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PFUの試験設備を歩く 神経網のように張り巡らされる品質の追求と飽くなきこだわり短期集中連載 その4(3/4 ページ)

世界トップシェアの製品を展開中のPFUだが、製品の開発過程ではさまざまな試験設備が利用されているという。

80度から-40度まで変化する恒温槽を使った試験

 3つ目が、恒温槽を使用した試験である。

 80度から-40度まで、1時間サイクルで温度を変化させて、スキャナーの装置そのものや基板の信頼性を確認する。炎天下の中での使用や、航空便で移送する際の温度の低下にも対応できることを確認している。

 また、温度変化によって、基板上の部品の接合に不具合がないか、正しく動作するかといった信頼性も確かめている。

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 恒温槽を利用し、世界中のさまざまな場所でも給紙および紙送りを安定的に行える検査も行っている。これは、実際の利用環境を想定したもので、2つの異なる条件の設備を隣接する場所に配置し、同時に環境試験を実施している。

 1つは気温0度/湿度20%であり、北欧やロシアなどの環境を想定しているという。社員は夏場でも厚手のジャンパーを着用し、防寒用の長靴を履いて試験に臨んでいる。

 もう1つは、気温40度/湿度80%に設定している。中南米や赤道に近い国などを想定しており、社員はTシャツ/短パン/サンダルと共に、汗を拭くためのタオルを首に巻いて試験を行っている。

 どちらの部屋もアームロボットを稼働させる環境には適しておらず、どうしても人が作業を行わなくてはならない。そのため、一定の時間が経過すると部屋から出て室温の中で過ごし、また試験に戻ることになる。

 また、温度と湿度の違いによって紙の性質も変化しており、寒い環境では紙が硬くなって滑りやすくなるが、暑い環境では紙が水分を含んでベタつく感じとなり、それによって紙送りがしにくくなる。同じ紙でも全く違うものとなっており、その変化も考慮しながら試験を行うことができる。

 試験を担当する社員は紙を手作業で供給し、紙送りの状況を確かめる。その作業を繰り返して不具合がなく、正確に紙送りが行われていることを確認している。


恒温槽で基板を試験している様子

恒温槽での試験は-40度まで下げる

恒温槽を使用した給紙/紙送り試験。異なる環境の部屋が2つ並んでいる

温度0度/湿度20%の部屋。夏場でも防寒服で作業を行う

紙送りが正しく行われていることを確認し、紙の供給を繰り返す

同じ紙を使っていても、温度や湿度で紙質は大きく変化する

温度40度/湿度80%の部屋。こちらはTシャツに短パン、サンダルのいでたちだ

湿度が高いため、アッという間にカメラのレンズが曇ってしまった

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