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理論値以上のゲーミング性能を発揮できる秘密は? MSI Claw 8 EX AI+で知る「Intel Arc G3 Extreme」の実力(4/5 ページ)

IntelがポータブルゲーミングPCに特化したSoC「Intel Arc G3」シリーズをリリースした。このSoC、理論性能だけを見るとライバルに劣るのだが、実際にゲームを遊ぶと性能面で“逆転”することがある。その秘密に、「MSI Claw 8 EX AI+」を通して迫る。

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理論性能で劣るArc G3 Extremeが“逆転”できた理由は?

 GPUのチューニングの方向性が同じなのだとしたら、「なぜArc G3 Extreme(Arc B300シリーズ)の方が実パフォーマンスに優れるのか?」という疑問も沸いてくる。

 以前、このことをIntelのGPU担当関係者に聞いたところ、「GPU内部のデータパスの最適化と、GPUコアからのメモリアクセスの最適化を極限まで進めた結果だと思っていい」と述べていた。どういうことなのか、解説しよう。

GPU内部のデータパスの最適化

 先述の通り、Xe3 GPUでは,Render Sliceの数は据え置かれた。そのため、Xe2 GPUと比べると並列性の向上はない。

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 しかし「汎用(はんよう)レジスタファイル(GRF)」の割り当て粒度を動的に変化させることで、1基のXVEが実行できるスレッド数が「最大4~8」から「最大10」まで向上している。

 また、メモリのアクセス面に着目すると、Panther Lakeではグラフィックス専用のGDRメモリではなく、汎用性の高いDDR5/LPDDR5Xメモリを使う上に、バス幅も128bitと狭いため、GPUの性能を向上することが非常に難しい。

 だがIntelは「メモリへのアクセスは極力避け、可能な限り高速なキャッシュメモリ内で処理を行い、データのやり取りを高速にするチューニングを施す」という策を取った。これに加えて、先述したGRFの割り当て粒度の動的変化によって、メモリアクセスが発生した場合に待ち時間で別のスレッドも実行できるようにしている。

 これらの“地道”なチューニングが、テストスコアにおける“下克上”を起こした一因になっていると見られる。

GPUコアからのメモリアクセスの最適化

 このあたりの説明だけだと「え、これだけで逆転できるの?」と信じられない人もいると思う。

 ただもう1つ、下克上を起こした、分かりやすい大きな要因がある。それは「ラストレベルキャッシュ(LLC)メモリの容量」だ。Intelの説明における「GPUコアからのメモリアクセスの最適化」が、この部分に当たる。

 Ryzen AI Z2 Extremeに搭載されているRDNA 3.5アーキテクチャのGPU「Radeon 890M」では、LLC(L2キャッシュ)の容量が2MBしかない。

 「RDNA 2」以降のRadeon GPUでは、「Infinity Cache」という名称で大容量のL3キャッシュをLLCとして搭載してきた。RDNA 2では最大128MB、RDNA 3では最大96MB、RDNA 4では最大64MBと、世代を追うごとに減ってはいるものの、LLCとしてはかなり広大なことには変わりない。しかし、Radeon 890MにはInfinity Cache自体がないのだ。

 実は、コンパクトワークステーション向けのSoC「Ryzen AI Max」シリーズ(開発コード名:Strix Halo)には、特別にInfinity Cacheの代わりとなる「MALL(Memory Attached Last Level)キャッシュ」が最大32MB搭載されている。これはI/Oダイに実装されているので、理論上はCPUにおけるLLCとしても使える。しかし、あえてGPU専用キャッシュとして稼働するように仕込まれている。

 「これをRDNA 3.5アーキテクチャのRyzen Z2シリーズにも搭載できたら……」と思うと非常に惜しい。当然、Ryzen AI Max 300シリーズのGPUの方が高いパフォーマンスなのは言うまでもない。


Ryzen AI Maxシリーズは、GPU専用のLLCとして「MALL(Memory Attached Last Level)キャッシュ」を搭載している

 Arc G3 Extremeのことに話を戻すと、このSoCが搭載するArc B390 GraphicsのLLCも、Radeon 890Mと同じくL2キャッシュなのだが、容量が8倍の16MBもある。GPUの性能の落ち込みはメモリアクセスが増大することにつながることを考えると、この8倍の差は大きい。

 さらに、Arc G3 Extremeを含むPanther Lakeプロセッサには、MALLキャッシュに似た役割を果たす「Memory Side Cache(MSC)」を8MB備えていることも忘れてはいけない。

 MSCは、GPUタイルではなくComputeタイルに搭載されているものの、メモリコントローラーに直結されているので、GPUのメモリアクセス内容もキャッシュ可能な構造となっている。システム全体のLLC的な存在ともいえる。


Xe3 GPUでは、LLC(L2キャッシュ)を16MBも備えている上に……

Arc G3 ExtremeならCPUタイル側にある8MBのMSCも活用できる

 Intelの調べによると、この一連のキャッシュシステムの恩恵により、メモリアクセスが実に17~36%も減少したという。これだけのメモリアクセス削減は、下克上の達成において大きな“追い風”になったことだろう。

Ryzen Zシリーズも今後、同様の改良が進むか?

 ここで、Ryzen AI Z2 Extremeを含むRyzen Z2シリーズのフォローもしておこう。

 Ryzen Z2シリーズのGPUアーキテクチャは先代の「RDNA 3」か、そのマイナーチェンジ版である「RDNA 3.5」であり、現行の「RDNA 4」よりも古い。RDNA 4では、Xe3 GPUの特徴でもある「スレッドの動的切り替え」や「可能な限りキャッシュメモリ内で処理を完結させる」といったチューニングを施している。

 RDNA 4アーキテクチャは、2025年に比較的こっそり発表された「Radeon RX 9000」シリーズで採用済みで、RDNA 3で行った「CUにおけるSIMD演算器の倍増」について、その実効性能を高めるための調整も行っている。具体的な手法としては「同時実行スレッド数の向上」「メモリアクセスの順不同実行への対応」などが挙げられる。

 これらの改善は、Xe3 GPUの高性能ぶりに“対抗”できるポテンシャルを持つのだが、現時点ではRDNA 4アーキテクチャのGPUを統合するSoCはまだ市場に出ていない。

 “世代交代”を引っさげてのAMDの反撃が始まるのは、早くて2027年頃になるだろうか。

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