「Radeon PRO W7000シリーズ」登場 RDNA 3ベースで「DisplayPort 2.1」で8K/60fpsを無圧縮伝送可能
AMDのプロフェッショナル向けグラフィックスカード「Radeon PRO」が、最新のRDNA 3アーキテクチャを採用して刷新される。今回登場するのは特にハイエンドな用途に向けた製品で、コンシューマー向けの「Radeon RX」と同様にコストパフォーマンスやワットパフォーマンスの良さを訴求している。
AMDは4月13日(米国太平洋時間)、プロフェッショナル向けグラフィックスカード「Radeon PRO W7000シリーズ」を発表した。第1弾の製品は「Radeon PRO W7800」と「Radeon PRO W7900」の2製品で、米国における想定販売価格はW7800が2499ドル(約33万2900円)、W7900が3999ドル(約53万2700円)となる。発売予定時期は2023年第2四半期(4~6月)を予定しており、2023年下期(7~12月)には両カードを組み込んだPC/ワークステーションも出荷される予定だ。
Radeon PRO W7000シリーズの概要
Radeon PRO W7000シリーズは、コンシューマー向けGPUの「Radeon RX 7000」シリーズと同様に「RDNA 3アーキテクチャ」のGPUコアを採用している。
RDNA 3アーキテクチャでは複数のダイを組み合わせてGPUチップを構成する「チップレット構造」としているが、AMDによると同シリーズは「世界初のチップレット構造のプロ向けGPU」だという。GPUとしての中核部分である「GCD(Graphics Compute Die)」は5nmプロセス、キャッシュメモリを備える「MCD(Memory Cache Die)」は6nmプロセスで製造されている。
GCD内のCU(演算ユニット)は新設計で、各種設計業務(CADなど)、デザインやメディア作成(動画/静止画編集)に最適化されているという。AI(人工知能)アクセラレーターはCU1基当たり2基搭載されており、機械学習ベースのAIの処理パフォーマンスが先代から最大2.7倍向上している。リアルタイムレイトレーシング(RT)性能も、最大で1.5倍に引き上げられた。
今回登場する2モデルでは、メディアエンジンが2基構成となっており、従来よりも動画のデコード/エンコード性能が大きく改善している。8K(7680×4320ピクセル)/60fps動画をAV1コーデックでエンコードすることも可能だ。AIによるエンコードの最適化にも対応している。
Radeon PRO W7000シリーズは、プロ向けグラフィックスカードとしては初めて「DisplayPort 2.1」による映像出力にも対応している。最大伝送速度(理論値)は77.4Gbpsで、8K/60Hzの映像を“無圧縮”で伝送可能だ。DSC(Display Stream Compression:データ圧縮)を利用する場合は8K/120Hzあるいは12K(1万1520×6480ピクセル)/60Hzの映像伝送も可能だ。
主な仕様
今回発表された2製品の主な仕様は以下の通りだ。W7800は「重いワークロード」、W7900は「究極のワークロード」向けという位置付けである。
- Radeon PRO W7800
- CU:70基
- ピーク演算能力(FP32):45TFLOPS
- グラフィックスメモリ:32GB(GDDR6/ECC機能付き/384bit幅)
- 映像出力:DisplayPort×4(うち1基はMiniサイズ)
- 消費電力(TBP):260W
- Radeon PRO W7900
- CU:96基
- ピーク演算能力(FP32):61TFLOPS
- グラフィックスメモリ:48GB(GDDR6/ECC機能付き/384bit幅)
- 映像出力:DisplayPort×4(うち1基はMiniサイズ)
- 消費電力(TBP):295W
「ワッパ」と「コスパ」で勝負!
AMDでは、Radeon PRO W7800は「NVIDIA RTX A5500」、Radeon PRO W7900は「NVIDIA RTX A6000」と「NVIDIA RTX 6000 Ada」をライバル製品として想定している。
絶対的な性能だけを見ると、Radeon PRO W7000シリーズはNVIDIAのプロ向けグラフィックスカードに勝てない場面も少なくない。しかし、ワットパフォーマンス(消費電力当たりの性能)やコストパフォーマンス(費用対効果)において優れている場面も多い。
用途次第だが、Radeon PRO W7000シリーズを使えば効率の良いシステムを構築できそうである。
「SPECviewpref 2020」で幾何平均演算を行った結果。RTX A6000を基準とすると、W7900はもちろん、W7800もRTX A6000以上の速度で演算可能だ。絶対性能ではさすがにRTX 6000 Adaがトップだが、半額未満のW7900との性能差はわずか7%である
AMDではグラフィックスドライバーの改善を継続的に続けている。先代の「Radeon PRO W6800」も3四半期で39%の性能改善を果たしているが、W7900はそれを軽々と上回るパフォーマンスを発揮している
関連記事
日常作業や2D CADを快適に――AMDが1スロットサイズのGPU「Radeon PRO W6400」を2022年第1四半期に投入 229ドルから
AMDが、コンパクトなプロフェッショナル向けGPUの新製品を投入する。競合の「NVIDIA T600」とほぼ同じ価格ながら、理論上の処理性能が「NVIDIA T1000」並みというお買い得さをアピールしている。AppleがMac Pro向けに「Radeon Pro W6000Xシリーズ」搭載グラフィックスカードを発売 本体購入時に搭載も可能
AppleのMac ProにGPU(グラフィックス)の選択肢が追加され、よりパフォーマンスが向上したRDNA 2アーキテクチャベースの「Radeon Pro W6000Xシリーズ」を搭載するMPX Moduleを搭載できるようになった。モジュールの単品販売も行われる。AMD、RDNA2アーキテクチャを採用したWS向けGPU「Radeon PRO W6000」シリーズを発表
米AMDは、プロフェッショナル向けのハイエンドGPU「Radeon PRO W6000」シリーズの発表を行った。AMDが新GPU「Radeon RX 7000シリーズ」を正式発表 米国では12月13日発売(899ドルから)
AMDが新型GPU「Radeon RX 7000シリーズ」を正式に発表した。まずはハイエンド向け製品を2種類投入することになるが、GPUとしては初めて「チップレット設計」を取り入れた他、ハードウェアベースのAV1エンコーダー/デコーダーを搭載するなどゲーム配信を意識した機能強化も図られている。プロ向けGPUをさらに強化 「NVIDIA RTX Ada」にモバイル/コンパクトデスクトップ向け登場
NVIDIAのワークステーション向けGPU「NVIDIA RTX Adaシリーズ」に、モバイルワークステーション向け製品とコンパクトデスクトップワークステーション向け製品(グラフィックスカード)が登場する。旧世代アーキテクチャの製品も併売することで、ラインアップ全体の若返りが図られている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.