日常作業や2D CADを快適に――AMDが1スロットサイズのGPU「Radeon PRO W6400」を2022年第1四半期に投入 229ドルから:モバイル向け製品も同時発表
AMDが、コンパクトなプロフェッショナル向けGPUの新製品を投入する。競合の「NVIDIA T600」とほぼ同じ価格ながら、理論上の処理性能が「NVIDIA T1000」並みというお買い得さをアピールしている。
AMDは1月19日(米国太平洋時間)、デスクトップPC向けプロフェッショナルGPU「Radeon PRO W6400」を発表した。同GPUを搭載するグラフィックスカードは2022年第1四半期(1〜3月)の発売を予定しており、米国における想定販売価格は229ドル(約2万6200円)からとなる。
合わせて同社は、ノートPC向けプロフェッショナルGPU「Radeon PRO W6300M」「Radeon PRO W6500M」も発表した。両GPUを搭載するノートPCは2022年後半にパートナー企業を通して発売される予定だ。
Radeon PRO W6400の概要
Radeon PRO W6400は、RDNA 2アーキテクチャを採用する「Radeon PRO W6000シリーズ」のエントリーモデルとして投入される。ただし、GPUダイのプロセスルール(半導体ウエハーの最小加工寸法)は、同時に発表されたコンシューマー向けGPUである「Radeon RX 6500 XT」「Radeon RX 6400」と同様に7nmから6nmに微細化されている。
日常のオフィスワークで利用するアプリは、意外とGPUパワーを使うものが多い。デュアルディスプレイ環境にするとさらにGPUへの負荷が高まり、内蔵GPUだけではパフォーマンス的に不満を抱えることも少なくない。Radeon PRO W6400は、そのような不満への「回答」としてオフィスワーク、出版編集作業や2D CADでの利用を想定して開発されたGPUだという。
4K解像度の画面を1つ出力した際の「Microsoft Office 365」を構成するアプリの作業負荷テストの結果。PowerPointでGPUの負荷が高いことは何となく想像が付くが、他のアプリでもGPU負荷が高まるシーンが意外と見受けられる
Radeon PRO W6400の主な仕様は以下の通りとなる。
- 演算ユニット(CU)/レイアクセラレーター:12基
- FP16(半精度浮動小数点数)演算性能:最大7.07兆FLOPS
- FP32(単精度浮動小数点数)演算性能:最大3.54兆FLOPS
- グラフィックスメモリ:4GB(GDDR6)
- Infinity Cache:16MB
- メモリバス幅:64bit
- 接続バス:PCI Express 4.0 x4(PCI Express 3.0にも対応)
- 映像出力端子:DisplayPort 1.4×2(圧縮映像伝送と音声出力にも対応)
- 最大消費電力:50W(電源は350W以上を推奨)
最近のグラフィックスカードは2スロット以上を専有し、GPU補助電源が必要なものが多いが、Radeon PRO W6400は1スロットかつGPU補助電源なしで搭載できることが特徴である。RDNA 2アーキテクチャをベースとしているため、DirectX 12 UltimateやVulkan 1.2といった最新グラフィックスAPIにもしっかりと対応する。プロ用レンダリングツールでよく使われるOpenGL 4.2やOpenCL 2.2も利用可能だ。
「プロフェッショナルは2画面出力をよく使う」ということから、DisplayPort 1.4出力端子はフルサイズのものを2つ備えている。2画面同時出力の場合は最大5K(5120×2880ピクセル)まで、1画面のみの場合は最大8K(7680×4320ピクセル)まで「リフレッシュレート60Hz、HDR(ハイダイナミックレンジ)出力」を維持できる
カードは69(幅)×168(奥行き)mmのハーフハイトサイズで、冷却ファンの厚みも抑えられているのでシングルスロットかつGPU補助電源なしで搭載できる。ブラケットを交換することで、ロープロファイルのスロットのみ備えるスリムデスクトップPCにも対応可能だ
先代よりも着実に進化した高い性能を実現
Radeon PRO W6400は、2019年に登場した「Radeon PRO WX 3200」の後継製品でもある。両者は同じサイズかつ消費電力ながらも、スペックは以下の通り進化している。AMDとしては「Radeon PRO W6400はRadeon Pro WX 3200からの置き換えにもピッタリ」だという。
- CU:10基→12基(1.2倍)
- ストリーミングプロセッサ数:640基→768基(1.2倍)
- グラフィックスメモリの帯域幅(最大値):毎秒96GB→毎秒128GB(約1.3倍)
- FP32演算性能:1.66兆FLOPS→3.54兆FLOPS(約2.1倍)
NVIDIAのプロフェッショナル向けGPU「NVIDIA T600」「NVIDIA T1000」との比較。Radeon PRO W6400はT600並みの価格でT1000を超える演算パフォーマンスを発揮できるという
Radeon PRO W6400の理論性能はRadeon PRO WX 3200やNVIDIA T600よりも良好なのは確かなのだが、実際のパフォーマンスはどうなのか。AMDがXeon W-2125(4GHz〜4.5GHz、4コア8スレッド)を搭載するワークステーションを使って行ったテスト(いずれも4K画面×1で実施)によると、オフィスワークでよく使う機能については、一部のテスト項目を除いてRadeon PRO W6400は両GPUとほぼ同じか、少し高いパフォーマンスを発揮したそうだ。
「PCMark 10」を使ってRadeon PRO WX 3200と4K表示時の性能比較をした結果。Spreadsheets(表計算)のスコアが下がっていることが気になる所だが、それ以外のパフォーマンスはほぼ同一だったという
しかし、CADアプリやグラフィックスアプリを使うと、Radeon PRO W6400の優位性が少し増すようである。
画像処理性能をRadeon PRO WX 3200と比べた場合、「Adobe Photoshop」でのテストはほぼ同等となったが、PCMark10のPhoto Editingテストでは有意なパフォーマンス改善が確認できた
NVIDIA T600と比較すると、やはりPCMark10のPhoto Editingテストでは有意なパフォーマンス改善が確認できたという。Photoshopのテストでも、Radeon PRO WX 3200との比較よりもスコア差が少し大きく出たようだ
Radeon PRO W6300M/W6500Mの概要
Radeon PRO W6300MとRadeon PRO W6500Mは、先行してリリースされた「Radeon PRO W6600M」の下位製品となる。W6300Mはエントリークラス、Radeon PRO W6500Mはミドルクラスを担うという。主なスペックは以下の通りだ。
- Radeon PRO W6300M
- 演算ユニット(CU)/レイアクセラレーター:12基
- FP16(半精度浮動小数点数)演算性能:最大6.75兆FLOPS
- FP32(単精度浮動小数点数)演算性能:最大3.37兆FLOPS
- グラフィックスメモリ:2GB(GDDR6)
- Infinity Cache:8MB
- 接続バス:PCI Express 4.0 x4(PCI Express 3.0にも対応)
- 最大消費電力:25W
- Radeon PRO W6500M
- 演算ユニット(CU)/レイアクセラレーター:16基
- FP16(半精度浮動小数点数)演算性能:最大10.61兆FLOPS
- FP32(単精度浮動小数点数)演算性能:最大5.3兆FLOPS
- グラフィックスメモリ:4GB(GDDR6)
- Infinity Cache:16MB
- 接続バス:PCI Express 4.0x 4(PCI Express 3.0にも対応)
- 最大消費電力:35〜50W
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AMD、RDNA2アーキテクチャを採用したWS向けGPU「Radeon PRO W6000」シリーズを発表
米AMDは、プロフェッショナル向けのハイエンドGPU「Radeon PRO W6000」シリーズの発表を行った。
AMD、新グラフィックスカード「AMD Radeon PRO W6600」を発表
AMDは、RDNA2アーキテクチャーを採用したプロフェッショナル向けの新グラフィックスカード「AMD Radeon PRO W6600」を発表した。
AppleがMac Pro向けに「Radeon Pro W6000Xシリーズ」搭載グラフィックスカードを発売 本体購入時に搭載も可能
AppleのMac ProにGPU(グラフィックス)の選択肢が追加され、よりパフォーマンスが向上したRDNA 2アーキテクチャベースの「Radeon Pro W6000Xシリーズ」を搭載するMPX Moduleを搭載できるようになった。モジュールの単品販売も行われる。
NVIDIAがプロ向けGPU「RTX A4000」「RTX A5000」を発表 モバイル向け製品も用意
NVIDIAが、プロフェッショナル向けGPUの新製品を発表した。デスクトップワークステーション/データセンター向け製品には下位製品が追加される一方、モバイルワークステーション向けは上位製品のアーキテクチャをAmpereに移行する。
プロ向けGPUもAmpereアーキテクチャを採用! 「NVIDIA RTX A6000」「NVIDIA A40」登場
コンシューマー向けの「GeForce RTX 30シリーズ」に続き、NVIDIAのプロフェッショナル向けGPUもAmpereアーキテクチャに移行する。ただし、従来とは異なり「Quadro(クアドロ)」ブランドは冠さずに展開される。【訂正】












