Intel Ignite 2023で優勝! AV1やH.266を超える圧縮率を実現するDeep Renderの「AIベースの動画圧縮技術」って何?:Intel Ignite 2023(3/4 ページ)
Intelのスタートアップ企業支援プログラム「Intel Ignite」の2023年度プログラムでは、イギリスのDeep Renderが優勝した。同社は「AI技術を使った高圧縮率/高画質な動画コーデック」を開発しており、世界中から注目を集めている。AIベースの動画圧縮コーデックとはどのようなものなのか、話を聞いた。
「NPU」さえあれば使えるDeep Render
Intel Innvoation 2023のDeep Renderブースでは、Deep Render形式で圧縮した動画を、Neural Engile(NPU)を備えるiPhone、同エンジンを備えるM1/M2チップ搭載のMac、そして12月14日(米国太平洋時間)に正式発表される「Core Ultraプロセッサ」を搭載するノートPCでH.264形式の動画と同時再生するデモンストレーションが行われていた。
Deep Render形式の動画のデコード(展開)は、NPUさえ搭載していればスマホでも十分に行えるようだ。
ブースでは、2台のMacBookシリーズを用いて、互いのWebカメラで撮影した映像をリアルタイムにDeep Render形式でエンコード(圧縮)し、互いにデコードするというビデオ(Web)会議を模したデモンストレーションも行われた。このデモでは、30fpsのフルHD(1920×1080ピクセル)映像を1Mbpsでエンコードして送り、同時に相手側から送られてきた同等品質の映像をデコードする、という実践さながらのものだった。
遅延(レイテンシ)は、0.1秒程度で十分に許容範囲だ。Deep Renderの説明によると、この遅延のうち0.04~0.05秒がコーデック処理によるもので、残りがデモ環境のWi-Fiネットワークによるものだという。
この際のプロセッサの消費電力は約13Wだった。エンコードとデコードを同時にソフトウェアで行って程度であれば、まずまずといったところか。
M2チップ搭載のMacBook Airによるビデオ会議のライブデモ。実際に2台のMacBook Airを使い、それぞれのWebカメラからの映像を送り合う内容となっていた。画面の中の女性は、写真奥の向こう側で立っている女性の前に置いてある、もう1台のMacBook Airからの映像だ
Deep Renderコーデックは、主にGeForce RTX 30/40シリーズを搭載するマシンで開発を進めてきたが、GPGPUとして活用できるGPUであれば、メーカーやモデル(アーキテクチャ)を問わず利用できるという。また、スペックによって多少のパフォーマンス差は生じるものの、NPUを含む推論アクセラレーターを統合したCPUでも動くとのことだ。
先述の通り、今回はCore Ultraプロセッサを搭載するノートを使ったデモンストレーションも行われていたが、デコードとエンコードは主にNPUで処理しているとのことだった。
Deep Renderのユー氏は「もし事業が軌道に乗って、Deep Renderの採用事例が増えてくれば、現在はソフトウェアベースのエンコーダー/デコーダーがハードウェア化されて、今のH.264やH.265のように多くのSoC(のメディアエンジンなど)が対応するかもしれない」と、未来の展望を語っていた。
ハードウェアベースのDeep Renderエンコーダー/デコーダーの“搭載事例1号”は、もしかすると今回彼らを優勝者としたIntelかもしれない。
Deep Renderは「圧縮技術の再構築」を掲げて活動している。高画質と高圧縮を両立することで、通信速度の遅い環境でも高画質な映像を楽しめるようにするだけでなく、インターネットの世界を悩ませるトラフィック(総通信量)の削減も目指している
ただ、コーデックとしてのDeep Renderの普及に当たって、課題もある。
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