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約250台のカメラでデジタルツイン構築 人とロボットが協調――累計4000万台超のPCを作り続けてきた「島根富士通」の生産ラインが進化中(3/4 ページ)

「LIFEBOOK」「ESPRIMO」「LOOX」ブランドで知られる富士通クライアントコンピューティング(FCCL)のPCの多くは、島根県出雲市にある「島根富士通」という子会社で生産されている。ここしばらくはノートPCとタブレットPCの生産をメインに据えてきたが、最近はデスクトップPCの生産やPCの修理も手掛けるようになった。どのようにPCが作られていくのか、写真と共にチェックしてみよう。

ノートPC組み立てライン

 ノートPCの基板は、完成すると「ノートPC組み立てライン」へと運ばれる。このラインは20本が稼働しており、近くには「部品保管エリア」も用意されている。各ラインは異なる製品が流れてくることもある「混流生産」だが、一部製品を対象に、1人の作業員が複数の工程をこなす「セル生産方式」の考え方も取り入れている。

 このラインは随時改善が行われている。常に新たな装置も導入されており、近いうちにヒートシンクの取り付け作業などを自動的に行う装置が導入される予定だ。


ノートPCの組み立てラインの様子。最大20ラインでの生産に対応可能だ

ノートPCの部品保管エリアでは、デジタルピッキングシステムが導入されている

ノートPC組み立てラインの先頭部

組み立てラインに投入される

軽量さが特徴のモバイルPC「LIFEBOOK UHシリーズ(コンシューマー向け)」「LIFEBOOK Uシリーズ(ビジネス向け)」専用の自動ネジ締め機。最新の世界最軽量モデルでは、キーボードの裏側に70本のネジを使用しているという

この自動ネジ止め機は、最新の組み立てラインでは、ラインの背後に設置されている

 ノートPC組み立てラインでは、LIFEBOOKのようなノートPCはもちろん、FMV LOOXのようなタブレットPCの組み立ても行う。

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 FMV LOOXを組み立てる様子を写真と共にチェックしていこう。


FMV LOOXを組み立てるラインの様子。作業台に基板とケース(バッテリー据え付け済み)が置かれている

マザーボードにシールを貼り付けた後で……

ケースにはめ込む。合わせて細かな内部部品も取り付けていく

マザーボードの取り付け時は、専用の治具を使うことでネジ止め順序を間違えないようにしているという

細かい配線も慣れた手つきで取り付けていく

配線が終わったところ

続けて有機ELディスプレイユニットを取り出して……

裏側にシールを貼り付ける

ヒートシンク(ヒートスプレッダー)をネジ止めする際も、専用の治具を用いる

部品の組付けが完了したディスプレイユニットとケース

ディスプレイユニットとケースを結線したら……

ディスプレイユニットをひっくり返して、ケースにはめ込む

ディスプレイユニットは、加圧器を使ってさらにしっかりとはめ込む。こうすることで、耐水性が高まる

組み立ての完了後は、試験プログラムをインストールして、各種機能が正常に動作するかチェックしていく

こうして、FMV LOOXは完成する(キーボードとペンは別売)

 続けて、法人向けの「LIFEBOOK U9シリーズ」を組み立てる様子を見ていこう。


こちらは、LIFEBOOK U9シリーズを組み立てているラインである

LIFEBOOK U9シリーズの部品の組み付けと配線を終えたところ

スピーカーとマイクのテストは、「VST(Visual Sound Testor)」という装置で自動的に行われる

キーボード入力のテストも自動化されている

こちらは「AVIS」と呼ばれる外観テスト装置。カメラとロボットアームを使って、24部品/38カ所の検査を自動で行える。こちらも、島根富士通が自社開発したものだ

テストとOSのインストールを行うブース。ソフトウェアはLANケーブルを介して伝送される

PCに貼付されるシール。このような形で見られるのも、工場ならではだ

最終段階では、人による目視検査も行われる

検査が終わったPCは梱包(こんぽう)工程に回される

完成したLIFEBOOK U9シリーズ

 先述の通り、島根富士通の生産ラインは随時改善が行われている。この組み立てラインでは、約250台のカメラが100分の1秒単位でビデオ分析を行っているという。なお、2023年度中にはカメラの台数を約400台まで増やし、さらに精緻な分析をできるようにするそうだ。


組み立てラインでは100分の1単位でのビデオ分析を行い、作業改善につなげている

組み立てラインに設置されているカメラ。現在の約250台を、2023年度中には約400台に増やすという

画像の解析には、富士通の「COLMINA デジタル生産準備 VPS GP4」を活用。デジタルツインによる製造現場構築の事前検証を行っている

 続いて、デスクトップPCの組み立てラインを見てみよう。

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