シャープがEVを売りたい理由 CTOに聞く、“シャープらしさ”を取り戻すために今考えていること:SHARP Tech-Day(1/6 ページ)
シャープが、操業111周年を記念して2023年に行ったイベント「SHARP Tech-Day」が、装いも新たに2024年も開催される。本イベントの狙いやこれまでの取り組み、そして未来への挑戦を同社CTOの種谷元隆氏に聞いた。
シャープが、9月17日と18日の2日間、東京・有楽町の「東京国際フォーラム」で技術展示イベント「SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”」(参加費無料/要参加登録)を開催する。
同社専務執行役員 CTO兼ネクストイノベーショングループ長の種谷隆氏は、「独自技術をベースに近未来の価値を提供してきたシャープが、これからの近未来に向けた世界観を、ユーザーや協業パートナーなどのステークホルダーと共有し、共鳴してもらうためのショーケースがSHARP Tech-Dayである」と位置付ける。
SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”の狙いについて、同社の種谷CTOに聞いた。
「Game Changer」の活動を展開するための「Next Innovation」
―― SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”は、2023年に続き2回目の開催となります。テーマには「Next Innovation」を掲げました。この狙いを教えてください。
種谷 2023年のSHARP Tech-Dayでは「Be a Game Changer」をテーマに掲げ、2024年は「Next Innovation」をテーマとしました。ただ、これはGame Changerというテーマをクリアしたから、次に進んだというものではありません。Game Changerという姿勢は、今回のSHARP Tech-Dayでも継続して取り組んでいるものです。
今、社内では日々の議論の中で「それはGame Changerになりうるのか?」といった話がよく出てきます。Game Changerは、シャープが強く意識し続けなくてはならない言葉ですし、それが社内に浸透してきたという手応えはあります。
そして、Game Changerの活動を「点」で終わらせずに「線」として展開するには、Next Innovationという言葉が適していると考えました。
当社は6月から新たな経営体制に移行し、ブランド事業に集中した事業構造を早期に確立することを打ち出しています。既存のブランド事業と新たなイノベーションを融合し、全体をアップグレードしていく取り組みを加速していているところです。
SHARP Tech-Day'24の展示会場は、新たなイノベーションを生み出すユースケースを体感してもらえる場にし、当社が打ち出した近未来に向けた世界観をユーザーや協業パートナーなどのステークホルダーと共有し、共鳴してもらうためのショーケースにしたいですね。
―― 2023年のSHARP Tech-Dayを振り返ると、どんな成果が出ましたか。そして、それは2024年のSHARP Tech-Dayにどうつながっていますか。
種谷 2023年のSHARP Tech-Dayで展示した技術やソリューションは、既にいくつかの商談が始まっていたり、実用化されたりしています。AGV(自動搬送装置)を活用した倉庫ソリューションはもうビジネスにつながっていますし、デバイスは目的や用途が明確な場合が多く、製品への応用は早い段階から進んだものが多いですね。
また、話題を集めた静音技術は、2024年8月に発売したシャープの掃除機に適用していますし、10月以降に発売する製品の中にも2023年展示した技術を採用したものがあります。一方で、お客さまの声を聞いて方向転換すべきだと判断したものもあり、それは出口戦略を大きく変えているなど、成果が着実に出ています。さらに、私から見て最も大きな成果は、技術者のモチベーションが上がったということです。
これまでは完成した製品に対して、お客さまから声をいただくということはあっても、まだ製品になっていない技術の段階で、直接お客さまの声を聞くということはほとんどありませんでした。自分たちのコンセプトや世界観を早い段階で聞いていただき、評価をしてもらい、場合によっては間違いに気が付くということもります。
目指した世界観に共鳴いただくと、世の中に早く出していきたいという気持ちが強くなりますし、今回のTech-Dayに向けても必ず間に合わせるんだという気持ちが出てきています。学会での発表とは異なり、技術者自らがオープンにプレゼンテーションができ、しかもユースケースを元に、どう社会を変えることができるのかといったことを語れる場を持つのは非常に重要なことです。
2023年のSHARP Tech-Dayの経験を経て、技術そのものが生み出す価値や社会に対する影響、未来への価値という大きな視点で、技術者が考えるようになっています。2024年のSHARP Tech-Dayでも、技術者自らが展示ボードの言葉を考えていますが、技術の説明はせずに、技術によって生まれる価値だけを訴求してもらっています。
技術者にとっては苦痛かもしれませんが(笑)、その癖をつけると、日々の開発でも視点や発想が変化していきます。SHARP Tech-Dayの経験は、当社技術者のモチベーションを高めるだけでなく、技術の中身だけにこだわらずにユースケースから生み出す価値を捉える視点へと変化したり、発想を変えたりするきっかけにもなっています。
今回は50以上の展示を行い、そのうち半分が初めて公開するものであり、残り半分が2023年からアップデートしたものですが、パネルだけの展示はほとんどありません。モノが動いたり、直接触れたりして、来場者が価値を感じてもらいやすい展示内容にしています。
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