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「GIGAスクール構想」の推進に向けて――NECが教育ICTプラットフォームを強化(3/3 ページ)

NECが教育ICTに関する説明会を開催した。同社が展開する教育クラウドサービスやハードウェア製品に関する近況や新展開が紹介された中で、興味深い話も飛び出した。

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協働的な学びに向けたOPEの強化点

 「協働的な学び」を実現するために、OPEでは2022年から以下のサービスを順次追加する。

  • 協働学習支援サービス
  • オンラインPBLプラットフォーム
  • オンライン進路相談プラットフォーム

協働的な学びを推進するための新サービスは、2022年から順次実装される予定だという

協働学習支援サービス

 協働学習支援サービスは、AI(人工知能)を使ってグループ学習の評価を支援するソリューションだ。現在、NECが京都市教育委員会や京都大学と共同で行っている文部科学省の実証事業の成果を製品(商用)化したものとなる。

 具体的には、マイクで録音した児童/生徒のグループディスカッションの模様をAIが分析し、話者の識別、発言の文字起こし、発言回数のカウント、話者の感情分析……などを自動的に行ってくれる。分析結果はグラフなどで分かりやすく可視化されるという。教員があらかじめキーワードを設定しておけば、その使用回数もカウントしてくれる。

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協働学習支援サービスは、NECなどが京都市で取り組んでいる文部科学省の実証事業の成果を製品化したもの。教員1人では物理的な困難を抱えるグループディスカッションの評価をAIで支援する

協働学習支援サービスの画面イメージ。発言をグループ(班)別にタイムライン表示したり、児童/生徒の発言回数や感情のシェアをグラフ化したりすることができる

オンラインPBLプラットフォーム

 「PBL(問題解決型学習)」は、文部科学省が近年推進している「アクティブラーニング」の1つで、主に中学校と高等学校の教育課程で行われる。その名の通り正解のない課題に取り組むための方法論を身につけることを目的とした学習である。

 一般的に、PBLでは以下の手順で学習を進めていく。

  1. 解決すべきテーマ(問題)を設定する
  2. 1人1人が「個人ワーク」を進めつつ、その成果を持ち寄って「グループワーク」や「グループディスカッション」を実施する(新たな知識の習得と、手持ちの知識のブラッシュアップを図る)
  3. グループが見いだした結論(解決策)を発表する

 田畑氏から発せられた教員の言葉を借りると、PBLは中学生や高校生にとって「意義のある取り組みではある」。しかし、成績を付ける「『学習活動』として見ると、課題もある」。現場の教員からは「個人ワークやグループディスカッションにおける成果物やタスク(作業)を共有しづらい」「生徒の学習プロセスを追いづらいので評価が難しい」といった声が挙がっているという。端的にいえば成績を付けるための情報を集約しづらい状況なのだ。

 オンラインPBLプラットフォームは、PBLにおける成果物や討議の記録を集約して“可視化”するための機能である。現時点では複数の学校に協力を依頼して、プロトタイプ(たたき台)の実証研究を進めている所だという。

 現行のプロトタイプでは、生徒が書き込む(≒成果を残す)オンラインノートにコミュニケーション機能を統合している。成果物の離散を抑制できる上、議論の過程もしっかりと確認できる。チャットやWeb会議などに専門家を招待することで、テーマについてより深く議論することも可能だという。


PBLは学習過程の可視化が難しい。オンラインPBLプラットフォームは、それを実現すべく開発が進められている

プロトタイプの1つでは、作業画面にコミュニケーションツールを統合している。チャットやWeb会議、クラウドストレージに保存された成果は学習過程の「可視化」にも役立つ

オンライン進路相談プラットフォーム

 オンライン進路相談プラットフォームは、その名の通りオンラインで進路相談を行うための仕組みだ。進路選択がより多様化する高等学校における導入を想定している。

 このプラットフォームを導入すると、進路相談を希望する生徒の「面談者探し」「面談者のスケジュール調整」「面談の実施と仮説検証」をワンストップで代行してくれる。面談者は大学生や社会人など、多様なロールモデルを用意する予定だ。


オンライン進路相談プラットフォームでは、多様なロールモデル候補(面談者)を用意し、進路相談を希望する生徒とのマッチングを支援する

実際の利用イメージ

 将来的には、これらの「協働的な学び」と個別学習を連携させて、学習状況を可視化できるようになる予定だ。


将来的には協働的学びと個別学習を連携させて、学習状況を可視化できるようにする

学習用端末はChromebookが優勢?

 説明会の終盤では、学習用端末を始めとする教育機関向けハードウェアの新製品が紹介された。 学習用端末の新製品は、デジタイザーペンによる操作やWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)を使った通信に対応した他、学習発表時に便利なHDMI出力端子を追加している。これに合わせて、教室などに設置するWi-FiアクセスポイントにもWi-Fi 6対応品を取りそろえた。詳細は別の記事でまとめているので参照してほしい。

 説明会の最後に行われた質疑応答では、学習用端末にまつわる面白いやりとりが見られた。

 NECが販売する学習用端末は、Windows 10 Proを搭載するノートPC/タブレットとChrome OSを搭載するノートPC(Chromebook)の大きく2種類である。説明会から参加した記者から田畑氏に、どちらのOSの方が人気なのかという旨の質問がなされたのだ。

 一般的な市場であれば、Windows 10 Pro搭載モデルの方が人気を集めそうである。事実、ここ数年の調査では、学習用端末でもWindowsが高いシェアを持っていた。しかし、田畑氏の答えは違った。具体的な販売比率こそ明かされなかったものの、現在はCromebookの方が圧倒的に売れているというのだ。

 文部科学省がGIGAスクール構想を発表した後、Googleの教育向けクラウドサービス「Google Workspace for Education(旧G Suite for Education)」を導入する教育委員会が多かったという(参考記事)。このサービス自体はOSニュートラルではあるが、より親和性の高いChromebookを導入するケースが増えたものと思われる。


NECではOPEの他、ハードウェア製品も一括して提供できる体制を構築している

NECが今後発売する予定の新型学習用端末。「NEC Chromebook Y3」は6月に、Windows 10 Proを搭載する「VersaPro E タイプVR」は8月に発売する予定だ

新型のWi-Fiアクセスポイント「UNIVERGE QX-W1120」は、Wi-Fi 6に対応することで、最大接続クライアント数が1536台と従来比で2倍となっている。
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