「Apple Watch Ultra」はAppleがたどり着いた究極の時計だ:シン・ウルトラウォッチ登場(2/3 ページ)
スマートウオッチをリードするAppleから、従来の殻を破った1台が登場した。サイズもバッテリー駆動時間も機能も過去最大となった「Apple Watch Ultra」を林信行氏がチェックした。
陸の冒険も海の冒険もしっかりとサポート
このApple Watch Ultraは、これまでのApple Watchでできなかったどのようなことができるのだろうか。実は機能の違いは、そこまで大きいわけではない。
1つは「サイレン」という機能で、遭難したり転倒したりして身動きが取れない状態に陥った際、ユーザーに代わって緊急電話をかけつつ、けたたましい音を鳴らして自分の居場所を周囲に知らせる。
けたたましいと言っても小さなApple Watchから出せる音なので限界はあるが、それでも静かな場所であれば、Appleが試行錯誤の末に見つけだした聞き分けしやすい86デシベルの音が約180m先まで届くという。アプリを起動するとバッテリー残量が表示されるので、それを見ていつサイレンを鳴らすかの計画を立てることができる。
その上で実行すると、まずは最初にいくつか大きな音が鳴り、どの程度の音が出るかどのように響くかを確認した後、小さい救難要請の音がなり始め(モールス信号のSOS音)、それが段々と大きくなっていく。
Ultraならではの機能として、もう1つ大きいのがダイビングのための機能だ。本体が水に浸かった瞬間、自動的に「水深」というアプリが起動し、現在の水深、水温、水中時間、そして最大到達深度(最大40m)を表示してくれる。
今回、ダイビングソリューションを手がけるHuish Outdoorsが協力し、Apple Watch Ultra用に「Oceanic+」というアプリを開発した(2022年秋後半にリリース予定)。スキューバーダイビングなどのレクリエーションダイビングでの潜水プランや潜水ログをつけられる。
このアプリはダイブ中の「No Decompression Time」(無減圧時間)やバリオメーターのデータ、水温、最大深度や上昇速度、バッテリー残量、コンパス、コンサバティズム、ガスといったさまざまな情報の確認を、水中でも操作しやすいDigital Crownの回転とアクションボタンを使って操作できる。
最大深度達成や水温が冷た過ぎたり、上昇速度が速すぎたりすると、安全停止(Safety Stop)の警告を目立つ色で表示してくれる機能もある。
ただ他のApple Watchにはない、Ultraだけの機能というと実はこれくらいだ。Ultraのプロモーションビデオに出てきた、ウェイポイントという目印を置いてApple Watch単体でナビを行ったり、来た道を元通りに戻ったりするトレースバックの機能なども、確かにApple Watch Ultraの良さが生きるハイキングや山登りと言った場面で活躍してくれる機能ではあるが、実は先日リリースされたwatchOS 9にアップデートをすれば、これまでのApple Watchでも利用できる。
Apple Watch Ultraの差別化ポイントは、そこではない。分かりやすい機能的な違いよりも、本当に良いものを吟味した人こそが分かる質の違いこそがUltraの差別化ポイントだ。
例えば、先のコンパスアプリにしても、2つの周波数のGPSに対応した。L1 GPSに加え、新たに衛星みちびきのL5と呼ばれる高精度即位、つまり、より高い精度で位置を割り出すGPS測位に対応している(高層ビルが多い都心などでもGPSの精度が上がる)。
せっかく正確なGPSが入っても、炎天下の太陽の下で画面が見えなくてはしょうがないが、Ultraは、この点でもiPhone 14 Proと同じ最大2000ニトの高輝度表示に対応し見やすさを確保している。
さすがにレビュー用の製品を乱暴に扱うことはできなかったが、実は頑丈さでも高度、高温、低音、熱衝撃、液浸、凍結融解、ひょうや雨氷、衝撃や振動と言った厳しい環境でテストする米国の軍事機器用のテストにおいても「MIL-STD-810H」という規格相当の成績を出しており、「WR100」(10気圧防水)の耐水性を、ダイブコンピュータやゲージ用の規格でも「EN13319」という認証を得るなど、かなりタフなデバイスに仕上がっている。
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