「Apple Vision Pro」を真っ先に体験した林信行氏が改めて考える「空間コンピュータ」の現在地(1/5 ページ)
日本人で初めて「Apple Vision Pro」を体験した林信行氏が、今改めて同機の立ち位置を冷静に振り返った。
「初の空間コンピュータ」としてAppleが発表した「Vision Pro」の国内発売から2カ月が経過した。発売時にはTVもソーシャルメディアも大騒ぎとなったが、最近、その話題もずいぶん落ち着いてきた感がある。
果たしてApple Vision Proの魅力はその程度なのだろうか。Appleの社員以外の日本人として私が最初にApple Vision Proを体験してから14カ月がたった今、改めてApple Vision Proについて考察し、その現在地を検証したいと思う。
今買える3~5年後の未来
Apple Vision Proが発表されたのは2023年6月だ。当時、私はAR/VRゴーグルには懐疑的で、できればAppleには出してもらいたくないと思っていた。にも関わらず、日本人でただ1人、1日早い先行体験をする重責を担ってしまった。
14カ月前の2023年6月6日、Apple本社内に3日間だけ建っていた真っ白い建物に案内された。この建物内に呼ばれ、Apple社員以外の日本人では初めてApple Vision Proを体験した。直前までは「日本での発売予定はないから日本のメディアは体験できないのではないか」ともウワサされていた。しかし、「とりあえず6日、まずは林さん1人だけが体験できるみたいです」との連絡を受けた。
結局、他の日本人プレスも翌日には体験することになったが、6日時点で私はそんなことを知らない。もし他の人が体験しなかったら、私への責任は重大だ。
そのため、わずか20分の体験会には全神経を集中して臨んだ。そうやって書いたのが、日本時間の同日21時公開の「『Apple Vision Pro』を先行体験! かぶって分かった上質のデジタル体験」という記事だった。
そして2024年2月、Apple Vision Proの米国での販売が始まり、米国メディアの先行レポート記事に続き、日本の熱心なジャーナリストや開発者もわざわざ渡米していち早く購入、日本語の記事もネットを賑わせた。
その後、しばらくソーシャルメディアは変な場所でApple Vision Proを使う人々の動画で賑わった。だが2カ月もすると、その賑わいは少し落ち着いた。
6月に開催されたWWDC24の直前のアップデートで、突然それまで英語仕様だったApple Vision Proが日本語入力に対応した。WWDC24では6月末には日本でも発売されることが発表されたのに加え、秋にリリース予定の大幅に進化した次期OS「visionOS 2」の詳細が発表された。
数週間後、日本において発売されたことで、ニュースは一時期“Apple Vision Pro一色”になった。しばらくの間は、さまざまなイベントでApple Vision Proがにぎやかし的に使われていた。私は出張や引っ越しが重なり、ネットでニュースを静観するだけだった。
秋のvisionOS 2リリースを控えて穏やかな状態に入った今、このタイミングで改めてApple Vision Proという製品と向き合ってみたいと思う。
正直、この製品の体験のすごさは2023年6月の20分の体験で書いた記事に今でもほとんど全てが凝縮されていると思う。ただ、あの時は記事の掲載を急ぐあまり重要なことを書き忘れた。
それは、現行のApple Vision Proは製品名と価格が示す通り、一般向けの製品ではなく、これを仕事に活用しようとするプロフェッショナル向けの製品であるということだ。
最近、人に「Apple Vision Proはどうか?」と尋ねられたとき、私は「今買える3~5年後の未来」と答えている。
おそらく3年もすれば、今のApple Vision Proでできているのと同じレベルのことが、もっと安い価格と軽い本体で実現できるようになる。現行のApple Vision Proは、その時代に備えて新時代のコンテンツを開発したい人々への先行投資の製品だと思っている。
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