZen 3アーキテクチャでは、CCXの構造を最大8基のCPUで16MBのL3キャッシュを共有するように改めた。キャッシュ容量の倍増に加え、8基のCPUコアが同じL3キャッシュにアクセスできるようになったことで、パフォーマンスの改善につながっている。


モバイル向けのZen 3アーキテクチャでは、最大8基のCPUコアが16MBのL3キャッシュを共有する

メモリコントローラーの改善

 モバイル向けRyzen 5000のメモリコントローラーは、メモリチップに対する省電力機能も強化している。メインメモリへのアクセスが少ない場合、メモリチップを省電力モードに移行させることでバッテリーの消費を抑制できる。

 なお、メインメモリはDDR4規格(DDR4-3200/PC4-25600)とLPDDR4X規格(LPDDR4X-4266)の両方をサポートすることは変わりない。


メモリコントローラーは、省電力管理機能を強化した

CPUクロックの切り替えの高速化

 従来のモバイル向けRyzenは「バッテリー駆動時のパフォーマンスが悪い」とされてきた。この点は、AMDの競合であるIntelが機会のある度に指摘してきたことでもある。

 その改善策として、モバイル向けRyzen 5000では「CPPC(Collaborative Processor Performance Controls)」と呼ばれるCPUクロック(周波数)の調整機能をサポートした。これにより、UEFI(ファームウェア)とOSが対応していれば、CPUクロックの切り替えが最大で20倍高速に行えるようになる。


モバイル向けRyzen 5000はCPPCによるCPUクロック調整をサポートした。これにより、従来のモバイル向けRyzenの“弱点”であるバッテリー駆動中のパフォーマンスを改善できる

コア単位での省電力管理に対応

 モバイル向けRyzen 5000では、コア単位で電圧とクロックを調整できるようになった。これにより電力効率が改善し、消費電力を削減できている。


モバイル向けRyzen 5000はコア単位で電圧とクロックを調整できるようになった
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