「価格」と「機能」のバランスはどう取る?――UPSの“仕組み”を理解する:転ばぬ先の「UPS」選び(第2回)(1/2 ページ)
PCやサーバ/NASを不意の停電から守ってくれる「UPS(無停電電源装置)」だが、大きく分けると3つの方式があり、それぞれに長短がある。より適切なUPSを選ぶために、その“長短”をしっかりと学ぼう。
稼働中のPCやサーバ/NASを急な停電によるリスクから守るためのデバイス「UPS(無停電電源装置)」について、前回は基本的な考え方を解説した。
ただ、一言で「UPS」といっても、大きく分けると3種類の電源供給方法があり、それぞれに長短がある。この記事では、UPSの電源供給方法に着目して、それぞれのメリットとデメリットを解説していく。
UPSの3方式
UPSには大きく3種類の電源供給方法がある。
- 常時商用給電方式
- ラインインタラクティブ方式
- 常時インバーター方式
繰り返しだが、それぞれにメリットとデメリットがある。長短をしっかりと把握すれば、自分の環境によりピッタリなUPSを選べるようになるので、しっかりと理解を深めていこう。
常時商用給電(オフライン)方式
「常時商用給電(オフライン)方式」は、通常時はPCやサーバ/NASに「商用電源」を直接給電するタイプのNASだ。バッテリーはコンバーター(整流器)を通して充電されており、商用電源の途絶を確認すると自動的にスイッチが切り替わり、インバーターを介してPCやサーバ/NASへの給電を開始する。
「商用電源?」と思った人もいるかもしれないが、これは自宅やオフィスなどのコンセントから供給される電源、つまり発電所から変電所/変電器を介して供給される電源のことである。UPSのカタログや仕様書では比較的よく出てくる言葉なので、「普通のコンセントからの電気」だと理解しておけばいい。
常時商用給電方式の概略図。通常時はPCやサーバ/NASに商用電源を直接給電しつつ、それと並列してつながっている整流器を介してバッテリーを充電している。停電が発生するとスイッチが切り替わり、インバーターを介してバッテリーから電源が供給されるようになる
メリット:軽くて小さくて安い
この方式のメリットは、構造がシンプルということに尽きる。もう少し具体的にいえば小型、軽量かつ低価格なUPSを実現しやすいということだ。また、通常時は商用電源をそのまま供給することになるため、電力供給面での無駄が少ない(≒余計な電力消費がなく、電気代に優しい)という利点もある。
デメリット:停電時の「瞬断」が不可避 停電時の「波形」が問題になることも
この方式の一番のデメリットは停電時(バッテリーからの電源供給に切り替る時)に電源の“瞬断”が発生することにある。停電のタイミングでデータの書き込みを行っていた場合、瞬断によってデータの一部(または全部)にエラーが生じるリスクがある。
また、通常時は商用電源をそのまま供給することになるため、停電以外の商用電源におけるトラブル対策には利用できないということにも留意したい。
もう1つ、バッテリーとインバーターを介して供給される停電時の電力が「矩形波」になってしまうことがあることもデメリットといえる。
通常、コンセントから供給される交流電源は、電圧/電流の波形が滑らかな「正弦波」となっている。最近のPCやサーバ/NASは力率改善回路を備えた「PFC電源装置」を搭載するケースが増えているが、このタイプの装置は高効率を実現する代わりに、正弦波の電力供給を前提としている。言い換えると、電圧/電流の波形が直線的な「矩形波」の電力が供給されると誤動作や故障の原因となってしまうのだ。
「これが何のUPSと何の関係があるの?」という所だが、常時商用給電方式のUPSでは、コスト削減の観点から停電時にインバーターを介して供給する交流電源が矩形波となっているものがあるのだ。このようなUPSとPFC電源を備える機器を組み合わせてしまうと、停電対策の役割を果たしきれない恐れがある。
理科などの授業で、交流電源は「陽極(+)と陰極(-)が常に入れ替わっている」と習った人もいると思うが、この+と-の入れ替わり(と電圧の変化)がスムーズかつキレイに行われている場合の波長が「正弦波」である
一方で、バッテリー(蓄電池)を含む直流電源は、+と-が常に一定である。直流電流を細切れにして交流電流を生み出す装置(回路)が「インバーター」なのだが、細切れにする回数が少ないと出力される交流電流が「矩形波」となってしまう
ただし最近は、常時商用給電方式のUPSでも停電時でも(疑似)正弦波出力できるように対策しているモデルもある。今どきのPCやサーバ/NASと組み合わせる場合は「(疑似)正弦波出力対応」と明記されたものを購入するのが無難だ。
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