“無限の柔軟性”を提供するM2搭載「Mac mini」という選択肢の魅力(2/2 ページ)
Appleがエントリー向けのデスクトップPC「Mac mini」をモデルチェンジした。最新のM2やM2 Proチップを選べるなど、プロフェッショナルユースもカバーできる高いポテンシャルを備えた1台だ。発売に先立ち、林信行氏が実機を試した。
デスクトップPCならではの選択肢の広さ
Mac miniとApple Studio Displayを繋いで見た。空間オーディオのサウンドも、映画も映画館に迫る映像と音で楽しめるし、ビデオ会議ではセンターフレームを使うこともできる。周辺機器を純正品で固めれば、価格は高くなるがiMacやMacBook Proに負けない最上のApple体験を得られる。iPadを接続して、Apple Pencil搭載の液晶タブレット代わりにすることも可能だ。こういった周辺機器は3~4年後、M4やM5を搭載したMac miniに買い替えても使い続けられる可能性が高い
つい最近、PCを触り始めた人はあまりピンとこないかもしれないが、20年ほど前まではパソコンユーザーのほとんどはデスクトップPCを使っていた。まだまだノートPCの開発に必要な小型化の技術がコスト高で、デスクトップPCの方が性能もよく、スペックに対して割安感があったからだ。
コンシューマー向けでは早くからノートPCの比率が増えていたが、法人向けでも徐々にノートPCの比率が高まり、コロナ禍になってノートPCの普及が一気に加速した。
しかし、そのような時代になっても、改めてMac miniがデスクトップPCならではの良さを教えてくれる。Mac miniは、Apple製品としてはかなり異質で、スティーブ・ジョブズ氏も2005年に最初のMac miniを発表して以後、しばらくはこの製品を「遊び(Hobby)」で作っていると語っていた。
Appleは自社製品の品質について非常にこだわりがある会社で、iPhone/iPad/Macのどの製品を買っても、画面上の色の再現性にしてもスピーカーからの音の再現性にしても、常に一定以上の水準を満たしている。よく、Apple製品は「高い」と言われるのは、その水準を下回る形では製品を作らないからだ。
しかし、Mac miniだけは例外で、内蔵しているモノラルのスピーカーは決して音が良いとは言えず、品質の低いディスプレイを接続すればMacらしからぬ色味での表示になることもある。安価なキーボードやマウスを接続して、およそMacとは思えない入力のしづらさや、操作のしづらさを体験することもあるだろう。
そういう部分も含めて、(Mac mini本体を除けば)まるでWindowsの自作PCのように自己責任で幅広い選択肢から選べるのだ。少しでも出費を節約したい人ならば、ディスプレイを買わずにHDMI出力を使ってTVやプロジェクターに繋いで使うこともできる。
だからといって、Appleがこの製品に関しては品質管理をしていないわけではなく、純正のディスプレイ、純正のキーボードやマウス、トラックパッドを併用すれば、ちゃんとAppleらしい体験を楽しむこともできる。
別売のApple Studio Displayを接続すれば、空間オーディオの音を楽しんだり、ビデオ会議中に動き回るユーザーを常に画面の中央に収めるセンターフレーム機能も利用できたりする。
Touch ID用の指紋センサーを内蔵したMagic Keyboardを用意すれば、指紋認証でロック画面解除やアプリの購入を承認できるし、Magic Trackpadを使えば、ただカーソルを動かしてクリックするだけでなく、2本指/3本指ジェスチャーで画面を左右にスワイプしたり、Mission ControlやLaunchpadといった使い勝手を向上させる機能を呼び出したりと、MacBook同様の快適な操作性を体験できる。
iMacやMacBookシリーズのような、一体型製品がApple体験の王道だとしたら、キーボードやディスプレイを選べるデスクトップモデルは周辺機器を純正で固めた王道体験から、一部または全部を他の製品に置き換えることで、王道から外れたカスタム体験を選ぶことも可能だ。
それは、もしかしたらApple製品よりもさらに解像度が高く、高画質なディスプレイかもしれないし、大きさや操作方法などが身体の特徴に合った入力機器かもしれない。あるいはコスト削減で、とりあえず動けばいいと家に余っている古いデバイスかもしれないし、あえてディスプレイではなく、プロジェクターといったちょっと変わった構成かもしれない。
Mac miniをAnker製の携帯型プロジェクターや、Microsoft製の折りたたみ式キーボード「Universal Foldable Keyboard」、引き出しの奥に余っていた古い有線マウスと組み合わせてみた。こんなバラバラの組み合わせでもちゃんと利用できるのがMac miniの魅力かもしれない
この膨大な使用構成の柔軟性、そして最安値モデルからMac Studioに迫る性能のモデルまで選べる振れ幅の広さ、これこそが今、改めて注目したくなるMac miniの魅力だ。
一度、このMac miniと一緒にディスプレイやキーボードなどもそろえてしまえば、今後も最新アプリの要求にプロセッサが応えられなくなる3~5年くらいのサイクルごとにMac mini本体だけを買い替え、同じキーボードやディスプレイで使い続けるというスタイルもありだろう。
ちなみに、ノートPCしか使ったことのない人には、また別の魅力を語っておくべきかもしれない。そう、外付けの大型ディスプレイは、ノートPCのディスプレイと比べて画面が高い位置にあるため、作業中に首を下に向け続ける必要がなくなる。
今、もしあなたが慢性の肩や首の凝りに悩まされているとしたら、その原因は1日中、スマートフォンやノートPCの画面を見下ろして下ばかり見ていたことが結びついている可能性がそれなりにある。
ノートPC内蔵の画面ではなく、外付けのディスプレイを利用することは、こういった身体への負担を軽減し、仕事の効率を上げる側面がある。そんなデスクトップ作業への切り替えを試してみたい人にとっても、手頃な価格で導入できるMac miniは魅力的な選択肢の1つになるはずだ。
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