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VRChat経営陣が来日 “スタンミショック”でユーザー激増からの定着──独特な“3rdプレース”ビジネス化の展望(3/3 ページ)

12月17日に秋葉原でVRChat社主催の公式オフラインイベント「VRChat Japan Business Experience 2025」が開催されました。翌18日にはビジネス/メディア向けのセッションが開かれ、同社のジェレミー・ウィールフェルダー氏(VP of Operations & Legal)、ケイシー・ウィルムズ氏(VP of Product,Design&Production)、そしてVRChat Business Development Japanの北庄司英雄氏によって、VRChatがビジネス領域でどのように存在感を出していけるかについてが語られました。

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マーケットプレース:アイデンティティーの入口と流通を作る

 3Dデータやアバターギミック、ワールド内アイテムなどの売買は、VRChat内の経済活動の基盤になり得ます。クリエイターが収益を得られるクリエイターエコノミーの仕組みも含め、さまざまな形でコンテンツをVRChat内に持ち込む道が開けている、という説明でした。

 ここで提示されたのが「新規ユーザーはVRChatに自分のアイデンティティーを探しに来る」という視点です。例えば、VRChat外部のECサイトであるBOOTHは公開資料で「3Dモデルカテゴリ」の取引規模を継続的に示しており、2024年は取扱高が58億円超だったとされています。

 一方で、外部で購入したアバターや衣装をVRChatで自分のものとして使いこなすには、Unityの理解が必要です。そうしたハードルを下げる導線として、VRChat内マーケットプレースを位置付ける。さらに、そこに見覚えのあるキャラクターやIPが並ぶと、初めてのユーザーでも「まず試してみる」入口になり得る、というわけです。

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広告:ただ露出させるのではなく体験に内包する

 広告についてジェレミー氏は、日本のパートナーが「革新的な没入型の広告キャンペーン」を実践してきた点を評価しました。VRChat内の空間に宣伝文句を並べるのではなく、体験の中にメッセージを埋め込む。イベントやマーケットプレースの設計とも接続しやすく、ここでも「サードプレースの体験価値」を企業が扱える形にする意思が見えます。

 発言を総合すると、VRChatはサードプレースとしての体験価値を企業が投資/運用できる構造へ変換しようとしています。イベントはVRChatアプリを起動してアクセスしてもらうための理由を作り、マーケットプレースはアイデンティティーの入口と流通を作る。広告は体験に内包され、看板以上の没入型キャンペーンへ寄っていく。

 そして日本は、ビジネスパートナーとクリエイターの厚み、企業側の関心の強さを背景に、そのゲームチェンジを進める重要市場であると繰り返し言及されました。

 VRChatは2026年に向けて、イベントとコンテンツを中心に、機能とマネタイズ手段を拡充する方針を示しました。次に問われるのは再現可能な型、すなわち成功モデルがどこまで整うかです。

 企業がサードプレースを扱うために必要な要素をVRChatがどこまでプロダクトと制度の側に引き寄せられるのか。そのアップデートも、ビジネス側の活用像をより具体化していくことになります。

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