エプソンが「氣志團万博2025」で示した“推し活”の新境地 3.5兆円市場へ挑むプリント技術の可能性(1/4 ページ)
千葉県の幕張メッセ国際展示場で開催された「氣志團万博2025」において、エプソン販売が「推し活応援部」として出展し、さまざまなグッズ販売などを行った。
エプソンが進める「推し活」が、また1つ階段を上った。
2025年はスポーツイベント(プロ野球の試合会場)でのコラボ印刷、7月に開催された「推し活EXPO」では、ORANGE RANGEとの異業種コラボなどで推し活グッズをアピールしたが、いずれもテスト段階にとどまっていた。
そして迎えた11月、音楽フェス「氣志團万博2025 ~関東爆音パビリオン~ Powered by EPSON」において、エプソン販売が「推し活応援部」を出店。ブース内で多彩な推し活グッズの販売を行っただけでなく、2026年用の年賀状デザインデータやポップアートカードのデータ配布など、氣志團とガッツリとタッグを組んだ試みが続いている。
当日の模様や氣志團とのコラボが進んだ理由などを同社に聞いた。
推し活の“熱量”を形にするプリント技術
11月15日と16日に、千葉県の幕張メッセ国際展示場で開催された氣志團万博2025では、延べ29のアーティストや芸人が、2つのステージ(YASSAI STAGEとMOSSAI STAGE)に登場した。
その中で、エプソン販売の「推し活応援部」ブースは2つのステージの間に位置する飲食・休憩エリアにあり、多くの人でにぎわっていた。学校を模したブースはかなりのスペースが割かれ、コーナー別に「特攻変身教室」「図工室」「美術室」「印刷室」が割り振られていた。
その多くは有料となるが、レシートプリンタを搭載した「レシート写真機」で写真撮影を行い、印刷された用紙に応援メッセージを書いて掲示板に貼り付ける「校内掲示板」は無料で体験が可能だった。
これまでも推し活を支援する活動を続けてきた同社だが、なぜ氣志團とのコラボを選択したのだろうか。
エプソン販売 マーケティング本部 副本部長の福田雄一郎さんは「さまざまなスタイルのバンドやアーティストが集まり、同時にお子さまからお年寄りまで、幅広い年齢層が参加するフェスのような場で有償のプリントサービスを提供し、ビジネスとしての可能性を探りたかった」と説明する。
推し活に関する調査や研究を行う「推し活総研」によると、日本国内の推し活市場は約3.5兆円規模で、推し活人口は約1400万人に達し、前年比で約250万人増加しているという。
福田さんも「推し活市場は拡大しており、ファンはお金を惜しまない傾向がある。推し活における支出ではグッズ購入が最も多く、当社が持つプリント技術はグッズ制作と親和性が高い。プリンタメーカーは年賀状印刷などの需要減少を受け、新たな道を模索している」とし、「イベント会場でファンの“熱量”をすぐに形にできるグッズを作成したり、印刷できたりするソリューションを提供して、ライブの興奮をそのままグッズとして持ち帰ることが可能だ」とアピールした。
会場には、A4用紙の裏表を使ったパンフレットが用意されていた。エプソンの乾式オフィス製紙機「PaperLab」(ペーパーラボ)で再生した紙を使用しており、会場には回収ボックスが用意され、紙資源の循環実現をアピールしていた
さらに「このようなイベントでの体験をきっかけにして、“家に帰ってもプリントしたい”という顧客のニーズを喚起して、家庭で楽しめるコンテンツの提供を考えている。同時に、QRコードを活用するなど専門知識がなくても簡単に導入できる仕組みを構築しており、このプリントソリューションをパッケージ化して他のイベント業者やスポーツ業界などにも展開することを目指していきたい」と抱負を語った。
実際、推し活応援部特設サイトではフェス後に期間限定で氣志團の年賀状デザインを配信したり、氣志團万博のオリジナルグッズをプリントアウトできたりするPDFデータを提供中だ。
また、推し活応援部ブース来場者(データ数:701件)に聞き取り調査を実施したところ、ブース全体を通じ多数のポジティブな意見が寄せられた一方で、家庭のプリンタで推し活グッズを作成できると知っていた人は全体の24.5%と少なかったそうだ。
逆に今回のブース体験をきっかけにして、自宅のプリンタを使いたい(グッズを制作してみたい)という人が89.5%に上り、推し活とプリントの相性の良さ/手軽さを実感してもらえたと手応えを感じていた。
では、ブースで提供されていたプリントグッズを見ていこう。
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