意外と重要なパソコンやサーバの「停電」対策――UPSの基礎知識をチェック:転ばぬ先の「UPS」選び(第1回)(1/2 ページ)
PCやサーバ/NASにおいて「データのバックアップ」の重要性が説かれる一方、「電源のバックアップ」については若干見過ごされがちである。万が一の停電に備えて「UPS(無停電電源装置)」の導入をお勧めしたい……のだが、その前に、UPSの役割や、導入に当たって気を付けたいポイントを解説しようと思う。
PCやサーバの運用において、データのバックアップの必要性はよく耳にする。個人と法人、法人なら事業の種類に関わらず、外付けストレージやNAS(ネットワークストレージ)などを使ったデータバックアップは珍しいものではなくなった。
しかし、停電に備える「電源のバックアップ」は、意外と見落とされがちだ。昨今、悪天候や地震といった自然災害で「地域停電」が発生することが増えている。厳しい電力需給状況に起因する「突発的な停電」のリスクが高まっているというニュースもよく報じられるようになった。
これらの停電は、稼働中のPCやサーバ/NASに思わぬ影響を与えうる。かくいう筆者も、停電によってNASが壊れたり、検証用のPC(実機)やサーバ上の仮想マシンが起動しなくなったりしたことがある。昨今の社会情勢を考えると、電源のバックアップを用意することは喫緊の課題ともいえる。
万が一停電が発生した際も、ファイルを緊急に保存したりPCを安全にシャットダウンしたりできれば、先述のような悲劇は防げる。それを実現する機器が「無停電電源装置(UPS)」である。
ただ、「UPS」という言葉はよく耳にするものの、実際に導入しようにするとさまざまな機種が発売されており、どれを選べば最適なのか少し分かりにくい。そこで、3回に分けてUPSの役割、種類と選び方を解説していく。この記事では、UPSの役割を確認しよう。
UPSは「安全にシャットダウンする」ために存在する
まず、UPSの“役割”について断っておきたいことがある。UPSは「停電時でも業務を継続する(止めない)ための装置」ではない。日本語での「無停電電源装置」という呼び方から勘違いするのも仕方ない面もあるが、そもそもの構造を考えれば継続した利用に向かないことは良く分かる。
少し大ざっぱにいうと、UPSは「蓄電池(バッテリー)」「コンバーター」「インバーター」の3種類の機器を組み合わせて作られている。普段はコンセントからの交流(AC)電流をコンバーターで直流(DC)電流に変換し、蓄電池へと充電をしつつ、AC電流をPCやサーバ/NASにも供給している(※1)。
(※1)通常時の電源供給方法は複数あるが、その詳細は第2回で解説する
万が一コンセントからのAC電流が遮断された場合は、蓄電池からの電源供給に切り替わる。ただし、DC電源である蓄電池は直接PCやサーバ/NASに供給できないので、インバーターでAC電流に戻した上で行うことになる。蓄電池は充電するすべは失われるので、その充電残量があるうちにPCやNASのデータの保存を終えてシャットダウンする(電源を切る)手続きを行う必要がある。UPSの機種によっては、停電を検知するとPCやサーバ/NASに対してデータを保存してシャットダウンするように“指示”する機能を備えるものもある。
要するに、UPSは停電時にPCやサーバ/NASのデータを保存した上で、安全にシャットダウンする(電源を切る)時間を確保する装置である。この“基本”は忘れずにいたい。
「電源安定化装置」としてUPSを使うケースもある
グレードの高い(≒価格の高い)UPSは、PCやサーバ/NASに供給されるAC電流の電圧や周波数を整える「電源安定化装置」としても利用できるようになっている。
非常に高い信頼性が求められる業務に使われるPCやサーバ/NASでは、わずかな電圧/電流の低下を避けたいというニーズがある。この場合に、コンセントから直接交流電源を取るのではなく、UPSを挟むことによって電源の安定化を図りつつ、停電対策も行う……という使い方をしているのだ。
このあたりの詳しい話は、第2回で行うので楽しみにしていてほしい。
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