林信行が見てきた「Twitter」の美学と信念 この十数年を振り返って(1/4 ページ)
Tiwtterが大きく変わる転換点にある。サービスを当初から追い続け、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏らとも言葉を交わしている林信行氏が、この十数年を振り返る。
2006年にスタートしたTwitterは、iPodやiPhoneと並ぶ“シンプルでよくできたデザイン”という第一印象にほれて、伸びると直感したサービスだった。
サービスの利用を始めた直後に、多くのシリコンバレー企業に出入りする外村仁さんの案内で、日本人ジャーナリストとして初めてTwitter本社を訪れる機会があった。しかも、その2週間後にはGoogle創業者のラリー・ペイジらも参加した米O'Reillyのイベントで、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏や当時CEOだったエヴァン・ウィリアムズ氏らと一緒になった。
彼らと話していく中で、「あえて作り込みすぎない」というミニマルなデザインの良さを彼らが理解しており、美学と信念を持ってサービスを設計していることを知った。ますますTwitterの将来に希望を感じた。
ただ、Twitterはずっとビジネスとしてはうまくいっていなかった。コロナ禍にサービスの美徳や歴史についての理解も尊敬もないイーロン・マスク氏が、まるで愛用者を冒涜するようにサービスをおもちゃにしている状況には不快さを感じていた。
ついにはサービス名やロゴまで変えると言い出した7月22日(現地時間)の状況を受けて、15年間の多くの思い出が詰まったサービスが、その姿を変えてしまう前に追悼の意味を込めて何かを書かずにはいられなかった。
もともと「10分遺言」というサービスを使ってTwitter最後の10分間をイメージした文章を書けないかと検討していたため、この言葉が頭に残って「Twitter遺言」のハッシュタグでTwitterやFacebookに投稿した。本来は「Twitter追悼」というハッシュタグを使うべきだったかもしれないが──。
そんなとき、PC USER編集部からツイートの内容を記事として再掲載できないかとの依頼が来たので、改めて前書きや補足を加えて掲載してもらうことにした。
ミニブログとマイクロブログ
Twitterを使い始めたのは2007年4月。できることは限られているが、それだけに明快なサービスだった。まるで音楽再生機能しかなかったが、後に大成功した初代iPodのような力強さを感じた。
「アルファブロガーを魅了するミニブログ」と題して、ほぼ同時期に注目を集めた「Tumblr」(タンブラー)とあわせてTwitterの紹介記事をアスキーで書いた。記事は金曜日に掲載されたが、週明けには自身のTwitterアカウントのフォロワーが100人を超えていた。
アスキーに記事を掲載した後に「マイクロブログ」と書けば良かったと後悔したが、“ミニブログ”という変な言葉を使ったおかげで、この言葉が日経BP系メディアをはじめ、他の多くの媒体でも使われるようになった。TVでもミニブログと紹介されるなど、自分の記事の影響が可視化して知ることができたのは良い思い出だ。
シンプルなサイト構造とスッキリした画面が分かりやすく、文字だらけで汚くならない点が気に入った。Tumblrの利用は定着しなかったが、Twitterは使い続けた。
メンションやRT(リツイート)、ハッシュタグといった、ユーザー発祥の使い方で人気があったものに、ちゃんと目配りして正式な機能として取り入れる。しかし、決してやりすぎない──。そんな経営者のスタイルにセンスを感じた頃には、これはかなり大きな世の中の基盤になることを確信した。
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