過去最高の受注急増と苦渋の全モデル受注停止――マウスコンピューター 軣社長が挑む“脱・メーカーのエゴ”と激動の2026年:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/3 ページ)
PCの価格高騰が止まらない。公式Xへの投稿をきっかけに、創業以来初となる「全モデルの受注一時停止」という決断を下したマウスコンピューター。同社の軣秀樹社長に激動の2025年度を振り返ってもらいながら、今後の価格・生産戦略の展望を聞いた。
マウスコンピューターは、「マウスらしい」と言われるモノ作りに挑んでいる。極論すれば、目指しているのは「そんな商品を出して、いったい何を考えているの?」というPCだ。これを顧客の声を反映することで実現したいと、マウスコンピューター 代表取締役の軣秀樹社長は語る。
そのベースにあるのは、「MOUSE」を頭文字にしたメッセージと、社内に徹底している「ものづくり10」である。軣社長の就任以降、全ての取り組みを、モノ作り起点で考えるという基本姿勢を社内に浸透させているところだ。
その一方で、2025年12月には、同社の公式Xへの投稿をきっかけにした「マウスエフェクト」と呼ばれる動きによって、国内PC市場全体に新たな需要を創出したのは記憶に新しい。
インタビュー前編では、マウスコンピューターの「モノ作り」へのこだわりと、マウスエフェクトの影響、部材価格の高騰を背景にしたPCの値上げなどについて聞いた。
受け身体質からの脱却 新メッセージの「MOUSE」とは?
―― マウスコンピューターにとって、2025年度はどんな1年でしたか。
軣 2025年度は、社長就任から2年目に入りました。1年目は期の途中からバトンを受け取り、とにかく、がむしゃらに突っ走った1年でした。それに対して、2025年度は本当の意味での初年度という気持ちで取り組んできました。
ここ数年は、コロナ禍の影響や、ネガティブな社会環境の変化があったことで、社員の姿勢も受け身にならざるを得なかった部分がありました。しかし、私自身、開発現場に長年携わってきた経験からも、メーカーであるからには常に前向きであり、新たなことに挑戦する姿勢を失ってはいけないと思い続けてきましたし、それを実践する1年にしたいと考えました。
社内外に向けて、「MOUSE」を頭文字とした新たなメッセージを打ち出したのも、そこに理由があります。
―― 「MOUSE」のメッセージについて教えてください。
軣 「M」は、「マウスクオリティ&スピード」です。当社は国内でPCを開発し、国内で生産し、国内でサポートし、国内で修理する体制を敷いており、それによって高い品質と、迅速な対応が可能です。品質向上は終わりがない挑戦ですから、追求し続けていきます。
「O」は「オリジナリティーある製品企画と開発」であり、新たな挑戦を含めて、マウスらしい製品を作り続けていきます。
「U」は、「ユーザビリティー/ユーザーファーストの考えで信頼を獲得」することです。お客さまの声を聞きながら、ユーザビリティーを考えた製品開発を進めていきます。
そして、「S」は、「サステナブル(SDGs)/持続可能な企業体質を構築」することです。2020年から進めている地域振興や、子育て支援などの取り組みを継続的に進める一方、企業体質の強化にも取り組みます。
最後の「E」は、「楽しく(Enjoy)仕事をする、そこから生まれるアイデアを創出」するという意味を込めました。仲間を頼れる企業風土を作り、仕事を楽しんでもらうことで、優れたアイデアが生まれる環境を構築していきます。
MOUSEのメッセージは、社員の間に、かなり浸透してきましたし、パートナーからも「マウスらしさを感じる」といった評価をいただいています。特に「楽しく仕事をする」ということについては、パートナーと一緒に成長するための重要な地盤になると認識し、重視しています。
2026年度にはこれをバージョンアップし、社内外で訴求していくことになります(編集注:インタビューは2025年度に行われました)。
MOUSEの浸透によって、社内には挑戦する風土が少しずつ戻ってきたと思っていますが、「そんな商品を出して一体何を考えているの?」と言われることが、「マウスらしさ」でもありますから(笑)、そう言われるようになるまで挑戦し続けていきます。
―― 「そんな商品を出して、一体何を考えているの?」というのは褒め言葉ですか?(笑)
軣 まぁ、いじられている側面もあるでしょうけれど(笑)、最終的に、そうした製品を出したことに納得していただいたり、製品の売れ行きにつながったり、評価していただけたりすれば、それは褒め言葉だと思っています。
そういった言葉をかけてもらえるPCメーカーは他にはないですからね。ただこれも、開発者が独りよがりで作ったものでは意味がありません。お客さまの声をしっかりと聞いた上で、作り上げたものでなくてはいけません。
一方で、開発プロセスをガチガチに組み上げてしまうと、柔軟な発想でのモノ作りができなくなりますから、その点も気を付けたいですね。お客さまから聞いた話や、気が付いたり、思い付いたりしたことがあれば、開発者がすぐに情報を共有し、検討できる環境を維持します。
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