トロンボーン奏者の中川英二郎氏が語る音楽/起源/進化、そしてテクノロジー:「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」と「Apple Music Classical」の関係(2/4 ページ)
Apple 丸の内のイベントで、トロンボーン奏者の中川英二郎氏が生演奏や対談を行った。自身も出場するクラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」やAppleとの関係を、林信行氏が聞いた。
音楽は常にテクノロジーと共に進化を続けている
クラシックとジャズ、2つのジャンルを行ったり来たりする中川氏だが、最もアナログな楽器の1つであるトロンボーンと、最新テクノロジーを同時に愛する人物でもある。
新しいもの好きでiPhoneも毎年買い替え、「これからAIが広まって、世の中が大きく変わる瞬間を見極めるのも楽しみにしている」と語る。
プライベートでも常に音楽を聞く機会の多い中川氏だが、Apple MusicやApple Music Classicalは、自身がさまざまな演奏を聞き比べるのに使うだけでなく、子供たちとの交流にも活用しているそうだ。
現在、2人の子供のために家や車の中で音楽を聞かせるべくプレイリストをいくつも作っているという。子供たちが小さい頃は、童謡などを入れたプレイリストを作って聞かせていたが、その後、だんだんアニメの曲などが増えていった。最近は子供たちが音楽会でカルメンを演奏することになり、子供たちもそのメロディーを口ずさんだりするようになったことがあったので、「これがカルメンだよ」とApple Musicでいくつかの演奏を聞かせたと話す。
有名な曲だから、いろいろなジャンルのさまざまな人が演奏している。子供たちも「これが面白い」「いや、これが面白い」「こっちは速い」「こっちは遅い」といった具合で楽しみ始めた。
こうやってプレイリストを作り続けていると、しばらくしてから「あー、数年前はこんなのを聞いていたんだ」といった再発見も多いのだと振り返る。
こうしたテクノロジーの普及によって「音楽の間口は広くなっています」と中川氏。Apple Musicのようなサブスクリプション型音楽配信サービスを利用していれば「好きな音楽をどんどん耳にするばかりか、知らない音楽もどんどんレコメンドしてくれます。自分が好きな音楽のルーツなども、かなりたどりやすくなっていると思います」と指摘する。
そんな中川氏だが、当然ながら仕事においてもテクノロジーのことは常に意識してきた。
彼がプロとして活動をし始めたのは、まだギリギリ、アナログで録音が行われていた時代。オープンリールのテープにまだ24チャンネルしか録音ができなかったものが、しばらくするとソニーからデジタル・マルチトラック・レコーダー(PCM-3348)が出てきて、2分の1インチ幅(12.7mm)のテープに48チャンネルもの録音できるようになった。
「音のクオリティーなど、デジタル化による弊害みたいなものはもちろんあります。それに拒絶反応を示す人もいたし、新しいものをどんどん使っていこうという人もいました」と当時を振り返る。だが中川氏は、常に新しいものを受け入れて使っていく側だったという。
オーディオの作成/録音/編集/ミックスを行うソフト「Pro Tools」に関しても同様で、「2000年代前半は日本では受け入れられていなかったけれど、ニューヨークのスタジオとかも当たり前に入り始めていたし、絶対に入ってくるよね」と思っていたら、案の定そうなっていく様子を楽しみながら見届けてきた。
同じ家族でも兄(作曲家/編曲家の中川幸太郎氏)は全く逆の性格で、自分が新しい製品の初期不良などと苦闘している姿を横で笑いながら見届け、しばらく時間が経ってそれでも使い続けたものだけを後から使い始めるというタイプだという。
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