試して分かった「Apple Vision Pro」の体験価値、可能性、そして課題:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)
予告通り、筆者は「Apple Vision Pro」を手に入れた。手に入れてすぐ試して思ったことを、つらつらとつづってみようと思う。
米ワシントン州シアトル近くの街に住む知人宅で、予約しておいた「Apple Vision Pro」を受け取った。まず2023年6月に体験した試作機と比較しながら、その初日のインプレッションをお伝えしたい。
なお、Apple Vision Proはまだ米国でしか販売されていない。また、商品のバックグラウンドにある技術の詳細について、筆者はAppleのエンドユーザー向けおよび開発者向けのWebサイトに記載されている情報しか把握していない。
あくまでも、この記事は筆者が個人で購入した製品を使った上で執筆したもので、Appleへの取材を実施していないことをご承知いただきたい。
こいつはやっぱり「完全にパーソナルなコンピュータ」
事前に分かっていたことだが、Apple Vision Proは完全にパーソナルなコンピュータだ。いわゆる「パソコン(PC)」という意味ではない。オーナー向けにセミカスタムオーダーで届けられる製品という意味だ。届いた後のセットアップもオーナー個人に向けた“特別なコンピュータ”となるよう調整されている。
既にお伝えしているように、ドイツの光学メーカーであるZEISS(ツァイス)と共同開発された「ZEISS Optical Inserts(光学インサート/レンズ)」もその1つで、ペアリングすることで処方せんに基づくレンズ特性を加味した視野になるよう自動調整される。
筆者は処方せんが必要なPrescriptionタイプのOptical Insertsを購入したが、パッケージを開けると「M.HONDA」という記名されたペアリングコードが封入されていた。これをApple Vision Proのカメラでセットアップ時に読み取ると、レンズ特性に合わせて視野を補正してくれる
全28種類ある「Light Seal(ライトシール)」も、顔や視野に適合するよう調整され、装着時に普段生活している視野に近い感覚を味わえるようになっている。補正レンズを入れるか入れないかだけで、ライトシールのサイズが変更になるほどだ。
Apple Vision ProにはLight Sealのサイズが正しいかどうかをチェックするアプリがダウンロード可能だという。しかし、購入時に割り当てられた「33W」というシールがピッタリだったこともあり、他の機能確認を優先して今のところは試していない。
なお、付属するLight Sealについて「合わないなぁ……」と感じた場合は、購入(または配送日)から14日以内に申し出れば、無料で交換可能だ。
視線入力も微調整を行うと、小さなドットでさえ、ほとんど意識を集中させることなく見つめるだけで選べるようになる。なお、瞳孔間の距離計測は自動で行われる。
ここまで視覚に対するパーソナルなフィッティングを行う仕組みを確立するだけでも、今後類似する製品をリリースするであろうライバルにとって、大きな“ハードル”になるだろう。この手の製品を実際に使ってみると、顔へのフィット感や現実視野との一致度が、製品全体の体験レベルを感じる上でとても重要なファクターになっているのが分かるからだ。
見方を変えると、このことはApple Vision Proが「お試し」(一時的な体験)をしづらい製品であることも意味している。一応、Apple Vision Proには少しだけ貸し出して買ってもらうための「ゲストモード」があるが、当然ながらAppleが用意したカスタムオーダーに近いフィーリングを得ることはできない。
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