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PFUの試験設備を歩く 神経網のように張り巡らされる品質の追求と飽くなきこだわり短期集中連載 その4(4/4 ページ)

世界トップシェアの製品を展開中のPFUだが、製品の開発過程ではさまざまな試験設備が利用されているという。

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劣悪な環境を作り出してテストを実施

 PFUが行っている試験の中で圧巻といえるのが、塵埃(じんあい)試験だ。

 試験機の中にスキャナーを入れ、2時間に渡って試験用に開発された茶色の塵埃を吹き付ける。

 利用されている現場が工場などの場合には鉄粉が待っていることもあるため、それを含めた素材で実験を行っており、試験条件はかなり厳しいものになっている。

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2時間に渡り、塵埃を吹き付けたスキャナー

設置されている塵埃試験機。社員は防塵服とマスクを着用して作業する

塵埃試験機の中で、ホコリが舞っている様子

 実際、試験を行う社員は、防じん服とマスクを着用し、身体に影響が出ないようにしているというほどの悪条件だ。しかも、扇風機などの空調を使うと塵埃が舞ってしまうので、それも使用できない環境で試験を実施している。

 塵埃を吹き付けた後、実際に稼働させて紙送りが正確にできていること、画像が正しく読み取れていること、動作中に異音がしないことなどを確認する。さらに部品をバラして、どこまで塵埃が入り込んでいるかも確認するという。

 図面上では塵埃が入り込まない設計となっていても、実際に製造してみると、部品のバラツキなどがあり、ホコリが入ったり、読み取った画像にホコリが映ってしまったりということがあるという。

 CAD解析やシミュレーションだけでは見つからない部分を実際の試験で見つけだし、モーターやセンサーなど、全ての部品をばらしながら、そのホコリがどこからどのぐらい入ったのかということも検証し、設計の改良につなげている。

 現在、同社で開発した製品は全てこの試験を実施し、製品出荷後も読み取り部分などの重要な部品を改良した際に同様の試験を行っているそうだ。

 「日本ではここまで劣悪な環境で使用されることはないが、インドを始めとした海外市場では砂ぼこりが舞う環境で利用していることが多く、現場を見ると日本では想定できないような驚く環境でスキャナーを使っている。汚い袋に入った書類がドサっと送られてきて、砂ぼこりが舞う中でスキャンするといった使い方も実際に見た。このような劣悪な環境下でも、安定して稼働することを目指している」(轡田氏)という。

 ここまでの過酷な環境下で試験を行っていることには、正直なところ驚いた。品質に対する同社のこだわりを感じた試験だったといえる。


塵埃試験機からスキャナーを取り出す

外側についたホコリを落とす

スキャナーの内部を開けてみたところ

ローラーを取り外して、まずは簡単にホコリを落とす

この状態で紙送りを行ってみる

しっかりと紙送りができた

さまざまなスキャナーが砂ぼこりまみれになっていた

 PFUでは、この他にも複数の試験設備が導入されている。ネパールの高い山などの低気圧の高地環境でもカメラやセンサーが正しくセンシングでき、安定的な動作を確認するための減圧試験機、陸海空での製品輸送に対応するための本体の振動試験機、箱詰めした状態で本体を落下させる落下試験機などを導入している。

 轡田さんは「スキャナーは光学系の部品があり、ガラスが割れる危険性がある。本体はバラバラになってもガラスは割れないといった構造を採用することで、ユーザーになるべく危険がおよばないようにする工夫も行っている」という。

 さらに、日本/インドネシア/中国といった全ての工場の品質データを本社の品質保証部に集約し、これを分析することで、わずかな異常も見逃さない体制を敷いており、データ解析時に異常となり得る予兆が検出された場合には、工場と連携して原因を追求する体制を敷いているという。

 品質を追求する同社ならではのこだわりは、まさに神経網のように張り巡らされているのだ。

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