コラム

周辺機器やアクセサリーありきで購入するPCを決定? メーカー出身ライターの30年に渡るPC遍歴を振り返る私のPC遍歴30年(1/3 ページ)

PC USERの創刊30周年企画で、普段執筆いただいている皆さんに30年のPC関連話をいただくコーナー。今回は複数の連載を抱えている山口さんの番です!

 話は、筆者が就職活動をしていた約30年前に遡る。

 メーカーに絞って就職活動を行っていた筆者だが、後に就職氷河期と呼ばれる時代にぶつかり、内定が出るまで難航を極めた。電気系の大手メーカーは全滅で、最終的に新卒採用を始めたばかりの某PC周辺機器メーカーに滑り込むことができた。

 もっとも不本意だったわけでは全然なく、次に転職した別のメーカーと合わせて十数年にも渡って在籍したくらいなので、居心地もよく、相性も悪くなかったと思う。

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「私のPC遍歴30年」とは?

2024年9月にPC USERは30周年を迎えました。そこで日頃から弊誌で記事を執筆しているライター陣に「私のPC遍歴30年」と題して、自身のPCにまつわる過去を振り返ってもらいます。あなたにとっても「懐かしい」と感じる話題が飛び出すかも?

今回の著者:山口真弘

連載:山口真弘のスマートスピーカー暮らし

連載:モバイルディスプレイの道

 さて、周辺機器メーカーに在籍していたからといってPCを使う機会が豊富にあったわけではなく、入社時点で個人PCが割り当てられているのは役職者のみで、一般従業員のデスク上には電話機と書類トレイがあるだけだった。何せ、Windows 95登場よりも前の時代の話だ。

 そこから数年も経たずにPC1人1台環境が整うのだが、始めのうちはPCを使うことなくPC周辺機器やアクセサリーを売っていたわけで、今考えると恐ろしい。

 そんな筆者は、母が所有していたNECの「PC-9801NOTE SX」(PC-9801NS)を学生時代に少し触れたのが入社時点でほぼ唯一のPC経験で、後は1992年発売のスーパーファミコンの「マリオペイント」でマウスを触っていた程度だった。つまり、筆者のPC経験はGUIになって以降がほぼ全てということになる。

 実のところ、マリオペイントでGUIに触れていたのは経験値としてかなり大きかった。同じような人はたくさんいるのではないだろうか。


本稿執筆中に「Switch 2」での復活が発表された「マリオペイント」とそのマウス(SNS-016)。当時描いたイラストは動画にして保存した記憶がある。探せばどこかにあるだろう

マウスは、言うまでもなくボール式だ。その後10年経たずして、ボールはイメージセンサーに、ポートはUSBになり、さらにホイール搭載が当たり前となった。こういった劇的な進化を、業界の内側から見られたのは幸運だった

周辺機器やアクセサリーに合わせてPC本体を買う

 さて筆者が初めて買ったパソコンは、社会人になって初のボーナスで買った、Appleの「Macintosh Centris 660AV」である。コンポジット端子を搭載していてビデオと接続可能という、今考えてもなかなかブッ飛んだ製品だ。

 当時のMacはまだ漢字Talk(macOSの前身)の時代で、初のネット接続はLocalTalk経由だった。Photoshopは動作こそしたものの、まだレイヤー構造はなし。買ってすぐは、イタチョコシステムのゲームを遊んでいた記憶がある。

 しかし、購入から1カ月するかしないかのうちに阪神・淡路大震災に遭遇し、半壊した自宅から運び出してそのまま会社で使う羽目になった。会社に私用PCを持ち込むのは今だとコンプライアンス的に面倒そうだが、当時はまだルールも曖昧で、サポートの動作検証に供出するなど何かと役立った記憶がある。


キーボードに隠れてしまってほぼ姿が見えないが、筆者が所有していた「Centris 660AV」が写っている唯一の写真。手前にはLogitech(現ロジクール)の、アンモナイト風デザインのトラックボールがある

 ちなみに、当時のディスプレイはCRTが全盛だ。オフィスではその奥行きを生かして、上にキーボードを退避させたり、トレイを置いて書類を乗せたりするのが一般的だった。液晶ディスプレイとなった現在はみられない使い方である。

 この2年後、TV局がオフィスに取材に入った映像が手元に残っているが、今見ると巨大なCRTが醸し出す物理的な圧がものすごい。昨今のオフィスとの最大の違いはこれだろう。もちろんマルチディスプレイの姿は影も形もない。

 そして「Centris 660AV」の次に購入したのが、NECの「PC-9801BX3/U2」である。98FELLOWのBX3といえば分かる人は分かるであろう、PC-98で初めて10万円を切ったことで、当時大いに話題になったモデルだ。PC-98NXが出てくるのはもう少し後の話である。


筆者は記憶がないのだが、この「BX3」もしばらくオフィスで使っていたようで、手元に写真が残っている。周辺機器をおねだりするために持ち込んだのかもしれない

 この「BX3」にしても、その前の「Centris 660AV」にしても、ディスプレイなどがセットになっていない、PC本体だけの製品だ。BX3に至ってはHDDすら内蔵されていないモデルだが、これらを選んだのには理由がある。

 それは当時、メーカー社員の立場を最大限に生かして、社内で不要になった周辺機器やアクセサリーを譲ってもらったり、あるいは取引先経由で他社の周辺機器を割引で入手できたりしたからだ。当時は98CanBeだったり、AppleのPerfomaシリーズだったり、あるいは(やや時期がずれるが)iMac G3だったりと、さまざまなディスプレイと一体型のPCが話題になっていたが、それらを買うより安くついたのである。

 その結果、本来は非対応の周辺機器を強引につなげて使ったり、入手したアクセサリーを有効活用すべく本体を買ったりと、先に周辺機器やアクセサリーありきでやりくりする癖が身についてしまった。

 BX3はその典型で、先にHDDが手元にあり、それを有効活用するために購入を決めたというから順序が逆である。もっとも、これらの経験が現在のライター業で役に立っているので、世の中何が幸い(災い)するか分からない。

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