Apple ティム・クックCEOが3年ぶりに師走の日本を訪問する意味(2/2 ページ)
Appleのティム・クックCEOが日本各地を訪れている。3年ぶりの来日となった同氏の訪問やその意味を考える。
グローバルサプライチェーンの脱炭素化に賛同する最初の日本企業へ
今回のクック氏のSSS訪問は、ただの視察だけではない。Appleが2030年に向けて進めている、直接排出と電力関連の排出を含むApple関連の製造を完全に脱炭素化する構想においても重要な一歩で、Appleの日本における最大手のサプライヤーであるSSSが、Appleが近年推進しているグローバルサプライチェーンの脱炭素化に賛同する最初の日本企業となることを確認する訪問でもあった。
日本でもパリ協定以後、投資家や金融機関が適切な投資判断を行えるよう、企業に気候変動に関する財務情報の任意開示をうながす「TCFD」(Task force on Climate-related Financial Disclosures/気候関連財務情報開示タスクフォース)などが広がりつつある。
環境に関する温室効果ガス排出量の削減目標であるSBT(Science Based Targets/科学を基準とする目標設定)や、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す、国際的なイニシアティブ「RE100」などに参画する企業も増えている。
環境省の発表によれば、こうした環境への取り組みに対して日本企業は優秀だ。2022年9月30日時点で、TCFDに取り組む企業は世界3818機関のうちの1061機関が日本で世界1位、SBTへの取り組みでも1803社中の277社でイギリスに次いで世界2位、RE100も384社中73社でアメリカに次いで世界2位となる。
一方で、米国テクノロジー企業ではペットボトルの利用廃止や社用車の電気自動車移行など、省庁や国際的協定で奨励された取り組み以外の自主的な取り組みが多い中、日本企業ではそうした取り組みが少ないと見る向きもある。
環境への取り組みに関してAppleは極めて先進的で、自社で使用する紙パッケージの紙をオフセットするための森林を買収したり、iPhoneを下取り回収して分解ロボットにかけ鉱山2000トンから取れるのと同じ量のレアアース(希土類)を、1トン分の回収iPhoneから取り出したてリサイクルしたりしている。そもそも、製品を環境負荷の少ない素材で頑丈に作り、長期間最新OSでサポートすることにより排気を抑えたり、電力効率の良い自社開発のプロセッサで消費電力を減らしたりと、極めて包括的な取り組みを行っているのはよく知られている。
そんなAppleが現在、最も声高にうたっているのが部品の調達から製造、在庫管理、配送、販売、リサイクルといったサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現で、同社では2020年来、この目標を掲げている。
こうした姿勢は最近になって他からも注目を集めるようになり、日本の環境省も2022年の夏に入ってサプライチェーン全体の脱炭素化に向けた支援事業を募集した。そして、
- カルビー
- ソフトバンク
- 高砂香料工業
- ワールド
の4社がモデル企業として選ばれたことが発表された。
今回の年間数億台以上出荷する、iPhoneのセンサーを作るSSSが、Appleとの連携を通して同様の取り組みに本腰を入れたことに関しては、環境省やこれら4社のモデル企業にとっても良い刺激となるはずで、今後の両取り組みの進展には注目したいところだ。
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